体重の課題は一つじゃない——令和6年国民健康・栄養調査に見る、性別・世代で異なる体重管理の実態
「ダイエット」と聞くと、多くの人はまず「肥満対策」を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、厚生労働省が2025年12月2日に公表した「令和6年国民健康・栄養調査」を見ると、体重の課題はそれほど単純ではないことがわかります。
男性には肥満という課題がある一方で、若い女性には「やせ」という反対方向の課題があります。さらに高齢期になると、男女どちらにも低栄養傾向という別の課題が現れます。今回は、この調査データと国の目標(健康日本21〈第三次〉)をもとに、体重管理の実態を整理してみます。
なお、本記事の数値は厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」、目標値は国立健康・栄養研究所が公開する「健康日本21(第三次)目標一覧」によります。
「適正体重の人を増やす」という目標に隠れた3つの課題
国は「健康日本21(第三次)」という健康づくりの計画の中で、「適正体重を維持している人を増やす」という目標を掲げています。適正体重とは、BMIが18.5以上25未満(65歳以上は20を超えて25未満)の範囲のことです。この範囲に収まっている人の割合を、2032年度までに66%まで引き上げることが目標です。
令和6年の調査時点では60.7%(年齢による人数の偏りを補正した値では62.2%)で、目標にはまだ届いていません。
この目標のおもしろいところは、その中身です。目標の正式名称には「(肥満、若年女性のやせ、低栄養傾向の高齢者の減少)」という言葉が添えられています。つまり、適正体重から外れてしまう理由として、性質の異なる3つの課題が想定されているのです。
- 肥満(男女どちらにも当てはまる課題)
- 若年女性のやせ(女性に限った課題)
- 高齢者の低栄養傾向(男女どちらにも当てはまる、高齢期特有の課題)
つまり「適正体重の人を増やす」という1つのゴールの中に、「性別による違い」と「世代による違い」という、2つの異なる切り口が同居しているわけです。それぞれ見ていきましょう。
性別・世代で見る体重の課題
男性の肥満
20〜60歳代の男性のうち、肥満(BMI25以上)の人は34.0%でした。おおよそ3人に1人が肥満に該当します。
ただし、肥満は男性だけの課題ではありません。40〜60歳代の女性でも、肥満の人は20.2%、つまり5人に1人ほどいます。「肥満は男性の問題」と決めつけてしまうと、女性にも一定数いる肥満の実態を見落としてしまいます。
若い女性の「やせ」
一方で、20〜30歳代の女性では「やせ」(BMI18.5未満)の人が16.6%いました。国の目標は15%なので、現状はこれをわずかに超えています。
若い女性のやせは、必ずしも医学的な必要性から痩せているわけではなく、「痩せているほうがいい」という周囲の価値観や、他人と比較してしまう心理が背景にあるとされることがあります(この点は、社会的比較理論という考え方をもとに別の記事で詳しく取り上げています)。実際の栄養状態と、本人が理想とする体型との間にズレがある可能性がある、という点は押さえておきたいところです。
男女どちらにも共通する課題:高齢者の低栄養傾向
3つ目の課題は、高齢者(65歳以上)の低栄養傾向です。BMIが20以下の高齢者は19.5%で、目標の13%を大きく上回っています。
ここで注意したいのは、この課題が「女性の課題」の延長線上にあるものではないということです。国の目標でも、男女を分けずに高齢者全体の課題として扱われています。若い女性の「やせ」とは別のカテゴリーの課題であり、男性・女性どちらにも起こりうるリスクとして捉える必要があります。
運動・歩数・睡眠から見るエネルギーの収支
体重管理を考えるうえで欠かせないのが、日々の運動や休養の状況です。
運動習慣のある人の割合は全体で34.6%(年齢による偏りを補正した値では31.3%)と、目標の40%には届いていません。男女別に見ると、男性38.5%、女性31.5%で、女性のほうが低い傾向にあります。
歩数は1日平均7,071歩(補正値7,231歩)で、目標の7,100歩にはほぼ届いています。男性7,763歩、女性6,495歩と、こちらも男女で差があります。
睡眠については、ここ1か月間で「休養がとれている」と答えた人の割合が79.6%(目標80%)、1日6〜9時間(60歳以上は6〜8時間)眠れている人が56.0%(目標60%)と、どちらも目標にわずかに届いていません。
これらのデータは体重管理と関係の深い生活習慣として紹介していますが、「運動不足や睡眠不足が肥満・やせの原因である」と言い切れるものではありません。あくまで同じ調査の中で見られた傾向として捉えていただければと思います。
食生活に共通する課題
食生活の面でも、目標に届いていない項目がいくつかあります。
野菜の摂取量は男性268.6g、女性250.3gで、目標の350g(男女共通の目標です)には届いていません。果物の摂取量も全体で78.1g(男性70.4g、女性84.7g)と、目標の200g(こちらも男女共通)を大きく下回っています。食塩の摂取量は男性10.5g、女性8.9gで、目標の7g(男女共通)をまだ上回っている状況です。
なお、これら野菜・果物・食塩の目標値は、いずれも男女を分けない全体の目標です。性別ごとに別の目標が設定されているわけではありません。
また、主食・主菜・副菜をそろえた食事を1日2回以上、ほぼ毎日食べている人の割合は52.8%で、目標の50%は達成しています。ただし年齢別に見ると、男女とも20歳代がもっとも低い層です。若い世代の食生活の乱れは、性別を問わない共通の課題と言えそうです。
生活習慣病リスクにも軽く触れておきます
体重管理は、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクとも関係が深いとされています。参考までに、関連する数値にも軽く触れておきます。
糖尿病が強く疑われる人の割合は12.9%(人数にすると推計約1,100万人)で、平成9年以降、増え続けています。国の目標では、この推計人数を1,350万人以内に抑えることを目指しています。
このほか、生活習慣病のリスクを高める量のお酒を飲んでいる人の割合は11.4%(目標10%)、血圧(上の血圧)の平均は126.4mmHg、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が160mg/dl以上の人の割合は8.1%でした。これらは体重管理に関わる指標として簡単に紹介するにとどめ、詳しくはまた別の機会に取り上げたいと思います。
まとめ:体重の「ちょうどよさ」は一方向ではない
今回のデータからわかるのは、「体重を減らせばいい」「痩せればいい」という単純な話ではない、ということです。
男性には肥満という課題があり、若い女性にはやせという反対方向の課題があります。そして高齢期になると、男女どちらにも低栄養傾向という別の課題が現れます。同じ「適正体重を増やす」という目標の中に、性別による違いと世代による違いという、2つの異なる切り口が存在しているのです。
自分自身、あるいは家族の誰かがどの課題に当てはまりそうか、意識してみることが、体重管理を考えるうえでの出発点になるのではないでしょうか。
出典
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