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置き換えダイエットは効果ある?一次文献と日本の制度から検証する

やさしい置き換えダイエット案内
むー

「1食をシェイクに置き換えるだけで痩せる」。置き換えダイエットの広告では、こうした手軽さがよく強調されます。では実際には、どのくらいの効果があるのでしょうか。

まず知っておきたいのは、「置き換えダイエット」には大きく2つの種類があることです。

  • 部分置き換え:1日3食のうち1〜2食だけを、置き換え食にする方法。市販の置き換え食品は、ふつうこの使い方をします。
  • 全食置き換え(TDR:Total Diet Replacement):一定の期間、すべての食事を置き換え食にする方法。主に医療や研究の場で使われます。

この2つは、効果の大きさも、リスクも、使われる場面もまったく違います。この記事では、次の4つの疑問に、一次資料をもとに順番に答えていきます。

  • 部分置き換えは、どのくらい効くのか
  • 全食置き換えは、何が違うのか
  • 医療で使われるものと、市販の置き換え食品は何が違うのか
  • 置き換え食品の広告は、どう読めばよいのか

この記事では、言葉を次のように使い分けます。

  • 置き換え食品:お店や通販で売られている、置き換え用の商品全般
  • フォーミュラ食:医療で使われる設計の置き換え食(日本肥満学会のガイドラインで使われている言葉です。一般に販売されているものもあります)
  • 置き換え食:両方をまとめて指すとき

もう一つ、先にお伝えしておきます。置き換え食の研究には、製品を作る会社がお金や製品を出しているものが少なくありません。この記事で紹介する研究にも含まれるので、特に重要な研究では本文で一言添え、お金の出どころの詳細は参考文献の欄に書いています。また、紹介する研究の多くは、標準より体重が多めの人や肥満の成人を対象にしたものです。

1. なぜ置き換えで痩せるのか

体重が増えるか減るかは、突き詰めると「食べたエネルギー」と「使ったエネルギー」の差で決まります(くわしくは「体重が増える・減る仕組み|7,000kcalルールで作る現実的な減量計画」で解説しています)。置き換えダイエットも、この仕組みの外にあるわけではありません。

ふだんの食事でカロリーを減らそうとすると、毎回メニューを考えて、量を調整しなければなりません。置き換え食を使えば、少なくともその1食のカロリーは最初から決まっています。置き換えの利点は、カロリーの管理が楽になることです。

日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」も、フォーミュラ食について、必要な蛋白質を保ちながら低エネルギー食を「簡便に行うために有効」としています。

ガイドラインが紹介しているフォーミュラ食は、次のように作られています。

  • 1袋あたり約180kcal
  • 糖質と脂質が少ない
  • 蛋白質が1袋あたり約20g摂れる
  • 必要なビタミン、ミネラル、微量元素も入っている

ポイントは、カロリーは抑えても、蛋白質やビタミン・ミネラルは減らさないように作られていることです。ガイドラインは、肥満症の食事療法では、必須アミノ酸を含む蛋白質、ビタミン、ミネラルを十分に摂ることが必要だとしています(推奨度A=4段階でいちばん強い推奨、エビデンスレベルII)。そのうえで、こうした栄養素を含むフォーミュラ食を、食事療法の「補助として有用」と位置づけています。

なお、1袋あたりのカロリーは製品によって違います。次の章で紹介する日本の研究では、1袋240kcalの製品が使われていました。

2. 部分置き換え(1〜2食)のエビデンス

23の研究をまとめた解析:Astbury et al. 2019

部分置き換えの効果を調べた代表的な研究が、英国オックスフォード大学のAstburyさんたちによる2019年の「系統的レビュー・メタ解析」です。これは、同じテーマの研究を決まった方法で幅広く集めて、結果をまとめて分析する方法です。

この解析で集められたのは、標準より体重が多めの人や肥満の成人を対象にした「ランダム化比較試験」です。ランダム化比較試験とは、参加者をくじ引きのようにグループに分けて、結果を比べる実験のことです。ここでは、「置き換え食を使う減量方法」と「使わない減量方法」を比べ、1年後の体重を調べた研究が集められました。全食置き換えや、1日800kcal未満の食事を使った研究は除かれているので、主に部分置き換えについての結果と考えられます。対象は23件の研究、成人7,884人です。

結果は次の通りです(どちらも1年後)。

  • 置き換え食を使った食事は、他の食事法よりも平均1.44kg多く体重が減った
  • 置き換え食に、より手厚いサポートを組み合わせたグループは、ふつうのサポートで他の食事法をしたグループよりも6.13kg多く体重が減った

ここで注意したいのは、6.13kgという大きな差は、「置き換え食」と「サポートの手厚さ」の両方が違う2つのグループを比べた結果だということです。この差のうち、どこまでが置き換え食の効果で、どこまでがサポートの効果なのかは、この比べ方では分けられません。

置き換え食を使うこと自体による上乗せは、1年で平均1.44kgほどと控えめです。著者たち自身も、置き換え食は「特にサポートプログラムと一緒に使った場合に」効果があると結論づけています。

なお、この解析の研究費は英国の公的な研究機関(NIHR)から出ていますが、著者の一部は、置き換え食を扱う会社から研究費を受けた研究者でもあります。

「カロリーの計画」とセットで使われている

もう一つ押さえておきたいのが、研究の中で置き換え食がどう使われていたかです。たとえば、このあと紹介する日本の研究では、1日全体のカロリーを決めた計画の一部として、置き換え食が使われていました。「1食を置き換えさえすれば、あとは何をどれだけ食べてもいい」という使い方は、研究の条件とは違います。

英国の公的機関NICEの評価

英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、2025年に出した肥満の管理についてのガイドライン(NG246)をつくるために、いろいろな食事法の研究を評価しています。この評価には、上で紹介したAstbury 2019も材料として含まれています。

NICEは、1日800〜1,200kcalの食事を「低エネルギー食」と呼び、部分置き換えをその一つとして分類しました。そのうえで、体重が多めの人や肥満の人を対象にした研究では、部分置き換えによる低エネルギー食のほうが、ふつうのケア(食事の指導など)よりも体重が減り、その差は偶然とは考えにくいものだったと結論づけています。

NICEの評価とAstbury 2019は、もとになった研究データが一部重なっています。なので、「別の証拠がもう一つある」というわけではありません。それでも、独立した公的機関が、重なる研究を自分たちの基準で評価し直して、同じ方向の結論になったという意味はあります。

日本人のデータ:Shirai et al. 2013

では、日本人ではどうでしょうか。東邦大学医療センター佐倉病院など、複数の病院が参加した研究(Shiraiさんたち、2013年)があります。

この研究では、BMIが25を超える、糖尿病のある日本人の患者さんを、2つのグループに分けました。

  • フォーミュラ食グループ(119人):1日3食の低カロリー食のうち1食を、フォーミュラ食(1袋240kcal)にする
  • 通常食グループ(110人):ふつうの低カロリー食

大事なのは、1日にとるよう指示されたカロリーは、どちらのグループも同じだったことです。つまり、「置き換えたから、1日のカロリーが減った」のではありません。「同じカロリーの中で、1食をフォーミュラ食にした」ときの違いを調べた研究です。

24週間後の体重の変化は、フォーミュラ食グループが−3.5kg、通常食グループが−1.4kgでした。差は約2.1kgです(この差は論文に書かれた数字ではなく、こちらで計算したものです)。ほかにも、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の状態を表す値)はフォーミュラ食グループのほうが大きく下がりました。上の血圧(収縮期血圧)はフォーミュラ食グループだけで、偶然とは考えにくい程度に下がり、HDL(善玉)コレステロールもフォーミュラ食グループのほうが大きく上がっていました。

ただし、次の2点に注意してください。

  • 対象は糖尿病のある患者さんです。糖尿病のない人に同じ結果が当てはまるかはわかりません
  • 使われたフォーミュラ食は、製品を売っている会社から提供されたものでした

この章のまとめ

部分置き換えについて、今のエビデンスから言えるのは、「効果はあるが、置き換えそのものによる上乗せは控えめ」ということです。大きな差が出た研究は、置き換え食とサポートを組み合わせたものでした。

3. 全食置き換え(TDR)は別物

まず言葉を整理する

全食置き換えの話に入る前に、よく出てくる言葉を整理しておきます。似た言葉でも、国や機関によって意味が違うので注意が必要です。

言葉意味決めている機関
TDR(全食置き換え)一定の期間、すべての食事を置き換え食にする方法—
低エネルギー食(LED)1日800〜1,200kcalの食事NICE(英国)
超低エネルギー食(VLED)1日800kcal未満の食事NICE(英国)
超低エネルギー食(VLCD)1日600kcal以下の食事日本肥満学会

※低エネルギー食の範囲は、研究や機関によって違います。

「全食置き換え=超低カロリー食」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。このあと紹介する英国の研究の全食置き換えは1日810kcalです。これはNICEの分け方では「低エネルギー食」にあたり、日本肥満学会の決めている超低エネルギー食(600kcal以下)よりも多い量です。

全食置き換えの大規模な試験:DROPLET

全食置き換えの効果を、ふだんの医療に近い形で調べたのが、英国のDROPLET試験(Astburyさんたち、2018年)です。

英国オックスフォードシャー州の10か所の診療所で、肥満の成人278人を2つのグループに分けました。

  • 全食置き換えグループ(138人):最初の8週間は、1日810kcalになるフォーミュラ食だけで過ごし、その後、少しずつふつうの食事に戻していく。生活習慣を変えるためのサポートも受ける
  • 通常ケアグループ(140人):診療所の看護師から、食事のアドバイスと生活習慣のサポートを受ける(最長3か月)

12か月後の体重の変化は、次の通りでした。

  • 全食置き換えグループ:−10.7kg
  • 通常ケアグループ:−3.1kg
  • 条件をそろえて比べた2つのグループの差:−7.2kg

体重が10%以上減った人の割合も、全食置き換えグループが45%、通常ケアグループが15%でした。中くらい以上の体調不良などの「有害事象」が起きた人の割合は、全食置き換えグループで11%、通常ケアグループで12%と、ほぼ同じでした。

第2章の部分置き換えの結果より大きな差ですが、比べている相手(通常ケアか、他の食事法か)も研究も違うので、数字をそのまま比べることはできません。また、この研究で12か月後に体重を測れたのは、参加者の73%でした。

NICEの推奨:「条件付きで検討してよい」

では、英国の公的機関NICEは、こうした食事法をどう考えているのでしょうか。ここでのポイントは、NICEの条件は、全食置き換えか部分置き換えかに関係なく、1日800〜1,200kcalの低エネルギー食すべてにかかることです。部分置き換えでも、1日の合計が800〜1,200kcalに収まるかどうかで、次の推奨の対象になるかが決まります。

NICEの推奨のポイントは、次の通りです。

  • 対象は、肥満の人、または体重が多めで2型糖尿病のある人
  • 長く続くサポートを含む、いくつもの要素を組み合わせた取り組みの一部としてだけ、専門の肥満治療の場(または2型糖尿病などの治療の場)で検討する
  • 栄養がきちんと揃った食事であること
  • 続けるのは最長12週間まで
  • 長期的な肥満の管理方法としては使わない

また、この推奨は「検討してもよい(consider)」という、強さとしては弱い推奨にとどまっています。NICEは、体重が急に戻って増減をくり返すと体に害になりうることなどから、場合によっては最適な方法ではないこともあると考え、強い推奨にはしていません。

なお、これは英国の公的医療の仕組みを前提にした推奨です。日本の医療にそのまま当てはまるわけではないので注意してください。

日本の考え方:超低エネルギー食は入院して始める

日本肥満学会のガイドラインでは、超低エネルギー食(1日600kcal以下)は、BMI35以上の「高度肥満症」の人で、ふつうの食事療法では体重が減らない場合の選択肢とされています(推奨度B=4段階の上から2番目、エビデンスレベルII)。

使われるのは、重い睡眠時無呼吸症候群がある場合や、肥満の手術の前など、急いで体重を落とす必要があるときです。フォーミュラ食を1日3〜4袋使えば栄養的には問題がないとされ、続ける期間は1〜3週間がふつうです。

そしてガイドラインは、超低エネルギー食は入院したうえで始めるべきだとしています。副作用として、空腹感、吐き気・下痢・便秘などのお腹の症状、うつ症状、尿酸の上昇、低血糖、不整脈などが知られているためです。

注意が必要な人

超低エネルギー食をしてはいけない人(日本肥満学会の「禁忌」)

  • 心筋梗塞・脳梗塞を起こしたとき、およびその直後
  • 重い不整脈がある、または以前にあった
  • 冠不全、重い肝臓・腎臓の病気がある
  • 1型糖尿病
  • 全身が弱っていく病気がある
  • 妊娠中・授乳中の女性

糖尿病の薬を使っている人

ガイドラインは、超低エネルギー食をする場合、インスリンや、インスリンを出させる薬を使っている人は、低血糖を防ぐために、前もって薬を減らすか止める必要があるとしています。これをふまえると、部分置き換えでも食事の量が変わるので、糖尿病の薬を使っている人は、始める前に主治医に相談することをおすすめします(この一文は、ガイドラインの内容をもとにしたこちらの考えです)。

摂食障害の心配がある人

NICEは、低エネルギー食や超低エネルギー食を始める前に、摂食障害などのチェックやカウンセリングを検討するよう求めています。

なお、市販の減量プログラムで行われた超低エネルギー食でも、胆石のリスクが高まることが報告されています。急な減量のリスクについては「一気に体重を落とすとどうなる?急速な減量が引き起こす3つの弊害」でくわしく解説しています。

4. フォーミュラ食と一般的な置き換え食品の違い

日本の医療での位置づけ

日本肥満学会のガイドラインは、部分置き換えについて、次の推奨を出しています。

フォーミュラ食を1日1食だけ食事と交換することで有効な肥満関連病態の改善を期待できる。(推奨度B、エビデンスレベルII)

このガイドラインでは、推奨度とエビデンスレベルが次のように決められています。

  • 推奨度B:行うよう勧められる(いろいろな意見はあるが、どちらかというと有用性がある)
  • エビデンスレベルII:小規模なランダム化比較試験や、ランダム化していない研究がある

つまり、日本肥満学会は、1日1食の置き換えを、小規模な臨床試験などをもとに「どちらかというと有用」(役に立つ)として勧めているということです。推奨度は4段階の上から2番目です。ガイドラインが「フォーミュラ食は肥満症の食事療法の補助として有用」と書いている根拠の文献には、第2章で紹介したShirai 2013も入っています。

この推奨を読むときは、3つのことに注意が必要です。

1つ目は、対象が「肥満症」の人だということです。肥満症とは、ただ体重が多いだけでなく、肥満に関係する病気がある、または内臓脂肪型肥満にあたる状態のことで、治療の対象になります。ガイドラインは肥満症の治療を「①食事・運動・行動療法→②薬による治療→③手術」という順で考えていて、フォーミュラ食はその1段階目である食事療法の中の話です(「肥満」と「肥満症」の違いや治療の流れは、「肥満とやせ、それぞれの治療はどう進む?一次資料でわかる基本の流れ」で整理しています)。

2つ目は、評価されているのが「体重」ではなく、「肥満関連病態」(肥満にともなう健康障害)の改善だということです。

3つ目は、ガイドラインが想定しているのは、医療で使われる設計のフォーミュラ食だということです。ガイドラインは、医学的に安全性が確かめられたフォーミュラ食が日本にいくつかある、と書いています。

違いは「売り場」ではなく「中身の設計」

ここで誤解しやすいのが、「医療用=病院でしか手に入らないもの」「市販品=効果がわからないもの」という分け方です。実際には、研究で使われたフォーミュラ食の中には、一般に売られている製品もあります。

大事なのは、どこで売られているかではなく、第1章で紹介したような設計(カロリーを抑えつつ、蛋白質やビタミン・ミネラルをしっかり摂れる)になっているかどうかです。逆に言うと、「置き換え」とうたっている商品でも、この設計を満たしているとは限りません。

国の制度:減量用の置き換え食を国が許可するしくみはない

「国が効果を認めた置き換え食品はあるの?」と思う方もいるかもしれません。これを考えるときに関係するのが、「特別用途食品」という制度です。

特別用途食品とは、病気の人や赤ちゃん、飲み込むのが難しい人など、特別な用途に向いていることを表示する食品です。この表示をするには、消費者庁長官の許可が必要です。国が、決められた基準に合っているかを審査したうえで許可します。

実は以前、この制度の中には「成人肥満症食調製用組合わせ食品」という肥満症向けの区分がありました。しかし、2009年4月に始まった制度の見直しで、この区分は許可の対象から外れました。このとき外れたのは肥満症向けの区分だけではなく、低カロリー食品や糖尿病食調製用組合わせ食品なども一緒に外れています。制度全体の見直しの一部だったということです。

そして今、消費者庁が公開している許可品の一覧(令和8年9月16日現在、表示許可は110件)を見ると、減量を目的とした区分も、許可された商品もありません。近そうに見える「糖尿病用組合せ食品」も、許可された商品はゼロです。

特別用途食品の中にも、「総合栄養食品」のように食事の代わりに使われるものはあります。ただし総合栄養食品は、病気などでふつうの食事から十分な栄養を摂るのが難しい人のためのものです。減量とはむしろ逆の目的なので、混同しないようにしてください。

なお、トクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品は、これとは別の制度です。これらは特定の成分の働きを表示するための制度で、「1食分の栄養を満たす、食事の代わり」として国が審査するしくみではありません。

まとめると、今の日本には、減量用の置き換え食を特別用途食品として国が許可する区分はなく、許可された商品もないということです。

市販の置き換え食品を見るときのヒント

では、市販の置き換え食品はどう見ればよいのでしょうか。一つの方法は、第1章で紹介したフォーミュラ食の設計(1袋あたり約180kcal、蛋白質約20g、ビタミン・ミネラル入り)と、手元の商品の栄養成分表示を見比べてみることです。

ただし、この設計は日本肥満学会がフォーミュラ食の特徴として説明したもので、「こういう商品を選びましょう」という消費者向けの基準として出したものではありません。この記事でも、特定の商品をおすすめすることはしません。

5. 置き換え食品の広告の見方

置き換え食品を選ぶとき、もう一つ気をつけたいのが広告です。消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」という資料で、健康食品の広告のどんな表示が問題になりうるかを、例を挙げて説明しています。痩せる効果をうたう置き換え食品の広告も、この対象です。

ここでは、置き換え食品の広告を読むときに役立つポイントを3つ紹介します。

①「個人の感想です」と書けば許される、わけではない

体験談の横に、「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」と小さく書かれていることがあります。しかし消費者庁は、こうした注意書きを添えても、それだけで「うそや大げさな表示かどうか」の判断は変わらない、としています。広告全体から「この商品を使えば痩せる」と受け取れるのに、実際にはそんな効果がなければ、問題になります。

②体験談は「うまくいった人」だけかもしれない

消費者庁は、効果を感じなかった人がたくさんいるのに、都合のいい体験談だけを載せて、誰でも同じように痩せられるように見せることも問題になる、としています。体験談を読むときは、「たまたまうまくいった人の話かもしれない」と頭の片すみに置いておくとよいでしょう。

③「食べるだけで、運動も食事制限もなしに短期間で痩せる」ことはない

消費者庁は、特定の健康食品を食べるだけで、運動や食事制限をしなくても短い期間で簡単に痩せる、ということはないとしています。第1章で見た通り、置き換えダイエットの利点はカロリーの管理が楽になることで、食べる量の管理そのものがいらなくなるわけではありません。

また、「低カロリー」「ヘルシー」といった表示を見ると、かえって安心して食べ過ぎてしまうことがある、という研究もあります。これについては「「ゼロカロリー」は本当にゼロ?食品表示基準のからくりを一次資料で読み解く」で紹介しています。

6. 限界と注意点:やめた後の体重はどうなるか

置き換えダイエットで、もう一つ気になるのが「やめた後」です。これについては、DROPLET試験の参加者を3年後まで追いかけた調査(Astburyさんたち、2021年)があります。

3年後の体重の変化(試験を始めたときと比べて)は、次の通りでした。

  • 全食置き換えグループ:−6.2kg
  • 通常ケアグループ:−2.7kg
  • 条件をそろえて比べた2つのグループの差:−3.3kg

つまり、3年たっても、全食置き換えグループのほうが体重が少ない状態は続いていました。

一方で、体重の戻り方には大きな違いがありました。プログラムが終わった6か月の時点から3年後までに、全食置き換えグループは平均8.9kg、通常ケアグループは平均1.2kg、体重が戻っていました。大きく減ったぶん、戻る量も大きかったということです。

ここで知っておきたいのが、この試験でのサポートの期間です。全食置き換えグループへのサポートは、始めてから約6か月で終わり、その後はありませんでした。体重が大きく戻ったのは、サポートが終わった後の期間です。ただし、通常ケアグループのサポートも最長3か月で終わっていたので、この試験だけから「サポートを続けていれば体重の戻りを防げた」とまでは言えません。なお、3年後に体重を測れたのは参加者の66%でした。

第2章で見た通り、Astbury 2019の著者たちは、置き換え食は特にサポートと一緒に使った場合に効果があると結論づけていました。また第3章で見た通り、NICEも、低エネルギー食は長く続くサポートを含む取り組みの一部としてだけ検討するよう求めていました。置き換え食は、それだけで使う方法というより、体重管理のサポートと組み合わせることを前提に評価されてきた方法だと言えます。

減らした体重を保つための考え方は、「リバウンドを防ぐには?ACSMの一次資料から見る「体重維持」に必要な運動量」でくわしく取り上げています。

コラム:歯科医の視点から ― 置き換え食と「噛むこと」

最後に、歯科医師として少し気になっていることを紹介させてください。

日本肥満学会のガイドラインは、肥満症の行動療法の一つとして「咀嚼法(よく噛んで食べる方法)」を取り上げ、よく噛んで食べることは、早食いや食べ過ぎの予防に役立つとしています(推奨度B、エビデンスレベルIII)。エビデンスレベルIIIは、専門家どうしの意見の一致(コンセンサス)にもとづく、という意味です。

さらにガイドラインは、高度肥満症の人が超低エネルギー食を始めるときのように、空腹感をしっかりやわらげる必要がある場面では、早食いのくせを、決まった手順の練習できちんと直していくことも必要だと書いています。

置き換え食には、シェイクのような液体のものもあります。液体のものは、ふつうの食事に比べて、どうしても噛む回数が少なくなります。置き換え食で食事の量は管理できても、満腹感につながる「噛む」という行動は減ってしまうかもしれない。これが、気になっている点です。

以前、「超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論まで」という記事で、超加工食品を食べると噛む回数が減り、食べ過ぎにつながる可能性を示した日本の研究(Hamano et al. 2024)を紹介しました。市販の置き換え食品の中には、超加工食品にあたりうるものもあります。

「超加工食品は太ると書いていたのに、置き換え食は痩せるの?」と思った方もいるかもしれません。でも、これは矛盾ではありません。超加工食品の研究は、参加者が「食べたいだけ食べてよい」という条件で行われていました。一方、置き換え食の研究は、1食分のカロリーが決まった量を、計画にそって食べる条件です。「自由に食べると食べ過ぎやすい食品」でも、「量が決まった1食として食べる」なら、話が変わってくるということです。

とはいえ、置き換え食と噛むことの関係は、この記事で扱った一次資料の範囲を超えるテーマです。ここに書いたことは、あくまで問題提起として受け取ってください。置き換え食を使う場合でも、ほかの食事ではよく噛んで食べることを意識してみるとよいかもしれません。

まとめ:今、言えること・まだ言えないこと

言えること

  • 部分置き換え(1〜2食)は、控えめながら効果がある。置き換え食を使うことによる上乗せは、1年で平均1.44kgほど。大きな差が出たのは、サポートと組み合わせた場合だった
  • 全食置き換えは、体重が大きく減るが、その後の戻りも大きい。それでも3年後の時点で、通常ケアグループより3.3kg少ない状態が続いていた
  • 日本の医療では、フォーミュラ食は肥満症の食事療法の「補助」という位置づけ。肥満症の人の1日1食の置き換えは、推奨度Bで「どちらかというと有用」とされている
  • 今の日本には、減量用の置き換え食を特別用途食品として国が許可する区分も、許可された商品もない

まだ言えないこと

  • 置き換えさえすれば、痩せ続けられる
  • 市販の置き換え食品のすべてが、医療で使われるフォーミュラ食と同じ効果を持つ
  • 研究の多くは体重が多めの人や肥満の人が対象なので、ふつうの体重の人が数kg落としたい場合に、そのまま当てはまるとは言えない

置き換えダイエットは「魔法の方法」ではなく、カロリーの管理を楽にしてくれる「道具」の一つです。使うなら、1日全体のカロリーの計画と、続けるためのサポートとセットで考えるのが、研究の結果に沿った使い方だと言えそうです。

参考文献

  1. Astbury NM, Piernas C, Hartmann-Boyce J, Lapworth S, Aveyard P, Jebb SA. A systematic review and meta-analysis of the effectiveness of meal replacements for weight loss. Obes Rev. 2019;20(4):569-587.:DOI(研究資金はNIHR。著者の一部はCambridge Weight Plan UK Ltd.およびWeight Watchers Inc.の研究助成の研究者)
  2. Shirai K, Saiki A, Oikawa S, et al. The effects of partial use of formula diet on weight reduction and metabolic variables in obese type 2 diabetic patients—multicenter trial. Obes Res Clin Pract. 2013;7(1):e43-e54.:DOI(フォーミュラ食はサニーヘルス株式会社より提供)
  3. Astbury NM, Aveyard P, Nickless A, et al. Doctor Referral of Overweight People to Low Energy total diet replacement Treatment (DROPLET): pragmatic randomised controlled trial. BMJ. 2018;362:k3760.:DOI(試験の一部はCambridge Weight Plan UKの資金による。研究者主導のプロトコルで、資金提供者はデータにアクセスしていない)
  4. Astbury NM, Edwards RM, Ghebretinsea F, et al. Extended follow-up of a short total diet replacement programme: results of the Doctor Referral of Overweight People to Low Energy total diet replacement Treatment (DROPLET) randomised controlled trial at 3 years. Int J Obes. 2021;45(11):2432-2438.:DOI
  5. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Evidence reviews for the effectiveness of different diets in achieving and maintaining weight loss (Evidence review F). Overweight and obesity management (NICE guideline NG246). 2025.:NCBI Bookshelf
  6. 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」第5章 肥満症の治療と管理:PDF
  7. 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」肥満症診療ガイドライン2022の作成方法:PDF
  8. 消費者庁「特別用途食品 許可品一覧」(令和8年9月16日更新)および「特別用途食品表示許可件数内訳」(令和8年9月16日現在):消費者庁
  9. 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知「特別用途食品の表示許可等について」(平成21年2月12日 食安発第0212001号):PDF
  10. 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成28年6月30日制定、令和4年12月5日一部改定):PDF

内部リンク:体重が増える・減る仕組み|7,000kcalルールで作る現実的な減量計画/一気に体重を落とすとどうなる?急速な減量が引き起こす3つの弊害/肥満とやせ、それぞれの治療はどう進む?一次資料でわかる基本の流れ/「ゼロカロリー」は本当にゼロ?食品表示基準のからくりを一次資料で読み解く/リバウンドを防ぐには?ACSMの一次資料から見る「体重維持」に必要な運動量/超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論まで

本記事は上記の一次資料の内容をもとに執筆しています。治療が必要な方や、持病・服薬中の方は、医療機関にご相談ください。

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歯科医師・ブロガー
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