お酒はダイエットにどのくらい良くないのか
「お酒を飲むと太る」——そんな話をよく耳にします。一方で「ワインなら大丈夫」「毎日飲んでも痩せている人もいる」という声もあり、実際のところどうなのか、はっきりしないまま何となく敬遠している人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、お酒とダイエットの関係は「飲めば必ず太る」という単純な話ではありません。ただし、体の中では「代謝」「内臓脂肪」「食欲・食行動」という複数の経路が絡み合っています。特にたくさん飲む習慣がある場合は、これらが重なって「太りやすさ」につながることが、複数の研究から見えてきています。まずはお酒の基礎的なカロリーの特徴を押さえたうえで、そのしくみと実際のデータを、研究をもとに整理してみます。
アルコールのカロリー特性
まず基本情報として、純アルコールは1gあたり7.1kcal(29kJ)のエネルギーを持っています。これは炭水化物やたんぱく質(1gあたり4kcal)よりも高く、脂質(9kcal)に次ぐ高いカロリーです。
しかも、アルコールにはビタミンやミネラルといった栄養素がほとんど含まれていません。この「栄養がないのにカロリーだけある」という性質から、アルコールはしばしば「エンプティカロリー」と呼ばれます。
飲酒量が多いほど、太りやすいのか
では、実際に飲む量と体重・肥満には関係があるのでしょうか。この問いに答える大規模な研究として、127件の研究をまとめて分析した論文があります(Golzarand et al., 2021, Critical Reviews in Food Science and Nutrition)。
この研究では、ある一時点で飲酒量と体格を比べる「横断研究」というタイプの調査において、たくさんお酒を飲む人(1日あたり純アルコール28g超、ビールなら中瓶1.5本程度)は、あまり飲まない人と比べて、過体重になっているオッズ比(なりやすさの目安)が1.12倍、過体重・肥満をあわせたオッズ比が1.32倍、お腹まわりに脂肪がつく「腹部肥満」のオッズ比が1.25倍と、いずれも統計的に意味のある差がありました。
ただし、ここには重要な注意点があります。同じ人を長期間追いかけて調べる「コホート研究」——横断研究よりも信頼性が高いとされる調査方法——に限って見てみると、この関係は消えてしまうのです。同じ3つの項目で見ると、過体重のオッズ比は0.93倍、過体重・肥満は1.15倍、腹部肥満は1.13倍となり、いずれも統計的に意味のある差はありませんでした。
「ある一時点だけを見ると関係がありそうに見えるが、長期間追いかけると関係が消える」——この食い違いは、お酒と肥満の関係を考えるうえで見過ごせないポイントです。この分野で484件も引用されている、よく参照されるまとめ論文(Traversy & Chaput, 2015, Current Obesity Reports)も、「軽い〜ほどほどの飲酒は体重増加とはっきりした関係を示さないが、大量に飲む場合はより一貫して体重増加と関係する」と結論づけており、この構図とだいたい一致しています。
つまり、「軽く飲む程度なら体重への影響は限られる」というのが研究全体の大まかな傾向である一方、「たくさん飲む習慣がある場合は話が別」という、二段構えで理解する必要がありそうです。
なぜ「お酒で脂肪がつきやすい」と言われるのか
飲酒量と体重の「関係」は、ここまで見てきた通りやや複雑です。しかし、体の中で実際に何が起きているかという「しくみ」については、より分かりやすい実験結果があります。
1992年、New England Journal of Medicineという医学雑誌に載ったSuter・Schutz・Jéquierらの研究(203件も引用されている)は、8名の健常な男性を対象に、密閉された特殊な部屋(代謝チャンバー)で24時間、体がどの栄養素をエネルギーとして使っているかを測定しました。その結果、お酒(エタノール)を追加で飲んだ場合も、他の栄養素と同じカロリー分をお酒に置き換えた場合も、体が脂肪を燃やす割合が24時間で31〜36%も低下することが分かりました。
これはどういうことでしょうか。体には、アルコールを優先的にエネルギー源として使う性質があります。つまり、お酒を飲みながら食事もすると、体はまずアルコールを燃やそうとするため、一緒に食べた脂質の燃焼が後回しになり、結果として体脂肪として残りやすくなる——というしくみです。「お酒そのもののカロリー」だけでなく、「一緒に食べた脂質の使われ方まで変えてしまう」という点が、このしくみの重要なところです。
お腹まわりの脂肪との関係(最新の研究)
「ビール腹」という言葉があるように、お酒とお腹まわりの脂肪(内臓脂肪)を結びつけるイメージは根強くあります。これについて、2026年にInternational Journal of Obesityという雑誌に載った最新の研究が、興味深いデータを示しています(Chesters, Neville, Karpe, 2026)。
この研究では、5,761人を対象に、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)という体の中の脂肪を精密に測れる方法を使って、飲酒量と内臓脂肪の量の関係を調べました。これまでの研究の多くは、お腹まわりの長さを測るだけといった簡単な方法に頼っていましたが、この研究はより精密な測定を大人数で行った点が特徴です。
結果、年齢・喫煙・身長・運動量・社会的な背景・体全体の脂肪量といった、結果に影響しうる他の要因を考慮したうえでも、飲む量が多いほど内臓脂肪の量も多くなるという関係が、男女とも見られました。関係の強さを示す数値(β値)で見ると男性1.104倍、女性1.102倍です。ただし研究者たち自身も「これは関係が見られたというだけで、お酒が原因で内臓脂肪が増えると証明したわけではない」と述べており、この点は記事でも正直に伝えるべきポイントです。
お酒を飲むと、なぜか食べたくなる
お酒を飲むと、なぜか「もう少し食べたい」という気持ちになったことがある人は多いのではないでしょうか。これも研究で裏付けられている現象です。
Kwok et al.(2019, British Journal of Nutrition)は、お酒を飲んだ場合と飲まなかった場合を比べた22件の実験(参加者は合計およそ700人)をまとめて分析しました。その結果:
- 食事から摂ったカロリーは、お酒を飲んだあと平均343kJ(約82kcal)増えていた(12件の実験、417人分をまとめた結果)
- お酒自体のカロリーと食事のカロリーを合わせた合計は、平均1072kJ(約256kcal)増えていた(8件の実験、269人分をまとめた結果)
つまり、「お酒を飲んだ分、食事を減らして帳尻を合わせる」ということは起きにくく、むしろお酒のカロリーに加えて食事の量そのものも増える傾向があるということです。分析対象になった22件すべての実験で、飲酒後に食事量を減らして調整した例は見られませんでした。
ただし、この研究にも限界があります。分析した研究者たち自身が、実験ごとの結果のばらつきが大きいことや、小規模な実験に特有の偏りが生じている可能性を指摘しており、参加者の多くが若い成人に偏っている点にも注意が必要です。それでも、「お酒を飲むと食欲が抑えられるどころか、むしろ増える」という基本的な傾向は、複数の研究で一貫して見られています。
実際のダイエットプログラムでは何が起きるか
ここまでは、体の中の代謝メカニズムや、飲酒直後の食欲への影響についての話でした。では、こうした要因は実際のダイエットの成果にどう影響するのでしょうか。
2型糖尿病を合併した肥満・過体重の成人4,901人を対象にした大規模な臨床試験「Look AHEAD」の追加分析(Chao et al., 2018, Obesity)が、この問いに実際のデータで答えています。4年間にわたる本格的な生活習慣改善プログラムにおいて、お酒を断ち続けた参加者は体重が平均5.1%減少したのに対し、**たくさん飲む習慣を続けた参加者の減少は平均2.4%**にとどまりました(統計的に意味のある差)。4年間ずっとお酒を断っていた参加者は、途中で飲酒していた参加者と比べても1.6%多く減量できていました。
これは、これまで見てきた「代謝的に脂肪が残りやすくなる」「食欲が乱れて食べる量が増える」といった要因が積み重なった結果とも考えられます。実際のダイエットプログラムという現実的な状況で、飲酒習慣が結果に差を生むことを示した、数少ないデータの一つです。
お酒の影響も含め、減量後にどう体重を維持していくかについては、リバウンド防止に必要な運動量は?ACSM一次資料でわかる体重維持のコツで詳しく整理しています。
まとめ
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
- 軽い〜ほどほどの飲酒については、体重増加との関係は研究全体でははっきりしません。特に信頼性の高いコホート研究では、統計的に意味のある関係が見られないケースも多くあります。
- 一方で、たくさん飲む習慣については、①体が脂肪を燃やしにくくなる、②内臓脂肪が増える可能性がある、③食欲が乱れて食べる量が増える、という複数の要因が重なりやすく、実際のダイエットプログラムの成果にも差として表れています。
- 「お酒=絶対悪」ではなく、「量」と「頻度」が鍵を握っているというのが、今のところの研究から言える妥当な結論と言えそうです。
ダイエット中にお酒を完全に断つ必要はないかもしれませんが、**「量を意識する」「おつまみの内容にも気を配る」**といった工夫が、体重管理においては理にかなっていると言えるでしょう。飲んだ翌日に体重が増えていても、それがすべて脂肪とは限りません。日々の体重の増減が気になる方は、体重が毎日変動する理由とは?水分・グリコーゲンの影響を研究データで解説もあわせてご覧ください。
参考文献
- Golzarand M, Salari-Moghaddam A, Mirmiran P. Association between alcohol intake and overweight and obesity: a systematic review and dose-response meta-analysis of 127 observational studies. Critical Reviews in Food Science and Nutrition. 2021. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33998940/
- Traversy G, Chaput JP. Alcohol Consumption and Obesity: An Update. Current Obesity Reports. 2015;4(1):122-130. https://doi.org/10.1007/s13679-014-0129-4
- Suter PM, Schutz Y, Jéquier E. The Effect of Ethanol on Fat Storage in Healthy Subjects. New England Journal of Medicine. 1992;326:983-987. https://doi.org/10.1056/NEJM199204093261503
- Chesters J, Neville A, Karpe F, et al. Greater visceral fat mass accumulation with high alcohol consumption. International Journal of Obesity. 2026. https://www.nature.com/articles/s41366-026-02030-5
- Kwok A, Dordevic AL, Paton G, Page MJ, Truby H. Effect of alcohol consumption on food energy intake: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Nutrition. 2019. https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/effect-of-alcohol-consumption-on-food-energy-intake-a-systematic-review-and-metaanalysis/2F9AB5C64A86329EB9E817ADAEC3D88C
- Chao AM, Wadden TA, Tronieri JS, Berkowitz RI. The Effect of Alcohol on Weight Loss During a 4-Year Lifestyle Intervention: The Look AHEAD Study. Obesity (Silver Spring). 2018. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30421851/

