体重が増える・減る仕組み|7,000kcalルールで作る現実的な減量計画
「糖質を減らす」「脂質を減らす」「食べる時間を工夫する」——ダイエットの情報はたくさんありますが、実はそのほとんどが、たった一つの原理の上に成り立っています。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に、この原理と、それを使った具体的な減量計画の立て方をまとめた参考情報シート(INFORMATION 8「身体活動とエネルギー・栄養素について」)があります。この記事では、その内容をもとに、体重が増減する基本の仕組みと、現実的な減量計画の立て方を整理します。
1. エネルギー収支バランス — 体重増減を決める、たった一つの原理
体重の増減は、突き詰めると「摂取エネルギー」と「消費エネルギー」の差(エネルギー収支バランス)で決まります。
食べた分(摂取エネルギー)が使った分(消費エネルギー)より多い状態が続けば体重は増え、逆に使った分の方が多い状態が続けば体重は減ります。これは、糖質制限だろうと脂質制限だろうと、間欠的断食だろうと変わらない、体重変化そのものの土台です。
ただし、ここで一つ注意しておきたいことがあります。エネルギー収支のアンバランスは、短期的には体重を動かしますが、長期的にはエネルギー摂取量・消費量・体重そのものが互いに連動して変化し、やがて出納がゼロになって体重が安定していきます。ダイエット中に「最初は順調に減っていたのに、途中から減りにくくなった」と感じることがあるのは、体がこうした形で釣り合いを取り直そうとするためだと考えられます。
また、体重や体組成に変化がなければ、肥満気味の人でもやせ型の人でも、摂取エネルギーと消費エネルギーは釣り合っていると考えられます。「太っている人は代謝が特別悪い」というような単純な話ではなく、今の体重を維持できているという事実自体が、その人にとってのエネルギー収支が釣り合っていることを示しているわけです。
なお、食べる時間帯によって体重管理への影響が変わりうるという「時間栄養学」の知見もありますが、これはあくまで総カロリーの管理を補う一つの選択肢に位置づけられるものです(詳しくは食べる時間帯で太りやすさは変わるのか?で扱っています)。エネルギー収支という土台があってこそ生きてくる、微調整の要因だと考えるとバランスが取れます。
2. 体脂肪1kgを減らすのに必要なエネルギー量:7,000kcalルール
エネルギー収支の原理はわかっても、「では実際に何kcal減らせば、どれだけ体重が減るのか」がわからなければ、計画は立てられません。ここで使われるのが、「体脂肪1kgを減らすために必要なエネルギー量は約7,000kcal」という考え方です。これは、特定保健指導(いわゆるメタボ健診で内臓脂肪の減少が必要と判定された人向けの指導)でも実際に使われている数字です。
これは、肥満の方が計画的に減量を進めるときの目安として使われている数値で、身体活動による消費と、食事から摂取するエネルギー量の両方を調整しながら進めることが必要だとされています。
ステップ1:現在の自分を知る
まずは、身長・体重・BMIを確認し、目標体重との差(何kg減らしたいか)を出します。
ステップ2:目標を立てる
いつまでにその体重を達成したいか、期間の目安を決めます。
ステップ3:目標達成に必要な計画を立てる
減らしたい体重(kg)に7,000kcalを掛け、それを期間(か月)と30日で割ると、1日あたりに削減が必要なエネルギー量が出ます。
減らしたい体重(kg) × 7,000kcal ÷ 期間(か月) ÷ 30日 = 1日あたりの削減エネルギー量(kcal/日)
例えば、3kgを3か月で減らしたい場合、3×7,000÷3÷30=約233kcal/日を、身体活動と食事の両方で減らしていく計算になります。
ここでのポイントは、「食事だけ」でも「運動だけ」でもなく、身体活動での消費分と、食事での削減分を、それぞれ配分して考えることです。極端な食事制限だけに偏ると長続きしにくいため、無理のない範囲で両方から少しずつ削っていくのが現実的です。
なお、この1年間で体重が変わっていなければ補正は不要ですが、この1年間で体重が増えていた場合は、その増えた分のエネルギー量([増えた体重(kg)]×7,000kcal÷365日)を、上記の削減量に上乗せして考える必要があります。
身体活動によるエネルギー消費量の目安
身体活動によるエネルギー消費量は、「メッツ×時間(h)×体重(kg)」で推定できます。参考までに、10分間の身体活動でのおおよその消費量は次の通りです(体重60kgの場合)。
| 身体活動 | 強度(メッツ) | 10分間の消費量(体重60kg) |
|---|---|---|
| 普通歩行 | 3.0 | 約20kcal |
| ゴルフ | 3.5 | 約25kcal |
| 速歩・自転車(軽い負荷) | 4.0 | 約30kcal |
| 軽いジョギング | 6.0 | 約50kcal |
| テニス(シングルス) | 7.0 | 約60kcal |
| 水泳・ランニング | 8.0 | 約75kcal |
1回あたりの運動でカバーできる量は決して大きくないことがわかります。だからこそ、「運動だけで一気に減らす」のではなく、日々の食事の見直しと組み合わせることが大切です。
3. 身体活動量に応じたたんぱく質摂取
減量計画を立てるうえで、もう一つ押さえておきたいのがたんぱく質の摂取量です。
運動不足の状態は体たんぱく質の異化(分解)を招く一方、適度な運動は食事性たんぱく質の利用を高めます。反対に、激しい運動はたんぱく質の分解を進めるため、運動強度に応じて必要なたんぱく質量はU字型を描くと言われています。運動不足でも、逆に激しすぎる運動をしていても、たんぱく質の必要量は増える方向に動く、というイメージです。
摂れば摂るほど良いわけではない
たんぱく質摂取量と筋肉量増加の関係を調べた系統的レビュー(Tagawa et al., 2020)によると、毎日の総たんぱく質摂取量が体重1kgあたり0.1g/日増えるごとに、2〜3か月で筋量が0.39kg増加するという、正の用量反応関係が示されています。
ただし、この関係は無限に続くわけではありません。1日の総たんぱく質摂取量が体重1kgあたり1.3gを超えると、筋量が増える効率はだんだん悪くなっていくとされています。「たくさん摂れば摂るほど筋肉が増える」わけではない、という点は覚えておきたいポイントです。
ここで一つ補足しておきます。今紹介した1.3gという数字は、カロリー制限をしているかどうかを問わない、幅広い人を対象にした「筋肉を増やす」研究から出てきたものです。一方、ダイエット中(カロリーを減らしている状態)に「筋肉の減りをできるだけ抑える」ことに絞った研究では、これより高めの数字(体重1kgあたり1.2〜1.9g程度)が示されています。詳しくはダイエット中のPFC管理って何のこと?で扱っていますので、あわせてご覧ください。同じ「たんぱく質の必要量」でも、「増やしたいとき」と「減らさないようにしたいとき」で数字が違う、というくらいに捉えておくとわかりやすいと思います。
摂りすぎのリスクにも注意
たんぱく質は「多く摂れば安心」というものでもありません。必要な量以上に摂り続けると、腎機能をはじめとする体への負担が増える可能性があるとされています。
特に注意したいのが腎臓です。慢性腎臓病(CKD)がある場合、たんぱく質を摂りすぎると腎機能の低下が早まる恐れがあるため、一般的にはむしろ制限が行われます。高血圧や糖尿病がある方、高齢の方も、自覚のないまま腎機能が落ちていることがあるので、たんぱく質の摂取量を大きく変えたいときは、まずかかりつけの医師に相談すると安心です。
まとめ:ダイエットは「エネルギーの引き算」と「栄養の質」の両輪
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
- 体重の増減は、摂取エネルギーと消費エネルギーの差(エネルギー収支バランス)で決まる
- 長期的にはエネルギー摂取・消費・体重が連動して調整され、体重は安定していく性質がある
- 体脂肪1kgを減らすのに必要なエネルギー量は約7,000kcalとされ、身体活動と食事の両方から計画的に削っていくのが現実的
- 身体活動量に応じて、必要なたんぱく質量も変わる(U字型)。ただし摂れば摂るほど良いわけではなく、目的(増量か、減量中の維持か)によって目安は異なる
なお、今回扱ったのは、主に肥満・過体重気味の方が計画的に減量を進める場面を想定した内容です。すでに健康障害が出ている場合や、大きく体重を落とす必要がある場合は、自己判断で進めるのではなく医療機関に相談することが基本になります。この点は肥満とやせ、それぞれの治療はどう進む?で詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。
また、無事に目標体重まで減量できた後も、リバウンドを防ぐには、減量中とは異なる運動量が必要になることがわかっています。維持期の運動量の目安については、リバウンドを防ぐには?で詳しく取り上げています。
あわせて読みたい
参考文献
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:身体活動とエネルギー・栄養素について(INFORMATION 8). https://www.mhlw.go.jp/content/001195876.pdf
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
- Millward DJ, Bowtell JL, Pacy P, et al. Physical activity, protein metabolism and protein requirements. Proc Nutr Soc. 1994;53(1):223-240. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8029230/(DOI: 10.1079/pns19940024)
- Tagawa R, Watanabe D, Ito K, et al. Dose-response relationship between protein intake and muscle mass increase: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev. 2020;79(1):66-75. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33300582/(DOI: 10.1093/nutrit/nuaa104)
- Van Elswyk ME, Weatherford CA, McNeill SH. A Systematic Review of Renal Health in Healthy Individuals Associated with Protein Intake above the US Recommended Daily Allowance in Randomized Controlled Trials and Observational Studies. Adv Nutr. 2018;9:404-418. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30032227/(DOI: 10.1093/advances/nmy026)
- 厚生労働省「運動基準・運動指針の改定に関する検討会」報告書(平成25年3月). https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf

