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オートミールダイエットは効果ある?EFSAの公的評価と一次資料から検証する

健康的オートミール朝食コラージュ
むー

「ご飯をオートミールに変えるだけで痩せる」。オートミールを炊いたご飯のようにして食べる「米化」をきっかけに、オートミールダイエットは一気に広まりました。

痩せる理由として、よく次の3つが挙げられます。

  1. 低カロリー
  2. 血糖値が上がりにくい
  3. 満腹感が続く

この記事では、この3つが本当かどうかを、一つずつ確かめていきます。

確かめるために使うのは、次の3つです。

  • 欧州食品安全機関(EFSA)の評価:EFSAは、ヨーロッパの公的な機関です。「この食品にはこんな健康効果がある」という主張に、科学的な根拠があるかどうかを審査しています。オーツ麦に多い食物繊維「β-グルカン」(水に溶けるタイプの食物繊維)についても、何度か審査しています。
  • 日本の公的なデータ:食品の成分表や、国が定めた栄養の基準など
  • 研究論文

先に結論をお伝えします。

低カロリーなのは、主に1食で食べる量が少ないからです。公的に効果が認められているのは、血中コレステロールと食後の血糖についてです。ただし血糖については、ふつうの1食(30g)では、認められた条件に届きません。体重と満腹感への効果は、公的な評価では確かめられていません。

1. 栄養成分:「100g」ではなく「1食の量」で比べる

100gで比べると誤解する

国の「日本食品標準成分表」で100gあたりのカロリーを比べると、オートミールは350kcal、ご飯(精白米)は156kcalです。これだけ見ると、オートミールのほうがずっと高カロリーです。

でも、これは「乾いたオートミール」と「水を吸って炊き上がったご飯」を、同じ重さで比べた数字です。実際に1回で食べる量で比べないと、意味のある比較になりません。

ご飯をオートミールに変えたときの1食の比較

ここでは、次の量で比べます。

  • オートミール30g:主なメーカーが1食分としている量(日食・ケロッグの商品表示より)
  • ご飯150g:国の「食事バランスガイド」で「中盛1杯」とされている量(厚生労働省 e-ヘルスネットより)

なお、この「オートミール30gとご飯150g」の比べ方は、ケロッグも宣伝で使っています。この記事で商品名を出すのは、数字の出どころを示すためです。特定の商品をおすすめするものではありません。

1食あたりオートミール30gご飯中盛150g
カロリー約105kcal約234kcal
利用可能炭水化物約19g約57g
食物繊維約2.8g約0.45g

※「利用可能炭水化物」は、炭水化物のうち、体の中でエネルギーとして使われる部分(でんぷんや糖など)のことです。
※カロリーと利用可能炭水化物は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数字から計算しました。利用可能炭水化物は、ブドウ糖などの量に換算した値(単糖当量)です。
※食物繊維は、測り方をそろえた数字です。食物繊維は、測り方によって数字が変わります。ご飯の食物繊維は、今の成分表(八訂)では新しい測り方による値(100gあたり1.5g)が載っています。ここでは、オートミールの数字と測り方をそろえるため、国の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の報告書に載っている旧版(七訂)の値(100gあたり0.3g)を使いました。

1食で比べると、オートミールのカロリーはご飯の半分以下です。ただ、100gあたりでは、オートミールのほうが高かったことを思い出してください。カロリーの差は、オートミールそのものが低カロリーだからではなく、主に1食で食べる量の差によるものです。

2. 公的に認められている効果(体重ではない)

EFSAが、オーツ麦・大麦のβ-グルカンに効果があると認めているのは、「血中コレステロール」と「食後の血糖」の2つです。どちらも、体重についての評価ではありません。

2-1. 血中コレステロール(EFSA 2009)

EFSAは2009年、β-グルカンを食べると血中コレステロールが下がる、という「原因と結果の関係」(因果関係)が認められると結論づけました。

根拠になったのは、「ランダム化比較試験」という種類の研究です。これは、参加者をくじ引きのようにグループに分けて、結果を比べる実験のことです。加工していないか、加工の少ないオーツ麦・大麦のβ-グルカンを1日3g以上とった試験の大半で、LDL(悪玉)コレステロールが下がっていました。

ただし、EFSAが紹介した「メタ分析」(たくさんの研究をまとめて分析する方法)では、下がり方は比較的小さく、研究によってばらつきがありました。

この評価の対象は、コレステロールがふつうか、少し高めの大人です。

では、オートミールを食べれば、1日3gのβ-グルカンがとれるのでしょうか。実は、オートミールにβ-グルカンがどれだけ入っているかは、日本食品標準成分表には載っていません。商品によっても違います。たとえば日食の2つの商品では、30gあたり1.0gと1.2gと表示されています(商品表示より)。

2-2. 食後の血糖

食後の血糖については、EFSAが2つの評価を出しています。

EFSA 2011年の評価

オーツ麦・大麦のβ-グルカンは、食後に血糖が上がるのを抑える、と結論づけました。条件は、1回の食事で、利用可能炭水化物30gあたり、β-グルカンを4gとることです。根拠になったのは、主にパンとパスタを使った研究でした。

EFSA 2026年の評価

オーツ麦のβ-グルカンは、食後の血糖のピーク(いちばん高くなったときの値)を下げる、と結論づけました。条件は、1回の食事に利用可能炭水化物が30g以上含まれ、そのうえで30gあたりβ-グルカンが3g以上あることです。根拠になった研究は、すべて「1回の食事のあとの血糖」を調べたものです。

なお、EFSAが評価を出しただけでは、EUで商品にこの効果を表示できるようにはなりません。2026年9月の時点で、この評価をもとにした表示が、EUで認められたことは確認できていません。

これらの根拠は、主に健康な人を対象にした研究です。糖尿病の方は、食事を変える前に主治医に相談してください。

2-3. ふつうの食べ方で、条件を満たせるか

では、ふだんの食べ方で、この条件を満たせるのでしょうか。

EFSAが2011年の評価で調べた研究の一つ(Behall 2005)では、使われたオーツ粉とオートミールのβ-グルカンは、利用可能炭水化物30gあたり約1.8gでした。4gの条件には届いていません(なお、砂糖と比べると、食後の血糖は下がっていました)。

また、オートミール30gだけでは、利用可能炭水化物が約19gしかありません。2026年の評価の条件である「1回の食事で30g以上」に届きません。

一方で、これはβ-グルカンの効果とは別の話ですが、1章で見たように、オートミール30gの利用可能炭水化物は、ご飯150gの約3分の1です。

この章のまとめ:公的に効果が認められているのは、血中コレステロールと食後の血糖です。どちらも、体重についての評価ではありません。

3. 満腹感と体重:公的な評価では確かめられていない

3-1. 満腹感(EFSA 2011)

EFSAは2011年、「オーツ麦・大麦のβ-グルカンは、満腹感を高め、長持ちさせる」という主張も審査しています。

根拠として出された研究は2つだけでした。どちらも、試験用の食事を1回食べたあとの食欲を調べたものです。くり返し食べたときに効果が続くかは、調べられていませんでした。そのためEFSAは、「満腹感が続いて、食べる量が減る」という因果関係は確かめられていない、と結論づけました。

3-2. 体重(EFSA 2009)

EFSAは2009年、大麦・オーツ麦の食物繊維について出された「体重の管理を助ける」という主張を、β-グルカンの効果として審査しています。

根拠として挙げられた文献は77ありました。しかし、その大半は、食物繊維全般や、β-グルカン以外の食物繊維と満腹感についての研究でした。オーツ麦・大麦の食品と満腹感を調べた研究は、4つだけ(3-1の2つの研究を含む)です。β-グルカンと体重の関係を調べた研究は、1つもありませんでした。

EFSAは、β-グルカンを食べることと、ふつうの体重を保つ・ふつうの体重にすることとの間に、因果関係は確かめられていないと結論づけています。

3-3. 正しい読み方

ここで気をつけたいのは、満腹感も体重も、「効果がない」と判定されたわけではないことです。EFSAの判断は、「出された証拠では、効果を確かめられなかった」というものです。

3-4. 「満腹感→食べる量→体重」の流れ

EFSAは2011年の評価の中で、「満腹感が続けば、食べる量が減り、体重が減ることにつながりうる」と説明しています。「オートミールは満腹感が続くから痩せる」という話は、まさにこの流れです。

でも、オーツ麦・大麦のβ-グルカンについては、この流れのどの段階も、公的な評価では確かめられていません。

4. それでも取り入れるなら

4-1. 選ぶなら、加工の少ないもの

EFSAは2009年の評価で、β-グルカンがコレステロールを下げる効果は、製造のときの熱などで弱まったり、なくなったりすることがある、としています。

食後の血糖については、オーツ麦の加工の仕方と食後の血糖の関係を調べたメタ分析(Musa-Veloso 2021)があります。精製した穀物(白いパンなど)と比べると、粒のままのオーツ麦や、厚いフレーク(0.6mmより厚いもの)では、食後の血糖が下がりました。一方、薄いフレーク・クイック・インスタントのものでは、差がありませんでした。ただし、これはオートミールのメーカーがお金を出した、小規模な研究です。

日本の商品では、フレークの厚さはふつう表示されていません。「ロールドオーツ」「クイックオーツ」「インスタントオーツ」といった商品名は、加工の度合いを知るための目安にとどまります。

4-2. 「置き換え」として考える

1章で見たように、オートミールに変えたときのカロリーの差は、主に1食の量の差によるものです。甘い味つきの商品を選んだり、トッピングを足したりすれば、その差は小さくなります。

1食を置き換える方法そのものの効果については、「置き換えダイエットは効果ある?一次文献と日本の制度から検証する」でくわしく解説しています。

4-3. 食物繊維をとる手段として

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病を防ぐための食物繊維の目標量を、30〜64歳で男性1日22g以上、女性1日18g以上としています。理想は大人で1日25g以上ですが、今の日本人が実際にとっている量を考えて、低めに決められています。

オートミール30gの食物繊維は、約2.8gです(日本食品標準成分表より。目標量と同じ測り方の値)。商品表示では、30gあたり約2.9〜3.3gです(日食・ケロッグの商品表示より)。

ただし、国が勧めているのは「食物繊維をとること」で、「オートミールを食べること」ではありません。オートミールは、食物繊維をとるための食品の一つ、と考えるのがよいでしょう。

まとめ

  1. 低カロリーになるのは、主に1食の量が少ないから。100gあたりでは、オートミールはご飯より高カロリー
  2. 公的に効果が認められているのは、血中コレステロールと食後の血糖。ただし、条件を満たすには量や選び方に注意が必要。ふつうの1食(30g)では、食後の血糖の条件に届かない
  3. 満腹感と体重への効果は、公的な評価では確かめられていない。「効果がない」ではなく、「まだ確かめられていない」
  4. 取り入れるなら、加工の少ないものを、「置き換え」と「食物繊維をとる手段」として。

オートミールは「食べれば痩せる食品」ではありません。ご飯の量を減らしたり、食物繊維を補ったりするための、選択肢の一つです。

参考文献

  1. EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on the substantiation of health claims related to beta-glucans and maintenance of normal blood cholesterol concentrations (ID 754, 755, 757, 801, 1465, 2934) and maintenance or achievement of a normal body weight (ID 820, 823) pursuant to Article 13(1) of Regulation (EC) No 1924/2006. EFSA Journal. 2009;7(9):1254.:DOI
  2. EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on the substantiation of health claims related to beta-glucans from oats and barley and maintenance of normal blood LDL-cholesterol concentrations (ID 1236, 1299), increase in satiety leading to a reduction in energy intake (ID 851, 852), reduction of post-prandial glycaemic responses (ID 821, 824), and “digestive function” (ID 850) pursuant to Article 13(1) of Regulation (EC) No 1924/2006. EFSA Journal. 2011;9(6):2207.:DOI
  3. EFSA Panel on Nutrition, Novel Foods and Food Allergens (NDA). Oat beta-glucans and reduction of postprandial glucose peak: Evaluation of a health claim pursuant to Article 13(5) of Regulation (EC) No 1924/2006. EFSA Journal. 2026;24(2):e9942.:DOI(申請者はスウェーデンのScanOats)
  4. Musa-Veloso K, Noori D, Venditti C, Poon T, Johnson J, Harkness LS, O’Shea M, Chu Y. A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials on the Effects of Oats and Oat Processing on Postprandial Blood Glucose and Insulin Responses. J Nutr. 2021;151(2):341-351.:DOI(研究資金はPepsiCo。著者にPepsiCo社員と、その委託先の社員を含む)
  5. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(食品番号01004 オートミール、01088 水稲めし 精白米 うるち米):食品成分データベース
  6. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 炭水化物:PDF
  7. 厚生労働省 e-ヘルスネット「食事バランスガイド(基本編)」:e-ヘルスネット

内部リンク:置き換えダイエットは効果ある?一次文献と日本の制度から検証する

本記事は上記の一次資料の内容をもとに執筆しています。治療が必要な方や、持病・服薬中の方は、医療機関にご相談ください。

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歯科医師・ブロガー
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