体重の変動をどう読み解くか
「昨日より体重が増えた」「今週は全然減らない」——ダイエット中、こういう一喜一憂をしたことがある人は多いと思います。でも、その変化は本当に脂肪の増減なのでしょうか。ここでは、体重がなぜ・どのくらい揺れるのか、そしてその揺れとどう付き合えばいいのかを、研究をもとにやさしくまとめました。
体重はなぜ毎日変わるのか
運動で体を大きく動かすと、筋肉にたくわえられた「グリコーゲン」という糖の貯金のようなものが減っていきます。1970年の研究では、被験者に激しい運動をさせてこのグリコーゲンを使い切らせたあと、糖質を多く含む食事を数日間与えて回復させました。すると、筋肉にたまるグリコーゲンの量が大きく増え、それにあわせて体重も4日間で2.4kg増えました。
これは「糖質を食べると体重が増える」という単純な話ではありません。運動などでグリコーゲンが減った状態から、それを埋め合わせる形で糖質を摂ったときに、グリコーゲンと一緒に水分がたまるという話です。グリコーゲンは水分を一緒に抱え込む性質があるためです(グリコーゲン1gにつき水分約3g)。ふだん通りの食事をしている人が糖質を多めに摂ったからといって、同じだけ体重が増えるわけではありません。
とはいえ、似たようなことは日常でも起こります。運動量が少なかった日の翌日にまとまった運動をした、外食で塩分や糖質をいつもより多く摂った、生理周期のタイミングと重なった——こうした場合、体重が一時的に増えても、それは脂肪が増えたのではなく水分の出入りによるものであることが多い、ということです。
体重は普段どのくらい揺れるものなのか
では、この「水分によるブレ」はどのくらいの大きさなのでしょうか。
欧州で減量後の体重維持プログラムに参加した1,421人を調べた2020年の研究によると、1週間の中での体重の揺れ(週末に増えて平日に減る、というサイクル)は平均して±0.35%くらいでした。体重68kgの人にあてはめると、約0.24kgくらいは、脂肪が増えても減ってもいないのに、普段から起こる揺れということになります。
体重計そのものの正確さについても調べた研究があります。316人を対象にした2010年の大規模な試験では、同じ日に2回体重を測ってもほとんど差がありませんでした。つまり、条件さえそろえれば、体重計自体の誤差はとても小さいということです。「先週から0.2kgくらい減った」という変化があったとしても、それは体重計がおかしいのではなく、体の中の水分量が変わっただけかもしれない、ということになります。
ただし、ここで出した±0.35%という数字は、たくさんの人の平均をとった、週の中でのサイクルです。塩分の摂り方や生理周期、お通じなど、人によって違う要因はこれとは別に上乗せされるので、実際にはもっと大きく動く日もあります。
減量はどのくらいのペースが目安なのか
比べるために、目標にする減量ペースも見ておきましょう。
ボディビルダーの大会前の食事について調べた2014年の論文では、筋肉を落とさずに脂肪を減らすには、体重の0.5〜1%を1週間の目安にするとよいとされています。体重68kgの人なら、週0.34〜0.68kgのペースです。
この数字を、さっきの「ブレの幅」(約0.24kg)と並べてみると、そこまで大きくは離れていません。

グレーが体重測定の「ブレの大きさ」、青が「目標とする脂肪の減り方」です。目標の減り方のほうが少し大きいですが、差はそこまで大きくありません。特に人によって違うところ(むくみ、生理周期など)まで考えると、1週間だけの数字の増減で「うまくいっているか」を決めるのは早いと言えそうです。
では何週間見れば十分なのか
「じゃあ具体的に何週間見れば十分なの?」——正直に言うと、これをちゃんと調べた研究は見つけられませんでした。「2週間」「3週間」とすすめているブログや本はたくさんありますが、その数字そのものを裏づける研究が見つからなかったので、ここでは具体的な週数はお伝えしません。
代わりに言えるのは、今週1回分の数字だけで判断せず、先週・先々週の数字も並べて全体の流れを見るという考え方には根拠がある、ということです。たとえば「今週は増えた」という1つの数字だけを見るのではなく、「先々週は68.2kg、先週は68.0kg、今週は68.3kg」というように何週か分を並べてみると、多少の上下があっても全体としては横ばいなのか、じわじわ減っているのかが見えやすくなります。次の2つの研究がそれを支えています。
記録を他のことと組み合わせる効果
自分で体重を記録すること(セルフウェイイング)の効果を調べた2015年の研究(いくつもの研究をまとめて分析したもの)によると、体重の記録を他の減量プログラムと組み合わせた場合、組み合わせなかった場合より体重がしっかり減っていました(4つの研究をまとめると、平均1.7kgの差)。体重の記録を含む、いろいろな取り組みをまとめて行った場合は、何もしなかったグループと比べて平均3.4kgの差もありました。
一方で、体重の記録だけを行った研究は1件しかなく、その1件では効果がはっきりしませんでした。つまり、「体重を記録するだけ」で効果があるというより、「記録することと、食事や運動を見直すことをセットにする」ことで効果が出やすいと考えられます。
記録の平均をとって見る方法
さっき紹介した2020年の欧州の研究では、毎日の体重データで抜けている部分を埋めるために、最近のデータに重みをつけて平均する方法(移動平均)が使われていました。専門的な研究でも、その日その日の数字ではなく、平均をとった数字でおおまかな流れを見る、というやり方が使われているということです。
まとめ
- 体重は毎日測って記録する
- ただし「うまくいっているか」は、今週1回分の数字だけで決めない。先週・先々週の数字も並べて、全体としてじわじわ減っているかどうかを見る
- 具体的に「何週間」見ればいいかは、まだしっかりした根拠が見つかっていないので、ここでは決めつけない
- 1週間だけの結果で一喜一憂したり、食事の量を減らしたりしない
- 生理のある方は、ホルモンの影響で体重が変わりやすいので、生理周期をふまえて長めの期間で見ると安定する
出典
- Olsson KE, Saltin B. Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. 1970;80(1):11-18. doi:10.1111/j.1748-1716.1970.tb04764.x
- Turicchi J, O’Driscoll R, Horgan G, Duarte C, Palmeira AL, Larsen SC, Heitmann BL, Stubbs J. Weekly, seasonal and holiday body weight fluctuation patterns among individuals engaged in a European multi-centre behavioural weight loss maintenance intervention. PLoS One. 2020;15(4):e0232152. doi:10.1371/journal.pone.0232152
- Maruthur NM, Vollmer WM, Clark JM, Jerome GJ, Lien LF, Loria CM, Appel LJ. Measurement of weight in clinical trials: is one day enough? J Obes. 2010;2010:413407. doi:10.1155/2010/413407
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