行動変容ステージモデル・維持期|リバウンドを防ぐには
「やっと目標体重に届いた」
ゴールに辿り着き、自分の努力が身を結んだことは素晴らしいと思います。ここまで来れたことについて自分を褒めてあげて、周りに感謝の気持ちを伝えてあげましょう。しかし、ここで油断してはいけません。リバウンドです。もちろんカロリー収支は±0になるように調整してもいいと思いますが、ここで気を抜いてしまうと、せっかく減った体重もどんどん元に戻っていってしまいます。
今回は、行動変容ステージモデルで見たときの、維持期について見ていきましょう。
維持期とは:半年を超えても、まだ終わりではない
行動変容ステージモデルで言う維持期とは、目標体重に届いた瞬間のことではありません。新しい食事や運動の習慣を6ヶ月以上続けられている状態のことです(1)。実行期との違いは、意識して頑張る場面が少しずつ減ってくることです(7)。習慣が体に染みついてきた一方で、まだ完全に安定したとは言えない、途中の時期でもあります。
自己効力感 — 誘惑に直面したときの自信
維持期を理解するうえで大事な考え方が、自己効力感です。自己効力感とは、心理学者Banduraが唱えた「自分ならできる」という感覚のことで、行動を変えるときに大きく影響すると言われています(2)。
行動変容ステージモデル(TTM)では、この自己効力感の研究は、もともと禁煙をテーマに進められてきました。DiClemente(1981)は、禁煙をやめ続けられるかどうかと自己効力感の関係を調べ、Velicerたち(1990)は、どんな場面(誘われたとき、嫌な気分になったとき、いつもの習慣が出そうなときなど)で元に戻りやすいかを、自己効力感の視点からまとめました(3)(4)。
ただし、これらの研究はどれも禁煙を対象にしたもので、ダイエットや体重管理を直接調べたわけではありません。自己効力感という考え方の土台としては参考になりますが、「ダイエットでも同じように元に戻りやすさを予測できるか」は、別の研究で確かめる必要があります。
ダイエットの研究からわかった、自己効力感の役割
そこで参考になるのが、2023年に発表されたある研究です。運動と食事、それぞれについて「元に戻りやすさ」を予測する要因を、37件の研究をもとに調べたものです(5)。
その結果、運動でも食事でも、自己効力感が低い人ほど、元に戻りやすい傾向があったということです。
ただし、この研究にも限界があります。自己効力感以外の要因も考えられますが、研究の数が少なくて、まだはっきりとはわかっていないそうです。「自己効力感さえあれば大丈夫」というわけでもないということです。
維持できる人がやっていること、やっていないこと
もう少しイメージしやすくするために、別の研究も見てみましょう。ダイエットに成功した後、体重を維持できた人と、リバウンドしてしまった人を比べた研究があります(6)。
体重を維持できた人たちに共通していたのは、食事の内容に気を配り続けていたこと、誘惑に負けそうな場面を先に予想して備えていたこと、そして、食べたい気持ちが強くなったときに何か別のことをして気を紛らわせる工夫を持っていたことでした。
一方、リバウンドしてしまった人たちは、こうした準備をあらかじめしておらず、食事の記録もいい加減になりがちで、気を紛らわせようとしてもうまくいかず、誰かと食事をする場面でも困ってしまう傾向がありました。
「意志が強いかどうか」より、「前もってどれだけ備えていたか」の差だったと言えそうです。
リバウンドを防ぐ、具体的な方法
ここまで見てきた自己効力感や計画性は、いわば「続けられるかどうか」を決める心の土台です。一方で、実際にどれくらい運動すればいいのかという、もっと具体的な目安もあります。これについては、以前の記事でACSM(米国スポーツ医学会)の公式見解をもとに詳しく説明しています。
そちらでは、リバウンドを防ぐために必要な運動量の目安を紹介しているので、あわせて読んでみてください。
一度戻っても、そこで終わりではない
最後に、ピラー記事でも触れたことをもう一度確認しておきます。行動の変化は一直線には進まず、行ったり戻ったりしながら「らせん状」に進んでいくとされています(1)。維持期に入っていたはずなのに、また前の行動に戻ってしまうことは、誰にでも起こりうることです。
大事なのは、そこで自分を責めることではなく、熟考期や準備期にもう一度戻って、次はどう工夫できるかを考え直すことだと言われています。
まとめ
維持期は、目標体重に届いた瞬間ではなく、新しい習慣が6ヶ月以上続いている状態を指します。この時期を支える鍵になるのが自己効力感で、実際にダイエットの研究でも、自己効力感が低いほど元に戻りやすい傾向が確認されています。
体重を維持できた人たちは、誘惑が強くなりそうな場面を先に予想して備え、気を紛らわせる工夫を持っていました。一方、リバウンドした人たちは、こうした準備をしていませんでした。差を生むのは「意志の強さ」よりも「事前の備え」だったと言えそうです。
具体的な運動量の目安については、リバウンド防止に関する記事で詳しく紹介しています。
そして、一度リバウンドしてしまっても、それで終わりではありません。行動の変化は「らせん状」に進むもので、また熟考期や準備期に戻って考え直せばいいだけです。
なお、ここで紹介した研究の一部は少人数を対象にしたものであり、誰にでも当てはまるとは限りません。実践すれば必ずリバウンドを防げる、というものでもない点はご理解ください。
出典
- Prochaska, J. O., DiClemente, C. C., & Norcross, J. C. (1992). In search of how people change: Applications to addictive behaviors. American Psychologist, 47(9), 1102–1114. https://doi.org/10.1037/0003-066X.47.9.1102
- Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215. https://doi.org/10.1037/0033-295X.84.2.191
- DiClemente, C. C. (1981). Self-efficacy and smoking cessation maintenance: A preliminary report. Cognitive Therapy and Research, 5, 175–187. https://doi.org/10.1007/BF01172525
- Velicer, W. F., DiClemente, C. C., Rossi, J. S., & Prochaska, J. O. (1990). Relapse situations and self-efficacy: An integrative model. Addictive Behaviors, 15(3), 271–283. https://doi.org/10.1016/0306-4603(90)90070-E
- Roordink, E. M., Steenhuis, I. H. M., Kroeze, W., Schoonmade, L. J., Sniehotta, F. F., & van Stralen, M. M. (2023). Predictors of lapse and relapse in physical activity and dietary behaviour: A systematic search and review on prospective studies. Psychology & Health, 38(5), 623–646. https://doi.org/10.1080/08870446.2021.1981900
- Lawlor, E. R., Hughes, C. A., Duschinsky, R., Pountain, G. D., Hill, A. J., Griffin, S. J., & Ahern, A. L. (2020). Cognitive and behavioural strategies employed to overcome “lapses” and prevent “relapse” among weight-loss maintainers and regainers: A qualitative study. Clinical Obesity, 10(5), e12395. https://doi.org/10.1111/cob.12395
- Prochaska, J. O., & Velicer, W. F. (1997). The transtheoretical model of health behavior change. American Journal of Health Promotion, 12(1), 38–48. https://doi.org/10.4278/0890-1171-12.1.38

