ダイエット

「夜に食べると太る」は、どこまで本当なの?

夜の食卓、月明かりと家庭料理
むー

「夜に食べると太る」というのは、ダイエットの話でよく聞くフレーズです。でも、これって本当に科学で確かめられているのでしょうか。

先に結論を言うと、「夜に食べる人は太っている」という関連を見た研究はたくさんある一方で、「本当に夜に食べたせいで太るのか」を確かめた実験(RCT)は数が少なく、しかも結果がバラバラです。

この記事では、実際の論文にあたって、今どこまで分かっているのかを整理してみます。

大きな調査結果では「それほど差はなかった」

このテーマをもっとも直接調べたのが、Fong・Caterson・Madigan(2017年、British Journal of Nutrition誌)による研究です。タイトルを訳すと「夕食が多いと太るのか、夕食を減らせば痩せるのか」というもので、まさに今回知りたいことそのものです。

この研究では、これまで行なってきた調査10件と、実際に食事を変えてみた実験8件をまとめて見直しています。その結果は次の通りです。

  • 夕食で食べる量とBMI(体格の指標)には、はっきりした関連は見られなかった
  • 夕食を減らしたグループと、夕食を多く食べたグループで、体重の減り方にそれほど差はなかった(平均で0.89kg、統計的に「差がある」とは言えない結果)

研究者たちは「ダイエットのために夕食を減らすべき、という勧めは、今のところ実験結果によって裏付けられていない」とまとめています。ただし、まとめに使われた実験は質にばらつきがあり、その点は割り引いて見る必要があります。

実は、この「差はなかった」というまとめの中には、次の3つの実験も含まれています。

  • Jakubowicz たちの実験(2013年):朝食を多く・夕食を少なくしたグループは12週間で8.7kg減ったのに対し、朝食を少なく・夕食を多くしたグループは3.6kgしか減らなかった(女性93人が参加)
  • Madjd たちの実験(2016年):昼食を多くしたグループは5.85kg減り、夕食を多くしたグループは4.35kgの減少だった(女性80人)
  • Lombardo たちの実験(2014年):体重そのものより、インスリンの効きやすさが、カロリーを1日の前半に寄せたグループで大きく改善した(女性42人)

ここに書いてある実験を見ると「早い時間に食べたほうが効果あり」という結果なのに、まとめると差が消えてしまう。
これは矛盾ではなく、それぞれの実験の人数が42〜93人と少なく、結果にばらつきが出やすいためです。

その後の実験でも、結果は分かれている

先ほどのFong 2017のまとめには含まれていない、それより後に発表された実験も見てみましょう。この2つを見ても、「差はなかった」という先ほどの結論はひっくり返っていません。

Madjd たちは2021年に、夕食の時間だけをそのまま比べる実験を行いました。過体重・肥満の女性82人を、夕食を19時〜19時半に食べるグループと、22時半〜23時に食べるグループに分けて12週間続けたところ、早く食べたグループは6.74kg減り、遅く食べたグループは4.81kgの減少にとどまりました。これは統計的にもはっきりした差でした。体重だけでなく、コレステロールやインスリンの効きやすさなども、早く食べたグループのほうが良い結果でした。

一方、Ruddick-Collinsたちが2022年に行った実験では、過体重・肥満の30人に、朝を多くする食事と夜を多くする食事を、それぞれ4週間ずつ試してもらいました。その結果、消費カロリーにも体重の減り方にも、まったく差はありませんでした(差はわずか0.24kg、統計的にも「差がある」とは言えない)。唯一違ったのは、朝を多くしたグループのほうが空腹感が少なかったという点です。

つまり、Fong 2017より後に発表された実験どうしを比べても、結果は一致していません。どちらも参加人数が82人・30人と少なく、これ1つだけで「夜に食べると太る」とも「太らない」とも言い切ることはできません。

日本の研究者がまとめたレビューでも「一貫しない」という結果

ここまでは主に海外の研究を見てきましたが、日本語で発表されたまとめでも、同じような結果が出ています。小澤さんたち(2016年、日本健康教育学会誌)は、2005年からの10年間に発表された英語論文を検索し、596件のタイトルと要約を確認したうえで、最終的に11件の論文を選び出しました。

結果は次の通りでした。

  • 11件のうち5件:夜遅く食べる人はBMIが高い、または体重が増えやすい(「太りやすい」という結果)
  • 11件のうち5件:夜遅い食事と体重に、はっきりした関連はなかった
  • 11件のうち1件:むしろ夜遅く食べる人のほうがメタボのリスクが低かった

研究者たちは「夜遅い食事と肥満の間には、太りやすいという結果、関連がないという結果、逆に太りにくいという結果が混ざっていて、一貫した結論は出せなかった」とまとめています。1日の総カロリーをちゃんと調整しているかどうかが、結果を左右している可能性があるとも指摘しています。

同じ研究グループは翌2017年、日本人を対象にした研究だけに絞った続報も発表しました。314件のタイトル・要約を確認し、21件(大人を対象にしたもの15件、子どもを対象にしたもの6件)を選んでいます。大人で「夜遅い食事」を調べた12件のうち、7件で太りやすいという結果、2件で性別によって結果が変わる、3件で関連なしでした。「夜食」についても複数の研究がありましたが、太りやすいという結果・関連なし・逆に太りにくいという結果が入り混じっており、大人と同じく子どもの研究でもはっきりした傾向はありませんでした。

この2本の日本語のレビューは、これまで見てきた海外の研究の状況とよく似ています。実験(RCT)でも、体の仕組みの研究でも、これまでの調査(観察研究)でも、どの角度から見ても「夜遅い食事は太る」と単純には言い切れないということが分かります。

まとめ

ここまでの内容を整理すると、こうなります。

  • 言えること:いくつかの実験で、食事を早い時間に寄せたグループのほうが体重の減り方やインスリンの効きやすさが良かった、という結果が出ている。体の仕組みを調べた研究でも、遅い時間の食事は空腹感や消費カロリー、脂肪のたまりやすさに不利に働く可能性が示されている。
  • 言えないこと:これらの実験の多くをまとめたFong 2017の調査では、統計的にはっきりした差は出ていない。1つ1つの実験で差が出ていても、参加人数が少なく、実験ごとのばらつきが大きいため、まとめると効果がぼやけてしまう。またRuddick-Collinsの実験のように、単独でも差が出なかったものもある。「夜に食べると必ず太る」と言い切れる段階にはまだない。

結果が実験ごとにバラつく背景には、参加者の傾向(女性だけを対象にした実験が多い)、参加人数の少なさ(30〜93人程度)、食事の中身やカロリー管理のしかたの違いなど、いろいろな要因が関わっていると考えられます。

もう1つ見逃せないのが、「夜遅く食べる人」は、それ以外の生活習慣も同時に異なっていることが多いという点です。実は、体の仕組みを調べたVujović 2022の研究チーム自身も、この点を認めています。研究を率いたScheer氏は、「今回はカロリー摂取量・運動量・睡眠・光を浴びる時間といった要因を厳密にそろえることで、食事の時刻だけの影響を切り分けたが、実際の生活ではこれらの要因の多く自体が、食事の時刻によって影響を受けている可能性がある」と述べています。つまり実験室では時刻だけを変えられても、現実の生活では「夜遅く食べる人」は「睡眠時間が短い」「運動量が少ない」といった別の要因も同時に抱えていることが多く、これらが絡み合っている可能性があるということです。実際、睡眠不足そのものが肥満と関連することは複数の研究で示されており、夜遅くまで起きている人は必然的に睡眠時間が短くなりやすいという点も、体重増加の別ルートとして考えられます。

今言えるのは、「食事を早い時間に寄せる工夫は、ダイエットの選択肢の1つになるかもしれないが、これをやれば必ず痩せる、と言い切れるほどの証拠はまだそろっていない」という、控えめな結論です。

参考文献

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歯科医師・ブロガー
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