食べる時間帯で太りやすさは変わるのか?BMAL1の俗説と複数コホート研究から検証する
「3時のおやつは太りにくい」「22時以降に食べると太る」。こうした話は、ダイエット特集を組む雑誌やサイト、医師監修とうたう記事でもよく見かけます。
ただ、いくつか読み比べてみると、「一番太りにくい時刻」の書き方が記事によってバラバラなことに気づきます。14時のところもあれば15時、10〜16時と幅を持たせているところもあります。しかも、その根拠となる論文名を挙げている記事はほとんどありません。
この記事では、「一日のうちいつ食べるかで、太りやすさは本当に変わるのか」というテーマを、複数の研究をまとめた論文と、体内時計に関する基礎研究の両方から見ていきます。なお、「夜遅く食べると太るか」については、別の記事夜遅い食事は本当に太る?RCTで検証された時間帯とダイエットの関係で個別の研究を詳しく取り上げていますので、気になる方はそちらもどうぞ。
時間栄養学(クロノニュートリション)とは
私たちの体には、およそ24時間の周期でいろいろな働きを調整する「体内時計」が備わっています。この体内時計を動かしているのが「時計遺伝子」と呼ばれる一群の遺伝子で、そのひとつがBMAL1です。
BMAL1は、脂肪細胞で脂肪を作る働きに関わることが、マウスを使った研究でわかっています。「食べる時間帯で太りやすさが変わるかもしれない」という考え方は、こうした体内時計と代謝の関係を調べる「時間栄養学(クロノニュートリション)」という分野から出てきたものです。
この分野の研究は、大きく3つの切り口に分けられます。
- 食事を摂る時間帯を制限する研究(時間制限食・TREなど)
- 1日に食べる回数そのものを意図的に増減させる研究(3食を1食にするなど)
- いつ食べるかに注目する研究(欠食・食事時刻の遅れ・規則正しさ・カロリーの配分など)
このうち時間制限食(TRE)については、別の記事間欠的断食は本当に痩せる?研究データで検証ですでに詳しく取り上げました。1日の食事回数を意図的に増減させる研究についても、この記事では扱いません。この記事では、3つ目の「いつ食べるか」という切り口に絞って見ていきます。
複数の研究が示すもの
Chrononutrition and Cardiometabolic Health(2024年、Nutrients誌)
2024年に発表されたこの論文は、これまでの研究を整理したレビュー論文です。著者らは、時間制限食(TRE)や断食についてはすでに他の論文がたくさん扱ってきたとして、あえて対象から外し、「食事の時刻」「食事を抜くこと」「食事時刻の規則正しさ」という3つのテーマに絞って、複数の研究結果をまとめています。
そこで見えてきたのは、次のような傾向です。
- 朝食を抜くこと、または最初の食事が遅いこと
- 昼食や夕食の時刻が遅いこと
- 一日に食べるカロリーのうち、夕方以降の割合が高いこと
これらはいずれも、心臓病・高血圧・2型糖尿病・肥満といったリスクの高さと関連していたと報告されています。また、食事の時間を一日の早い方に前倒しすると、体に良い影響が出やすい傾向も見られています。ただし、著者ら自身も「介入試験の多くは人数が少なく、期間も短い」と限界を認めています。
「食事時刻の規則正しさ」については、少し違った切り口の研究が紹介されています。米国人女性115人を対象にした研究では、食事を始める時刻や、食べ始めてから食べ終わるまでの時間の幅、夜間に食べるカロリーの割合について、日によるばらつきが大きい人ほど、また平日と週末で食事の時刻がずれている人ほど、BMIやウエスト周囲径、血糖の状態を示す指標(HbA1c)、血圧が高くなる傾向が見られました。スペインの学生1000人以上を対象にした別の研究でも、平日と週末で食事時刻が3.5時間以上ずれている人は、そうでない人よりBMIが平均1.34高いという関連が報告されています。つまり、「いつ食べるか」だけでなく、「毎日同じくらいの時刻に食べているか」も関係している可能性がある、ということです。
なお、この論文が示す内容のうち、夕食が遅いことや、夕方以降に食べる割合そのものの高さ(日々の変動幅ではなく、絶対的な水準の高さ)については、より詳しい個別の研究を別記事夜遅い食事は本当に太る?RCTで検証された時間帯とダイエットの関係で扱っています。この記事では、朝食・昼食のタイミングや、食事時刻の規則正しさという切り口を中心に見ていきます。
Xiao, Garaulet, Scheer(2019年、International Journal of Obesity)
もうひとつ、この分野でよく引用される研究があります。体内時計研究の第一人者であるハーバード大学のFrank Scheer氏と、時間栄養学を長く研究してきたMarta Garaulet氏による共同研究です。
この研究では、872人を対象に、1年かけて6回、24時間分の食事記録を取りました。特徴的なのは、食事の時刻を「何時何分」ではなく、「起きてから何時間後か」「寝る何時間前か」という、それぞれの人の生活リズムに合わせた時間で見ている点です。人によって起きる時間・寝る時間は違うため、時計の時刻だけで比べるより精度の高いやり方といえます。
結果として、起床後2時間以内に食べるエネルギーの割合が高い人ほど、太っている割合が低いという関連が見られました。ただし、この関連が見られたのは「朝型」の人だけで、「夜型」の人では、起床後にたくさん食べても少なく食べても、太りにくさとは関係がありませんでした。つまり、「朝にたくさん食べれば誰でも太りにくくなる」という単純な話ではなく、その人がもともと朝型か夜型かによって話が変わる、ということです。
この研究はあくまで横断的な観察研究で、食事記録も自己申告に基づいているため、「これが原因でこうなる」と証明できるものではありません。とはいえ、その後に出た時間栄養学関連の論文の多くがこの研究を引用しており、分野の中でよく参照される研究のひとつです。
参考情報として:扱いに注意が必要な研究
Garaulet et al. 2013
時間栄養学というテーマがここまで注目されるきっかけになったとされる研究があります。420人を対象に、昼食を早い時間(だいたい15時より前)に食べる人と、遅い時間に食べる人を比べた観察研究です。早く食べていたグループは、20週間の減量プログラムの中で、遅いグループより平均で約2.2kg多く体重が減ったと報告されています。
ただし、この研究には注意が必要です。Garaulet 2013が検証したのは「昼食」の時刻でしたが、これと近い変数(朝食と夕食どちらに多くカロリーを配分するか)を検証した、その後の研究では、有意な差が見られませんでした。男性を対象にしたVersteeg et al.(2018年)の試験でも、30人を対象にしたRuddick-Collins et al.(2022年、Cell Metabolism誌)の試験でも、朝食重視の食事と夕食重視の食事とで、減量効果に統計的な差は出ていません。厳密には検証した変数が完全に同じではありませんが、Ruddick-Collins et al. 2022自身も自らの結果とGaraulet 2013を並べて比較しており、この分野では同じ仮説の検証として扱われています。つまり、Garaulet 2013の結果は、この1本だけでは他の研究グループによって裏付けられているとは言えません。
「3時のおやつ理論」のような話が広まった背景に、こうした初期の研究があった可能性はありますが、この記事ではこれを主な根拠とはせず、あくまで参考情報として紹介するにとどめます。
Liu et al. 2024のメタ解析(JAMA Network Open)
2024年にJAMA Network Openに載ったこの論文は、29件のランダム化比較試験・2485人分のデータをまとめたメタ解析です。時間制限食・食事の回数・カロリーの配分という3つの方法を評価しており、このうち「カロリーの配分を一日の早い時間に寄せる」というグループでは、何もしなかったグループと比べて平均1.75kg多く体重が減ったと報告されています。
ただ、この結果の中身を見ると、Jakubowicz(2013年)、Lombardo(2014年)、Madjd(2016年・2021年)という4件の試験(いずれも女性のみが対象)で構成されており、これらは別記事夜遅い食事は本当に太る?RCTで検証された時間帯とダイエットの関係ですでに個別に取り上げた研究を、違う方法で計算し直したものです。同じ研究でも、まとめ方によって結論の強さが変わってくる、という点は覚えておきたいポイントです。この記事ではこの点に軽く触れるだけにとどめます。
なお、エビデンスの信頼度を評価する国際的な基準(GRADE)では、このカロリー配分の効果は「確実性が低い」と評価されています。
なぜ食べる時間が体に影響しうるのか
食べる時間が体重に影響しうる理由として、いくつかの仮説が挙げられています。
ひとつは、血糖値を調整する力(耐糖能)が一日の中で変わることです。健康な人でも、夕方は朝に比べて血糖値が上がりやすい傾向があることが、複数の研究でわかっています。同じものを食べても、時間帯によって血糖値の上がり方が変わりうるということです。
もうひとつは、食事のあとに体が熱を作る働き(食事誘発性熱産生、DIT)が、一日の中で変わることです。朝食のあとの方が、夕食のあとよりもこの働きが強いとする研究がいくつかあります。ただし、すべての研究で同じ結果が出ているわけではなく、空腹の時間や運動、睡眠の状態によっては差が出ないという報告もあります。この点は、まだはっきり決着がついた話ではありません。
俗説と実際の研究のギャップ:BMAL1をめぐる誤解
ここまで見てきたのは、いずれも人を対象にした研究でした。一方、「3時のおやつは太りにくい」という話のもとになっているBMAL1のデータは、その多くがマウスを使った基礎研究から来ています。
BMAL1が人の脂肪組織にもあることを確かめた研究もあります。Gómez-Abellán et al.(2008年)は、高度に肥満した男性8人を対象に(健康な人との比較はありません)、脂肪組織の中のBMAL1などの量を調べ、それがコレステロールの値など一部の指標と関係していたことを報告しています。ただ、これはとても小さな研究で、「太っている人はBMAL1の働きが乱れている」と言い切れるほどの強さはありません。
そして、「14時や15時がBMAL1の最も少ない時刻」という、時刻をピンポイントで示す話については、もともとマウスのデータをそのまま人に当てはめたものです。健康な人を対象に、24時間かけてBMAL1の量を時刻ごとに測り、その正確さを確かめた研究は見当たりません。マウスは夜に活動する動物で、人とは体内時計のズレ方そのものが違うため、「◯時が一番いい」と言い切るのは、今の科学的な根拠を超えた話だと考えられます。
実際にどうすればいいか
ここまでを踏まえると、「◯時に食べれば太らない」といった細かい時刻にこだわるより、「摂取カロリーを一日の前半に寄せる」「毎日できるだけ同じくらいの時刻に食事をとる」という2つの方向性が、いくつかの研究からゆるやかに支持されていると言えそうです。
ただし、Xiao et al. 2019が示すように、この関連は朝型の生活リズムの人でより強く見られたものです。夜型の人にも同じように当てはまるとは限りません。自分の生活リズムによって効果の出方が違う可能性がある、ということは頭に置いておくとよいでしょう。
また、ここで紹介した研究の多くは観察研究で、介入試験も規模が小さく期間が短いものが中心です。「時間帯を変えるだけで大きく痩せる」と言い切れるほど強い根拠ではなく、時間栄養学はあくまで、総カロリーの管理を補う一つの選択肢として考えるのがちょうどいいバランスだと思います。
なお、夜遅い食事については夜遅い食事は本当に太る?RCTで検証された時間帯とダイエットの関係、時間制限食については間欠的断食は本当に痩せる?研究データで検証で、それぞれより詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
研究の限界
最後に、この記事で紹介した研究の限界を整理しておきます。
Chrononutrition and Cardiometabolic Health 2024がまとめたコホート研究の多くは観察研究で、「これが原因でこうなる」と直接証明するものではありません。介入試験についても、人数が少なく期間が短いものが中心です。
Xiao et al. 2019も横断的な観察研究で、食事記録は自己申告に基づいています。また、朝型・夜型によって関連の有無が変わる点も、結果をそのまま一般化する上での注意点です。
「規則正しさ」に関するMakarem et al. 2021・Zerón-Rugerio et al. 2019についても、いずれも観察研究であり、対象がそれぞれ米国人女性、スペインの学生という限られた集団である点に注意が必要です。
参考情報として紹介したGaraulet 2013は、近い変数を検証した他の研究グループの結果と一致しておらず、単体で裏付けられているとは言えません。Garaulet 2013の知見と一致しなかったVersteeg 2018・Ruddick-Collins 2022についても、それぞれ男性のみ・30人規模という限界があり、これらの研究だけで結論が完全に決着しているわけではない点には留意が必要です。Liu 2024のカロリー配分に関する結果も、含まれる4件の試験がすべて女性だけを対象としており、論文自体の限界の欄でも「男性にそのまま当てはまるとは限らない」と書かれています。
BMAL1とヒトの脂肪組織との関連を調べたGómez-Abellán et al. 2008も、対象が病的肥満の男性8人のみで、健康な人との比較がない小規模な研究である点に注意が必要です。
まとめ
- 「食べる時間帯」については、複数の研究をまとめたレビュー論文(Chrononutrition and Cardiometabolic Health 2024)や、この分野でよく引用されるXiao, Garaulet, Scheer 2019から、カロリーを一日の前半に寄せることが体重管理にプラスに働く可能性が示されています。ただしこの関連は朝型の人でより強く見られたもので、誰にでも同じように当てはまるとは限りません。加えて、食事時刻の規則正しさを調べたMakarem et al. 2021・Zerón-Rugerio et al. 2019からは、日々の食事時刻のばらつきが大きいことも、体の健康にとって不利に働きうることが示されています。
- 紹介した研究の多くは観察研究で、介入試験も人数が少なく期間が短いため、言い切れるほど強い根拠ではありません。Garaulet 2013はこの分野で早くから注目された研究ですが、近い変数を検証した他の研究では同様の結果が確認されておらず、参考情報として慎重に扱う必要があります。
- BMAL1と人の脂肪組織を調べた研究(Gómez-Abellán et al. 2008)もありますが、「3時のおやつ理論」のような時刻のピンポイントな話は、マウスの実験データをそのまま人に当てはめたものです。今のところ、その正確さを裏付ける人での研究は見当たりません。
- 時間栄養学は、総カロリーの管理に取って代わるものではなく、あくまで補助的な選択肢のひとつです。
- 夜遅い食事や間欠的断食といった個別のテーマについては、それぞれ別記事で詳しく取り上げていますので、ぜひあわせてご覧ください。
あわせて読みたい
参考文献
- Raji OE, Kyeremah EB, Sears DD, St-Onge MP, Makarem N. Chrononutrition and Cardiometabolic Health: An Overview of Epidemiological Evidence and Key Future Research Directions. Nutrients. 2024;16(14):2332. https://doi.org/10.3390/nu16142332
- Makarem N, Sears DD, St-Onge MP, Zuraikat FM, Gallo LC, Talavera GA, Castaneda SF, Lai Y, Aggarwal B. Variability in Daily Eating Patterns and Eating Jetlag Are Associated with Worsened Cardiometabolic Risk Profiles in the American Heart Association Go Red for Women Strategically Focused Research Network. J Am Heart Assoc. 2021;10:e022024. https://doi.org/10.1161/JAHA.121.022024
- Zerón-Rugerio MF, Hernáez Á, Porras-Loaiza AP, Cambras T, Izquierdo-Pulido M. Eating Jet Lag: A Marker of the Variability in Meal Timing and Its Association with Body Mass Index. Nutrients. 2019;11:2980. https://doi.org/10.3390/nu11122980
- Xiao Q, Garaulet M, Scheer FAJL. Meal timing and obesity: interactions with macronutrient intake and chronotype. Int J Obes. 2019;43:1701–1711. https://doi.org/10.1038/s41366-018-0284-x
- Garaulet M, Gómez-Abellán P, Alburquerque-Béjar JJ, Lee YC, Ordovás JM, Scheer FAJL. Timing of food intake predicts weight loss effectiveness. Int J Obes. 2013;37:604–611. https://doi.org/10.1038/ijo.2012.229
- Liu HY, Eso AA, Cook N, O’Neill HM, Albarqouni L. Meal Timing and Anthropometric and Metabolic Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2442163. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.42163
- Gómez-Abellán P, Hernández-Morante JJ, Luján JA, Madrid JA, Garaulet M. Clock genes are implicated in the human metabolic syndrome. Int J Obes. 2008;32:121–128. https://doi.org/10.1038/sj.ijo.0803689
- Ruddick-Collins LC, Morgan PJ, Fyfe CL, Filipe JAN, Horgan GW, Westerterp KR, Johnston JD, Johnstone AM. Timing of daily calorie loading affects appetite and hunger responses without changes in energy metabolism in healthy subjects with obesity. Cell Metab. 2022;34(10):1472–1485.e6. https://doi.org/10.1016/j.cmet.2022.08.001(本文中で言及するVersteeg et al. 2018の詳細は、本論文中の引用文献リストを参照)

