超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論まで
超加工食品とは何か
コンビニ弁当、菓子パン、カップ麺、清涼飲料水。こうした食品は「NOVA分類」という食品の分け方で、最も加工度が高い「超加工食品(Ultra-Processed Food、略してUPF)」というグループに入ります。NOVA分類は、ブラジルの研究者たちが提案したもので、食品を4つのグループに分けます。
- グループ1:野菜や肉、卵など、ほとんど手を加えていない食品
- グループ2:油や砂糖、塩など、料理に使う調味料
- グループ3:普通の加工食品(缶詰やパンなど)
- グループ4:超加工食品(工業的な工程を経て、多くの添加物が使われている食品)
「超加工食品は太りやすい」とよく言われますが、これは本当に「食べると太る」という原因と結果の関係なのでしょうか。それとも、「太っている人がたまたま超加工食品を食べがち」という、単なる関連にすぎないのでしょうか。この記事では、この疑問に答えようとしたいくつかの研究を、批判的な視点も交えながら順番に見ていきます。
なお、NOVA分類そのものが正しいかどうか(食品の分類が難しいという指摘など)は、この記事では扱いません。あくまで「超加工食品と体重増加に因果関係があるか」に絞って見ていきます。
転換点となったHall et al. 2019の実験
2019年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のKevin Hallさんたちのチームが、超加工食品と体重増加の関係を初めてきちんと実験で確かめた研究を発表しました。
この実験では、体重が安定している20人の成人が、NIHの施設に入院しました。2週間は超加工食品中心の食事を、別の2週間は未加工食品中心の食事を、順番を入れ替えながら食べてもらいました。
ここが重要なポイントですが、2種類の食事は、カロリー・エネルギー密度・三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)・糖分・塩分・食物繊維の量まで、すべて同じになるように用意されていました。つまり、「栄養素の量」ではなく、「加工されているかどうか」という違いだけを取り出そうとした実験だったのです。
参加者には「食べたいだけ食べていい」と伝えられていました。結果は、はっきりしたものでした。超加工食品を食べた期間は、未加工食品の期間に比べて、1日あたり平均508kcal(誤差の範囲±106kcal)も多く食べていたのです。そして、わずか2週間で体重が0.9kg増えました(未加工食品の期間は逆に0.9kg減りました)。
栄養素の量をどんなに揃えても、超加工食品を食べていると自然と食べ過ぎてしまう——これが、超加工食品と体重増加の因果関係を初めて示した実験結果でした。
批判と限界
この画期的な結果に対して、同じ号の『Cell Metabolism』という専門誌に、批判の意見が掲載されました。書いたのは、Ludwigさん、Astrupさん、Bazzanoさんなど、肥満研究で有名な研究者たちです。指摘の要点は次の通りです。
- 参加者がたった20人と少ない
- わずか2週間という短い実験の結果を、「長い目で見た肥満の予防や治療」にそのまま当てはめるのは危険
- 「加工されているかどうか」以外にも、違いがあった可能性(食物繊維は「量」を揃えても、繊維の「種類や質」までは揃えられていなかったかもしれない)
- 体重は本来、体が一定の範囲に保とうとする仕組みがあるので、短期の変化がそのまま長期の変化につながるとは限らない
つまり、Hall 2019は大事な一歩ではあるものの、これだけで「超加工食品は太る」と決めつけるのは早すぎる、という指摘です。この「1つの研究だけでは判断できない」という慎重な姿勢は、この記事の後半で紹介するPreston et al. 2025への批判にも、そのままつながっていきます。
補強するエビデンス
大規模な観察研究:Lane et al. 2024
Hall 2019のような、条件を厳密にコントロールした実験は、実施するのが難しく、数も限られています。そこで参考になるのが、これまでの多くの研究をまとめて分析した「アンブレラレビュー」と呼ばれる研究です。
2024年に『BMJ』という医学誌に発表されたLaneさんたちの研究は、45件のデータ・約988万人分の情報をまとめて、GRADEという厳しい基準でエビデンスの信頼度を評価しました。
その結果、心臓病による死亡や2型糖尿病、不安障害などは、最も信頼度が高い「convincing(確信度が高い)」という評価を受けました。一方、肥満についてはそれより一段階低い「highly suggestive(かなり有力)」という評価でした(超加工食品を多く食べる人は、そうでない人に比べて肥満のリスクが約1.5倍という結果)。
「convincing」ほど確実ではありませんが、約988万人という大規模なデータで肥満との関連が一貫して見られたことは、重要な補強材料です。ただし、これは「食べた記録を後から調べる」タイプの研究なので、「もともと体重が多い人が超加工食品を選びやすい」という、逆方向の可能性(逆の因果関係)も否定できません。
日本人での追試:Hamano et al. 2024
Hall 2019の結果は、日本人でも同じように再現されるのでしょうか。東京大学病院で行われたHamanoさんたちの研究は、まさにこの疑問に答えようとしたものです。
過体重・肥満の日本人男性を対象に、超加工食品の食事と、それ以外の食事(未加工食品や普通の加工食品を含む)を、1週間ずつ入れ替えて食べてもらいました。すると、超加工食品の期間は、1日あたり813.5kcalも多く食べており、体重も1.1kg増加しました。Hall 2019よりも、さらに大きな差です。
興味深いのは、その理由として「噛む回数・食べる速さの変化」が挙げられている点です。超加工食品はやわらかく食べやすいものが多いため、噛む回数が減り、満腹感を得るタイミングが遅れて、結果的に食べ過ぎてしまうという考え方です。よく噛むことの大切さは、歯科の現場でも日々実感するところです。
ただし、この研究にはHall 2019への批判とほぼ同じ弱点があります。参加者はわずか9人、実験期間も1週間ずつと、より小規模・短期間です。加えて、比較対象が「未加工食品だけ」ではなく「未加工食品と普通の加工食品を合わせたもの」だったため、Hall 2019(比較対象は未加工食品のみ)よりも比較の条件がやや緩い点にも注意が必要です。
実際、2025年には2つの研究グループ(LouieさんとPereiraさんたち)から、「超加工食品のグループと、それ以外のグループとで、食物繊維の量が違っていた(35gと50g)」という批判が寄せられました。これに対して、Hamanoさんたちのチームは同じ年に反論を発表し、「結論は変わらない」と主張しています。このやり取りが示す通り、日本人での追試であっても、議論はまだ決着していません。
最新の展開(2025年)
2025年10月、デンマークのコペンハーゲン大学のPrestonさんたちが、また新しい実験結果を発表しました。今回は43人の若い男性(20〜35歳)を対象に、超加工食品と未加工食品の食事を3週間ずつ食べてもらう実験です。さらに、「体重を維持できる分のカロリー」の条件と、「1日500kcal多い、食べ過ぎの」条件という2パターンも組み合わせました。
結果、カロリーを維持する条件でも、食べ過ぎの条件でも、両方とも超加工食品の食事の方が体脂肪が多く増えました(精密な体組成測定であるDEXAスキャンで、カロリーを維持する条件で約1.00kg、食べ過ぎの条件で約0.96kgの差。どちらもほぼ同じくらいの差で、筋肉量には差がありませんでした)。さらに、コレステロールの数値(LDLとHDLの比)の悪化は、主にカロリーを維持する条件で見られました。
つまり、カロリーをきっちり揃えても、超加工食品そのものが体脂肪や血液中の脂質に影響する可能性がある、という結果です。
この研究に対しても、2026年1月、David S. Ludwigさん——偶然にも、Hall 2019を批判したのと同じ研究者です——が、反論の意見を『Cell Metabolism』誌に発表しました。「2種類の食事を比較する際に、エネルギーやエネルギー密度の扱いが適切だったのか」という、実験デザインの前提そのものに疑問を投げかける内容です。同じ号にはもう1本、別の研究グループによる反論も掲載されており、この分野の議論は、今もなお続いています。
3つの実験結果の比較
ここまで紹介した3つの実験を、表にまとめると次の通りです。
| 研究 | 参加人数 | 期間 | 食べ方 | 体重・体脂肪の変化 | 主な弱点 |
|---|---|---|---|---|---|
| Hall et al. 2019(米国) | 20人 | 2週間×2回 | 食べたいだけ食べてよい | 体重+0.9kg(カロリー+508kcal/日) | 小規模、短期間の結果を長期に当てはめる危うさ |
| Hamano et al. 2024(日本) | 9人 | 1週間×2回 | 食べたいだけ食べてよい | 体重+1.1kg(カロリー+813.5kcal/日) | さらに小規模・短期間、食物繊維の量の違い |
| Preston et al. 2025(デンマーク) | 43人 | 3週間×2回 | あらかじめ決めた量を食べる | 体脂肪+約1.00kg(カロリー維持)/+約0.96kg(食べ過ぎ) | エネルギー密度など、他の要因との区別 |
Hall・Hamanoの2つは「食べたいだけ食べてよい」という形式で、超加工食品だと自然と食べ過ぎてしまう、という「行動の変化」を見ています。一方Prestonは、あらかじめ決まった量の食事を用意する形式で、「食べる量が同じでも体脂肪や血液の数値に差が出る」という「体の中の変化」を見ています。実験の方法は違いますが、国もチームも違う3つの実験が、いずれも同じ方向の結果——超加工食品を食べると体重(体脂肪)が増える——を示している点は、注目に値します。
まとめ:今、言えること・まだ言えないこと
ここまでの内容をまとめると、次のように整理できます。
言えること:少なくとも短期的には、超加工食品を食べることでカロリー摂取量や体重が増える、という因果関係が、複数の独立した実験で確かめられています。
まだ言えないこと:長期的にどうなるか、その仕組みが噛む回数だけで説明できるのか、個人差はどれくらいあるか、日本人全体に当てはまるかどうか——これらはまだはっきりしていません。それぞれの実験には、参加人数や期間の点で弱点があり、批判と反論のやり取りも続いています。
なお、日本の厚生労働省は、今のところ超加工食品に特化した公式の見解や指針を出していません。「日本人の食事摂取基準」は、これまで通り栄養素をベースにした評価のままです。これは、超加工食品の摂取を控えるよう踏み込んだ、アメリカの最新の食事指針(2025-2030年版)とは対照的です。
実践的なアドバイスとしては、「超加工食品を完全にゼロにする」という極端な目標を立てるのではなく、日々の食事の中で超加工食品が占める割合を、少し意識してみる、というのが現実的な着地点になるでしょう。
関連記事
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参考文献
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- Ludwig DS, Astrup A, Bazzano LA, Ebbeling CB, Heymsfield SB, King JC, Willett WC. Ultra-Processed Food and Obesity: The Pitfalls of Extrapolation from Short Studies. Cell Metab. 2019;30(1):3-4. https://doi.org/10.1016/j.cmet.2019.06.004
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- Hamano S, Sawada M, Aihara M, et al. Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency: A randomized, open-label, crossover study. Diabetes Obes Metab. 2024;26(11):5431-5443. https://doi.org/10.1111/dom.15922
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- Pereira MR, de Carvalho GCO, de Melo Barros L, Peixoto VA, Bueno NB. Comments on “Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency: a randomized, open-label, crossover study”. Diabetes Obes Metab. 2025;27(3):1619-1621. https://doi.org/10.1111/dom.16063
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- Ludwig DS. Confusion about energy and energy density in a 3-week trial of ultra-processed food. Cell Metab. 2026;38(1):1-2. https://doi.org/10.1016/j.cmet.2025.12.001

