ダイエット

チートデイは本当にダイエットに効果があるのか

チートデイのごちそう祭り
むー

ダイエットしたことがある人なら一度は聞いたことがある「チートデイ」。 これは本当にダイエットに効果があるのでしょうか?

結論から書くと、柔軟な食事管理は、長期的なダイエット継続のために心理的な面で有効な場合もある一方、量や頻度をコントロールしないと食べ過ぎにつながる可能性もあります。

ダイエットの継続に必要なこと

ダイエットに一番重要なことは継続することです。 その継続のしやすさに関連する要因の一つとして、厳格な統制ではなく、柔軟な統制が挙げられます。

Westenhoefer, Stunkard, & Pudelが1999年に発表した研究があります。この研究は3部構成で、研究Ⅰが54,517人、研究Ⅱが85人、研究Ⅲが1,838人と大規模な調査です。

この研究は食事制限において、柔軟な統制と厳格な統制という2つのスタイルを比較しています。なお、この2つは同じ物差しの両端ではなく、別々に測定される独立した傾向とされています。

結果をまとめると以下のとおりです。

指標厳格な統制柔軟な統制
脱抑制(いったん崩れると歯止めが効かない傾向)高い低い
BMI高い低い
過食エピソード頻繁・深刻少なく軽度
自己申告のエネルギー摂取量記載なし少ない
1年間の減量プログラムでの成功率記載なし高い

厳格な統制に関する自己申告エネルギー摂取量と1年後の成功率については、論文の抄録に記載がなく、本文を確認しないと分かりません。

この研究は質問票による調査で、柔軟な統制と減量成功のあいだに関連が見られたというものであり、「柔軟にすれば必ず継続できる」という因果関係を証明したものではない点は補足しておきます。

ちなみに、厳格な統制と柔軟な統制の具体的な違いを比べると以下のとおりです。

厳格な統制柔軟な統制
食品への態度禁止食品を完全排除少量なら許容
ルール違反時の反応過食・罪悪感(what the hell効果)他の食事で調整
カロリー管理厳密なカウント状況に応じた柔軟な判断
極端な手段断食を使うことがある使わない
感情面否定的感情・心配が強い肯定的感情が強い

柔軟な統制の中心的な考え方は、「普段避けている食品も、少量であれば、あるいは特定の機会であれば問題ない」という認識を持つことです。これにより、たとえ計画から外れても「もうダメだ」とはならず、部分的な調整で立て直せるため、脱抑制(disinhibited eating)に陥りにくいとされています。

補足:摂食障害との関連について

なお、チートデイ的な行動と摂食障害との関連を指摘する研究もあります(Ganson et al., 2022)。この研究では1食単位の「チートミール」として扱われていますが、本記事では便宜上「チートデイ」の表記で統一します。ただしこれは横断調査であり、著者ら自身も因果関係を証明するものではないと明記しています。チートデイが摂食障害の行動と将来的に関連するのか、あるいは多くの人が意図する通り渇望や過食を実際に減らす可能性があるのかは、今後の縦断的研究を待つ必要があるとされています。因果関係が明らかでない以上、「危険だから避けるべき」と断定はできませんが、量や頻度を計画的にコントロールする姿勢自体は、無難な指針だと考えられます。

厚生労働省・ACSMは何と言っているか

「チートデイ」というテーマを調べる中で、公的機関や専門学会がどう見解を示しているのかも確認しておきます。結論としては、どちらもチートデイに関する直接的な見解を出していません。

厚生労働省

「日本人の食事摂取基準」をはじめとするMHLWの資料の中に、「チートデイ」という概念や俗語に言及した記述は見当たりません。食事摂取基準はエネルギー・栄養素の摂取基準を示す行政文書であり、「計画的な過食日」のような特定の食事戦略そのものに対する見解を出す性質の文書ではないためです。

ACSM(米国スポーツ医学会)

同様に、ACSMの公式なポジションステートメント(体重管理、身体活動ガイドラインなど)の中にも、「cheat day」という用語を扱った文書は確認できません。

なぜ両者とも扱っていないのか

これは不自然なことではありません。「チートデイ」はフィットネス業界発の俗語であり、公的機関や学術団体が公式に採用するような、厳密に定義された構成概念ではないためです。

ACSMが公式に扱っているのは、むしろ以下のような、より上位の栄養・運動生理学的な枠組みです。

  • 減量のための身体活動量に関するconsensus(Jakicic et al., 2024)
  • 体重管理におけるエネルギーバランスの原則

「チートデイ」的な発想を公的・学会レベルで扱う受け皿としては、International Society of Sports Nutrition(ISSN)のポジションスタンドや、次章で扱う「ダイエットブレイク」研究の方が近い位置にあります。

まとめ

機関チートデイへの言及
厚生労働省なし(食事摂取基準は栄養素基準を示す文書のため)
ACSMなし(公式ポジションステートメントには含まれない)

より研究に裏付けられた代替策:ダイエットブレイク

ここまで見てきたように、「チートデイ」という言葉自体を直接検証した質の高い研究は多くありません。一方で、隣接する戦略として「ダイエットブレイク」があり、こちらはランダム化比較試験(RCT)による裏付けが存在します。

チートデイとの決定的な違い

ダイエットブレイクは、「好きなだけ食べる」チートデイとは異なり、カロリー制限を一時的に中断し、メンテナンスカロリー(体重維持レベル)に戻すという、管理された介入です。

代表的なMATADOR試験(Byrne et al., 2018)では、被験者への食事提供自体が管理されていました。主要な食事に加えスナックまで含む「ベースとなる食事」が宅配され、脂質25〜30%、タンパク質15〜20%、炭水化物50〜60%というマクロ栄養素配分が、制限期・維持期を問わず計画的に設定されていました。残りのエネルギー摂取分は、研究者と相談のうえで選ぶ裁量的な項目から充当されており、食事日記による記録・管理も行われていました。

減量効果は継続的な制限と同等、しかし代謝面の裏付けがある

Poon, Tsang et al. (2025)によるメタアナリシス(RCT12件、881名)では、ダイエットブレイクを組み込んだ間欠的ダイエット(INT-B)と、継続的なカロリー制限(CER)が比較されました。

体重・脂肪量・BMI・体脂肪率・ウエスト周囲径といった体組成の変化に、両群で統計的な差はありませんでした。つまり「痩せる量」そのものは変わりません。

違いが出たのは安静時代謝量(RMR)です。CER群でのみRMRが有意に低下し、INT-B群ではその低下幅がCER群より有意に小さいことが示されました(群間差:-47.31 kcal/日)。

代謝が「上がる」わけではない点に注意

ここで注意が必要です。この結果は「ダイエットブレイクによって代謝が上がる」ことを意味しません。INT-B群でもRMRは低下しており、CER群と比べて低下の幅がやや小さいというだけです。ダイエットブレイクを挟んでも、開始時点の代謝水準を上回ることはなく、完全に維持できるわけでもありません。

チートデイに代謝面での効果を期待できるか

チートデイに代謝面での効果を期待する声もありますが、ダイエットブレイクのような、カロリー・栄養素がより厳密に管理された介入でさえ「代謝が上がる」という結果は得られておらず、「低下の幅がやや緩和される」にとどまります。管理された条件でこの程度の効果にとどまるのであれば、無制限の自由摂取であるチートデイに、それ以上の代謝面のメリットを期待するのは根拠が薄いと考えられます。

ただし、これはあくまで間接的な推論であり、「チートデイで代謝が悪化する」ことを示すデータでもない点には注意が必要です。逆に、ダイエットブレイクに一定の効果があるからといって、無制限のチートデイに同じ効果があると考えるのも、対象や介入の管理度がまったく異なるため、正確ではありません。

まとめ

ここまで、「チートデイ」について現時点で分かっていることを整理してきました。最後に全体を振り返ります。

分かったこと

  • チートデイ自体を直接検証した質の高い研究はまだ少なく、厚生労働省・ACSMも公式には扱っていません。
  • 心理的なメリットには一定の根拠があります。柔軟に少量を許容するスタイルは、過食の少なさや減量成功率の高さと関連していました(Westenhoefer et al., 1999)。ただし相関関係であり、因果関係の証明ではありません。
  • 「代謝が上がる」という主張は根拠が薄いです。より厳密に管理されたダイエットブレイクでさえ「低下の幅がやや緩和される」程度にとどまります(Poon, Tsang et al., 2025)。
  • 摂食障害との関連を指摘する研究もありますが、横断調査にとどまり、因果関係はまだ証明されていません。

実践への落とし込み

以上を踏まえると、「チートデイをすべきか、すべきでないか」という二択で考えるより、次の2点を意識する方が、現時点のエビデンスに沿った判断だと言えそうです。

  1. 量と頻度を計画的にコントロールする。高カロリー食品を完全に禁止せず、少量なら許容し、摂り過ぎた分は他の食事で調整する「柔軟な統制」(2章)が、過食エピソードの少なさや減量成功率の高さと関連していました。
  2. 代謝への過度な期待は禁物。チートデイを「代謝リセットの手段」として位置づけるより、「ダイエットを続けるための心理的な調整弁」として捉える方が、現状のエビデンスに近い理解です。

より厳密にカロリー・栄養素を管理したい場合は、前章で紹介した「ダイエットブレイク」のような、より研究に裏付けられたアプローチも選択肢になります。

一次資料一覧

  • Westenhoefer, J., Stunkard, A.J., & Pudel, V. (1999). “Validation of the Flexible and Rigid Control Dimensions of Dietary Restraint.” International Journal of Eating Disorders, 26(1), 53–64. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10349584/
  • Ganson, K.T., Cunningham, M.L., Pila, E., Rodgers, R.F., Murray, S.B., & Nagata, J.M. (2022). “Characterizing Cheat Meals Among a National Sample of Canadian Adolescents and Young Adults.” Journal of Eating Disorders, 10(1). https://link.springer.com/article/10.1186/s40337-022-00642-6
  • Jakicic, J.M. et al. (2024). ACSM Consensus Statement on Physical Activity for Weight Management.
  • Byrne, S.M. et al. (2018). MATADOR試験. International Journal of Obesity, 42, 129–138. https://www.nature.com/articles/ijo2017206
  • Poon, E.T.C., Tsang, J.H. et al. (2025). Nutrition Reviews, 83(1), 59–71. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38193357/

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歯科医師・ブロガー
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