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一気に体重を落とすとどうなる?急速な減量が引き起こす3つの弊害

急激な減量と体調不良の物語
むー

「1ヶ月で5kg痩せたい」「夏までに絶対に痩せたい」。ダイエットを始めるとき、こんなふうに期限を決めて、できるだけ早く結果を出したいと思ったことはありませんか。

短期間で大きく体重を落とせれば、それはもちろん嬉しいことです。でも、「速く落とす」ことには、それなりの代償が伴うことが、いくつもの研究からわかっています。この記事では、急速な減量によって実際にどんな悪影響が起こりうるのかを、一次文献をもとに見ていきます。

なお、この記事で扱うのはダイエット中のリバウンドのしくみそのものではなく、減量している最中に、体そのものに起こる弊害です。リバウンドについては別記事(リバウンド予防)で詳しく扱っているので、あわせてご覧ください。

この記事の読み方について、あらかじめお伝えしておきたいことがあります。ここで紹介する研究には、2つのタイプがあります。1つは「速く痩せたグループ」と「ゆっくり痩せたグループ」を実際に比べた研究です。もう1つは、「すでに何らかの症状が出た人」を集めて、その人たちの特徴を調べた研究です。前者は「速さの違いが結果にどう影響するか」がわかりますが、後者は「症状が出た人は、平均するとどのくらいの速さで痩せていたか」がわかるだけです。この違いは、それぞれのセクションでそのつどお伝えしていきます。

1. 筋肉量が減り、基礎代謝が落ちやすくなる

体重を落とすとき、減っているのは脂肪だけではありません。ある程度は筋肉(除脂肪量)も一緒に減ってしまいます。

ノルウェーのエリートアスリート24人を対象にした研究があります。食事制限と筋力トレーニングを組み合わせながら、一方のグループは週に体重の0.7%ずつ、もう一方は週に1.4%ずつ体重を落としてもらいました。その結果、速いペースで落としたグループのほうが、筋肉量や筋力の低下が大きいという結果になりました。ただ、これはアスリートが筋力トレーニングをしながら減量した、という少し特殊な状況でのデータです。

では、筋力トレーニングをしない一般の方の場合はどうでしょうか。過体重・肥満の方を対象にした複数の研究をまとめた解析では、緩やかに痩せたグループと急速に痩せたグループを比べています。その結果、脂肪の量・体脂肪率・基礎代謝の3つは、緩やかに痩せたグループのほうが良い結果でした。一方で、筋肉量そのものについては、2つのグループで統計的に意味のある差は見られませんでした。

この2つの研究を合わせて考えると、「筋力トレーニングをしながら減量する場合は、速さが筋肉量そのものに影響する」一方、「一般的な減量では、筋肉量そのものより基礎代謝の低下という形で影響が出やすい」と考えるのが実態に近そうです。いずれにしても、基礎代謝が下がれば、それだけ消費エネルギーが少なくなります。

2. 胆石ができやすくなる

急激な減量に伴うリスクとして、医学的に昔から注目されてきたのが胆石です。

1995年に発表された研究では、それまでの5つの臨床試験・9つのグループのデータを集めて、「減量のペース」と「胆石ができる割合」の関係を計算しています。その結果、減量ペースが速くなるほど胆石ができる割合が急激に高くなる、という曲線的な関係があることがわかりました(モデルの当てはまりの良さを表す決定係数はr²=0.98で、かなり高い値です)。この研究は、のちにアメリカの診療ガイドライン(2013年版。2026年に廃止)が減量ペースの目安を決める際の、基礎資料の一つになりました。

もう少し新しく、大規模なデータも見てみましょう。スウェーデンで行われた研究では、条件をそろえた2つのグループを追跡する「マッチドコホート研究」という手法が使われています(ランダム化比較試験とは違う、観察による研究です)。1つは1日500kcalという非常に低カロリーな食事(VLCD)のグループ、もう1つは1日1200〜1500kcalの食事制限(LCD)のグループです。約6,600人を1年間追跡した結果、VLCDグループはLCDグループに比べて、入院が必要なほどの胆石を発症するリスクが3.4倍という結果でした。

なぜ急激な減量で胆石ができやすくなるのでしょうか。急に食事量を減らすと、脂肪組織からコレステロールが動き出して、胆汁の中のコレステロール濃度が上がります。さらに、食事量が少ないと胆のうがあまり収縮しなくなり、胆汁が滞りやすくなることも関係していると考えられています。

なお、胆石そのものを防ぐ方法についても研究が進んでいます。13件のランダム化比較試験(合計1,836人)をまとめた解析では、ウルソデオキシコール酸(UDCA)という薬を予防的に飲んだり、脂肪をある程度含んだ食事にしたりすることで、減量中の胆石を防げるという結果が出ています。「急激な減量は胆石のリスクを高めるが、対策がまったくないわけではない」という点も、知っておくとよいでしょう。

3. 抜け毛(休止期脱毛症)が起こることがある

「ダイエットを頑張っていたら、急に抜け毛が増えた」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは偶然ではなく、医学的にも報告されている現象です。

ただ、ここで紹介する2つの研究は、これまでのRCTやコホート研究とは少し性質が違います。どちらも「すでに脱毛症になった人」を対象に、その人たちの特徴を調べた研究であり、「速く痩せたグループ」と「ゆっくり痩せたグループ」を比べたものではありません。そのため、「急速に痩せると何%の確率で抜け毛が起こるか」を示すデータではなく、「抜け毛が起きた人は、平均するとこのくらいの速さで痩せていた」という関連を示すデータとして読む必要があります。

1976年に報告された研究では、急激な食事制限でダイエットをした9人の患者が、減量を始めてから2〜5ヶ月後に大量の抜け毛を経験したことが報告されています。この現象は「休止期脱毛症(テロジェン・エフルビウム)」と呼ばれます。髪の毛には成長する時期と休む時期があり、厳しいカロリー制限をすると、体が髪の毛を作る組織へのエネルギー供給を後回しにしてしまい、多くの毛が一斉に休む時期に入ってしまうことで起こると考えられています。

もう少し新しい研究では、この関係がより具体的な数字で示されています。2024年に発表された140人を対象にした研究では、休止期脱毛症になった患者の平均的な体重減少率は15.2%、平均的な減量ペースは月あたり3.5kg程度だったと報告されています。これを単純に1週間あたりに計算し直すと、約0.81kg/週になります(この計算は元の研究に書かれているものではなく、こちらで行った試算です)。この数字がどのくらいの位置づけになるかは、次のセクションであらためて見ていきます。

なお、休止期脱毛症の多くは一時的なもので、栄養状態がよくなれば数ヶ月のうちに回復していくとされています。

4. 安全なペースは、どのリスクを基準にするかで変わる

ここまでの弊害を踏まえると、「結局、どのくらいのペースなら安全なのか」が気になるところです。ここで、大事な前提を1つお伝えしておきたいと思います。

アメリカの肥満症診療ガイドライン(2013年のAHA/ACC/TOSガイドライン)は、「週1〜2ポンド(週0.45〜0.9kg)」という減量ペースの上限を示していました。ただ、この基準はもともと胆石のリスクをもとに決められたものです(前のセクションで紹介した、減量ペースと胆石の関係を調べた1995年の研究がベースになっています)。つまり、この基準を守れば、他のあらゆるリスクも防げるとは限らない、という点は覚えておく必要があります。

なお、このガイドラインは2026年に新しいガイドライン(心血管・腎・代謝症候群のガイドライン)に置き換えられて廃止されましたが、新しいガイドラインには減量ペースの目安は書かれていません。そのため、この数字は現在も、減量ペースを考えるときの参考として扱われることがあります。

筋肉量が気になる場合

筋トレをしながら減量する場合は、先ほどのアスリート対象の研究をもとにすると、週0.7%程度が一つの目安になりそうです。ただ、これはアスリートが筋力トレーニングを併用した場合のデータです。

胆石が気になる場合

先ほど紹介した、週0.45〜0.9kg(体重に関係なく、決まった量)という2013年の米国ガイドラインの基準が参考になります。ガイドライン自体はすでに廃止されていますが、後継のガイドラインにこれに代わる数字はありません。

抜け毛については、まだ独立した基準がありません

抜け毛(休止期脱毛症)そのものを防ぐための、確立された速度基準は見当たりませんでした。ただ、前のセクションで紹介した2024年の研究のデータ(週0.81kgに相当)は、上で紹介した胆石向けの基準(週0.45〜0.9kg)の範囲内、あるいはその上限に近いところに収まっています。つまり、「胆石を避けるための基準を守っていても、抜け毛が起きなかったとは言い切れない」ということです。これは、速度の基準がもともと何のリスクを想定して作られたかによって、カバーできる範囲が変わってくることを示す一例だと言えそうです。

日本の場合

日本の公的な資料を調べたところ、厚生労働省やe-ヘルスネットには、こうした週あたりの減量速度を示す基準は見つかりませんでした。

もっとも近いものとして、日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」があります。これは肥満症と診断された方(BMI25以上で、なおかつ健康障害がある方)を対象にした治療目標で、3〜6ヶ月で3%以上の減量を目指すという考え方が示されています(詳しくは「肥満とやせの治療法」の記事もご覧ください)。これを単純に週あたりに計算し直すと、週0.12〜0.23%程度になります(これはガイドラインそのものに書かれている数字ではなく、こちらで行った試算です)。つまり、日本には速度そのものの基準はないものの、目標の作られ方自体は、結果的にかなり緩やかなペースを想定していると言えそうです。

参考:単位の対応表

ここまで、研究によって「%/週」「kg/週」「kg/月」といろいろな単位が出てきました。体重によって%とkgの対応関係は変わるため、あくまで参考として、これまで紹介してきた4つの数字を体重別に並べておきます(いずれも元の研究そのものの数字ではなく、体重別に計算し直した試算です)。

体重筋肉量の目安(週0.7%)胆石の基準(週0.45〜0.9kg)抜け毛関連データ(週0.81kg)日本の目標を換算(週0.12〜0.23%)
60kg週0.42kg週0.75〜1.5%週1.35%週0.07〜0.14kg
70kg週0.49kg週0.64〜1.3%週1.16%週0.08〜0.16kg
80kg週0.56kg週0.56〜1.13%週1.01%週0.10〜0.18kg

まとめ

  • 急速な減量では、筋トレをしながら痩せる場合は筋肉量そのものに、一般的な減量では基礎代謝の低下という形で、悪影響が出やすい
  • 減量ペースが速いほど胆石ができやすくなることが、大規模なコホート研究でも確認されている。ただし、予防法(UDCAや脂肪を含む食事)も研究されている
  • 急激な減量は、休止期脱毛症(一時的な抜け毛)のきっかけになることがある
  • 「安全なペース」はどのリスクを基準にするかで変わり、1つの万能な数字があるわけではない。アメリカの旧ガイドラインの基準(週0.45〜0.9kg)は胆石のリスクをもとにしたもので、この範囲内でも抜け毛などの別のリスクは起こりうる
  • 日本には速度そのものの公式基準はないが、肥満症診療ガイドラインの目標を計算し直すと、結果的にかなり緩やかなペースが想定されている

「一気に落とす」よりも「無理なく、着実に」のほうが、体への負担も少なく済みそうです。焦らず、自分が一番避けたいリスクを意識しながら、自分に合ったペースを探ってみてください。

参考文献

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  9. 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」

内部リンク:リバウンド予防、肥満とやせの治療法

本記事は上記一次資料の内容をもとに執筆しています。個別の数値や研究デザインの詳細については、原文でのご確認を推奨します。

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歯科医師・ブロガー
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