北欧食は痩せるのか?地中海式の”北欧版”を一次文献から検証する
健康的な食事法といえば「地中海式ダイエット」が有名ですが、同じように知られているのが「北欧食(ノルディックダイエット)」です。カナダの成人肥満診療ガイドラインでは、北欧食を「地中海式・ポートフォリオ・DASH・NCEP(米国コレステロール教育プログラム)の食事を、北欧向けに置き換えたもの」と説明しています[6]。
では、なぜ北欧版が必要だったのでしょうか。
北欧食の代表的な試験を行ったデンマークの研究者らは、その理由として、デンマークで地中海式に近い食事を試した先行研究を紹介しています。研究者らによると、その研究では、減量後の体重維持ではよい結果が出ました。しかし途中でやめる人が多く、参加者からは「家族の食事に組み込みにくい」という声があったそうです[3]。
つまり、その土地の食文化に合わない食事法は続けにくいという問題意識から、北欧版が考えられたのです。
地中海式ダイエットについては、以前の記事で詳しく解説しています。
→ 地中海式ダイエットとは?研究でわかっている健康効果をわかりやすく解説
この記事では、北欧食の効果のうち体重を中心に、研究でわかっていることを整理します。血圧やコレステロールなど、体重以外の効果は補足として触れる程度にします。
なお、北欧食と地中海式の体重への効果を直接比べた試験は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。また、地中海式の代表的な試験(PREDIMED試験)は、心臓や血管の病気を防ぐことが目的で、体重を減らすことは目的にしていませんでした。一方、この記事で中心に扱う北欧食の試験は、体重の変化を「健康がよくなったかどうか」の目安として調べています。目的が違う試験を並べて「どちらが痩せるか」を比べることはできないので、ご注意ください。
北欧食とは何か
「北欧食」には決まった定義が一つではない
地中海式ダイエットと同じく、北欧食にも世界で統一された一つの定義はありません。研究で使われてきた食事は、大きく2種類に分けられます。
① New Nordic Diet(NND)
デンマークの研究プロジェクト(OPUS)で作られた食事です[1]。「健康」「おいしさと北欧らしさ」「環境へのやさしさ」の3つを大切にしています。そのうえで、平均的なデンマークの食事と比べて、次の3つの方向に変えることを基本にしています。
- 植物性の食品を増やし、肉を減らす
- 海や湖でとれる食品を増やす
- 野生の食材(野草、きのこ、ベリーなど)を増やす
② 健康的北欧食(healthy Nordic diet)
北欧の栄養の基準をもとに組み立てた食事です。たとえば、後で紹介するSYSDIET試験では、次のような内容でした[5]。
- 全粒穀物をエネルギーの25%以上とり、その半分以上をライ麦・大麦・オーツ麦にする
- 果物・野菜・ベリーを1日500g以上(うちベリー150〜200g)
- 油は菜種油(キャノーラ油)を中心にする
- 魚を週3回以上(脂の多い魚2回、白身魚1回)
- 乳製品は低脂肪のものを選ぶ
共通する食品
定義は違っても、研究で使われた北欧食には共通する食品があります。欧州糖尿病学会(EASD)の依頼で行われた研究は、北欧食によく使われる食品を次のようにまとめています[2]。
- 全粒穀物(特にライ麦・オーツ麦・大麦)
- ベリー類
- りんご・洋梨などの果物
- 野菜(特に根菜と、キャベツなどのアブラナ科の野菜)
- 豆類
- 魚介類
- ナッツ
- 菜種油(主な油)
- 低脂肪の乳製品
北欧の人が今食べている食事とは別物
ここで注意したいのは、「北欧食」は、北欧の人たちが今ふだん食べている食事ではないという点です。
北欧の国々の栄養の基準として、北欧閣僚理事会が北欧・バルト諸国の行政機関向けに出している「北欧栄養勧告2023(NNR2023)」があります。NNR2023がすすめているのは、野菜・果物・ベリー・豆類・じゃがいも・全粒穀物を中心とした植物性の食品が多い食事で、魚とナッツも十分にとる内容です[7]。これは、研究で使われた北欧食とよく似ています。
一方で同じ報告書は、北欧の国々の今の平均的な食事について、野菜・果物・食物繊維が少なく、赤肉(牛・豚・羊などの肉)・加工肉・飽和脂肪酸(肉やバターなどに多い脂)が多いと指摘しています[7]。
つまり「北欧食」とは、北欧でなじみのある食材を使いながら、健康的な形に組み立て直した食事だと考えるとよいでしょう。
カロリー制限なしでも痩せた:SHOPUS試験
北欧食の体重への効果を調べた代表的な試験が、デンマークで行われた「SHOPUS試験」です[3]。この試験で使われたのは、①のNNDです。
どんな試験か
- 対象:お腹まわりが大きい大人181人(平均42歳、平均BMI 30.2)
- 方法:「NND」のグループと「ふだんのデンマーク食」のグループに、3対2の割合でくじ引きで分け、26週間(約6か月)続けてもらう
- 食事の条件:どちらのグループも、研究用のお店から食品を無料で、量の制限なく受け取れる(カロリー制限なし)
- サポート:どちらのグループにも、料理本、料理教室、栄養士との面談9回(食事の回数や量、満腹感などについてのアドバイス)
参加者には、この試験は「健康全般と料理についての研究」だと説明されていました。体重の変化は主に調べる項目でしたが、研究者は体重を「健康がよくなったかどうか」の目安と考えていました。また、痩せること自体を目的にした試験ではありません。
結果:ふだんの食事より約3kg多く減った
26週間後、NNDのグループは、ふだんのデンマーク食のグループよりも、体重が3.22kg多く減りました(グループの差)[3]。途中でやめた人も含めて計算し直しても、差は3.04kgとほぼ同じでした。
グループごとの体重の変化は、NNDが−4.7kg、ふだんのデンマーク食が−1.5kgです。
ここで注意したいのは、比べる側のグループも1.5kg減っている点です。研究者らは、どちらのグループも受けた栄養士のアドバイスの影響だろうと考えています。北欧食そのものの効果と考えられるのは、4.7kgではなく、2つのグループの差である約3kgです。
また、減った体重の中身を見ると、体脂肪の差は2.70kgでした。筋肉などの脂肪以外の部分は、NNDのグループではほとんど変わっていません。減ったのは主に脂肪だったといえます。
なぜカロリー制限なしで痩せたのか
参加者が3日間記録した食事の内容を見ると、NNDのグループは量の制限がなかったのに、ふだんのデンマーク食のグループより、1日あたり約420kcal少なく食べていました[3]。
NNDの食事は、同じ重さで比べるとカロリーが低く、食物繊維が多い内容でした。研究者らは、そのためにお腹がいっぱいになりやすかったのかもしれない、と考えています。ただし、これは考えられる理由の一つで、試験の中で直接確かめたわけではありません。
また、ふだんのデンマーク食のグループでは、記録上の食べた量の変化と、実際の体重の変化が合っていませんでした。研究者らは、食事の記録が実際より少なめに書かれていた可能性を挙げています。
この結果を読むときの注意点
この試験は、食品が無料でもらえて、栄養士のアドバイスも受けられるという、ふだんの生活とはかなり違う条件で行われました。研究者ら自身も、次のような理由から、長い期間、多くの人が続けるのは難しいかもしれないと述べています[3]。
- 初めて見るようなレシピが多い
- 一般のお店では手に入りにくい食材がある
- 料理に手間がかかる
- 費用がかかる
試験が終わった後:SHOPUS試験の追跡調査
では、食品の無料提供と栄養士のアドバイスがなくなった後は、どうなったのでしょうか。SHOPUS試験には、26週間の試験の後、さらに52週間(約1年)追いかけた続きの研究があります[4]。この追跡調査も、対象はNNDです。
続けにくくなり、体重は戻った
試験(食品の提供とアドバイス)が終わった後は、全員に「北欧食を続けてください」と伝えただけで、それ以上のアドバイスはありませんでした。
すると、元NNDグループの人たちが北欧食をどれだけ守れたか(5段階の自己評価)は、4.3から3.0に下がりました[4]。
体重を見てみます。追跡調査の参加者では、試験中の体重の変化が、元NNDグループで−6.2kg、元ふだんのデンマーク食グループで−3.0kgでした。これは追跡調査に参加した人たちの数字なので、前の章の数字とは対象が違います。
その後の追跡期間で、元NNDグループは4.6kg、元ふだんのデンマーク食グループは1.1kg体重が戻りました。元NNDグループのほうが1.8kg多くリバウンドしたことになります(グループの差)[4]。ただし、元NNDグループは試験中に減った体重も多かった点には注意が必要です。
なお、追跡期間中は、元ふだんのデンマーク食グループにも北欧食をすすめていました。そのため、この期間は、くじ引きで分けたグループどうしを比べたことにはなっていません。
続けられた人ほどリバウンドは少なかった
一方で、両方のグループをまとめて見ると、次のような結果が報告されています[4]。
- 北欧食をどれだけ守れたかの評価が1点高いごとに、リバウンドが0.90kg少なかった
- 体を動かす量を増やした人は、増やさなかった人よりリバウンドが3.4kg少なかった
ただし、これはくじ引きで分けて比べた結果ではなく、「そういう傾向が見られた」というものです。「うまくいっている人ほど食事を続けられて、体も動かせた」という、逆の関係の可能性もあります。
論文で原因が調べられたわけではありませんが、北欧食を守れなくなったのは本人の意志の弱さというより、食品の提供やアドバイスといった周りの支えがなくなったことが大きいと考えられます。
体を動かす量とリバウンドの関係については、米国スポーツ医学会(ACSM)の見解をまとめた記事で詳しく解説しています。
→ リバウンドを防ぐには?ACSM(米国スポーツ医学会)の一次資料から見る「体重維持」に必要な運動量
複数の研究をまとめると:メタ分析の結果
一つの試験だけでは、たまたまそういう結果になった可能性があります。そこで、複数の試験の結果をまとめて分析した研究(メタ分析)を見てみます。欧州糖尿病学会(EASD)が、栄養についての診療ガイドラインを見直すために依頼した研究です[2]。
この研究には、①②のほか、デンマークの国の食事ガイドラインに沿った食事なども含まれています。いろいろな北欧食をまとめた結果である点に、ご注意ください。
結果:比べた食事より約2kg多く減った
体重を調べた6つの試験(706人)をまとめると、北欧食は、比べた食事よりも体重が2.00kg多く減りました(グループの差)[2]。量の制限がない(カロリー制限のない)試験だけに絞っても、差は2.16kgでした。
研究者らは、この結果がどれくらい確かかを、GRADEという方法で評価し、「中程度」と判断しています。ただし、別の評価方法(NutriGrade)で評価し直すと、調べた項目の多く(14項目中13項目)で、確かさはもっと低く評価されました。
この結果を読むときの注意点
- 試験によって結果が大きく違う:試験ごとのばらつきを表す数値(I²)は88%と高く、効果の大きさは試験によってかなり違います
- 期間が短い:試験の期間は真ん中の値で24週、長いものでも48週です
- 対象が限られている:すべて北欧の国で、太り気味やメタボリックシンドロームなど、糖尿病になりやすい要因を持つ大人を対象にしています
- 研究が新しくない:この記事で紹介した2つの試験は2009〜2011年に行われたもので、このメタ分析が集めた研究も2021年3月までのものです
体重を変えない条件で試すと:SYSDIET試験
最後に、少し違うやり方の試験を紹介します。北欧の4か国6か所で行われた「SYSDIET試験」です[5]。この試験で使われたのは、②の健康的北欧食です。
どんな試験か
- 対象:メタボリックシンドロームの特徴を持つ大人(平均55歳、平均BMI 31.6)
- 方法:健康的北欧食のグループと、比べるグループに分け、18〜24週間続けてもらう
- 比べる食事:前半で触れた、今の平均的な北欧の食事
- 特徴:どちらのグループも、それぞれの人がふだん食べているカロリーと同じになるようにして、体重が変わらないようにした(体重が4kgを超えて変わった人は、結果の計算から除いた)
研究者らは、体重が同時に減ってしまうと、食事の中身そのものの効果がわかりにくくなるため、このやり方にしたと説明しています。
結果:主な目的の血糖は変わらず、コレステロールの一部が少しよくなった
ねらいどおり、体重はどちらのグループもほとんど変わりませんでした。この試験で一番知りたかった、インスリンの効き具合や血糖を処理する力には、グループの差がありませんでした[5]。
コレステロールでは、動脈硬化に関わる「non-HDLコレステロール」が、健康的北欧食のグループで0.18mmol/L(約7mg/dL)多く下がりました(グループの差)。ただし、年齢や体重などの影響を取り除かない単純な比べ方では、この差ははっきりした差とはいえませんでした。
LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)だけで見ると、差は0.15mmol/L(約6mg/dL)で、はっきりした差とはいえませんでした。
血圧にも差はありませんでした。研究者らは、その理由の一つとして、どちらのグループも塩分を減らせなかったことを挙げています。
なお、この試験はSHOPUS試験と、北欧食の定義も参加者も違います。「体重が減らなかったから血糖がよくならなかった」のように、2つの試験を結びつけて結論を出すことはできません。
専門機関はどう見ているか
カナダの成人肥満診療ガイドライン
カナダの成人肥満診療ガイドラインでは、肥満のある大人が選べる食事の一つとして、北欧食を挙げています[6]。ただし、体重を減らす効果の根拠として挙げられているのは、先ほど紹介したSHOPUS試験の1本だけです。
このガイドラインの基本的な考え方は、「すべての人に合う、たった一つの食事法はない」というものです。いちばんよい食事法は長く続けられるものであり、減った体重を長く保つことについて、最もすぐれているとわかった食事法はまだない、とも書かれています[6]。
北欧栄養勧告2023(NNR2023)
確認した範囲では、NNR2023は「北欧食」という特定の食事法を、名前を挙げてすすめているわけではありません。すすめているのは、野菜・果物・全粒穀物・魚・低脂肪の乳製品・豆類が多く、赤肉・加工肉・甘い飲み物・精製された穀物(白いパンなど)が少ない、健康的な食事全般です[7]。
体重については、NNR2023のために作られた資料が、特定の栄養素や食品のとり方を変えたときの体重の変化は、短い期間で0.3〜1.3kgほどと小さく、長い期間を調べた研究はほとんどない、とまとめています[7]。
日本の公的機関
厚生労働省や日本肥満学会が、北欧食について見解を示した資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。
まとめ
北欧食は、ふだんの食事などと比べて、体重が約2〜3kg多く減りました。ただし、これは条件つきの結果で、長い期間の効果はまだはっきりしていません。
- 複数の試験をまとめると約2kg、食品を無料で配った試験(SHOPUS試験)では約3kgでした(どちらも、比べた食事との差です)
- 今回調べた資料では、1年を超えてくじ引きで比べ、効果を確かめた研究はありませんでした
- 食品の提供やアドバイスがなくなると続けにくくなり、元NNDグループでは減った体重の多くが戻りました。大切なのは、続けられるかどうかです
- 体重を変えない条件では、コレステロールの一部が少しよくなりましたが、血糖はよくなりませんでした
日本の食生活に取り入れる場合
確認した範囲では、日本人を対象に北欧食を試した研究はありません。そのため、ここからは研究の結果ではなく、一つの提案としてお読みください。
北欧食をそのまま再現する必要はありません。研究で使われた食品のうち、全粒穀物(オートミール、大麦、ライ麦パンなど)、ベリー類、菜種油(キャノーラ油)、魚、豆類、根菜やキャベツなどは、日本でも比較的手に入りやすいものです。無理のない範囲で、ふだんの食事に少しずつ加えてみるのが現実的です。
北欧食は、効果が続くかどうかが、食事を続けられるかどうかにかかっている食習慣です。無理なく続けられる範囲で取り入れる、選択肢の一つとして考えるのがよいでしょう。
参考文献
- Mithril C, Dragsted LO, Meyer C, Blauert E, Holt MK, Astrup A. Guidelines for the New Nordic Diet. Public Health Nutr. 2012;15(10):1941-1947.:DOI
- Massara P, Zurbau A, Glenn AJ, et al. Nordic dietary patterns and cardiometabolic outcomes: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies and randomised controlled trials. Diabetologia. 2022;65(12):2011-2031.:DOI
- Poulsen SK, Due A, Jordy AB, et al. Health effect of the New Nordic Diet in adults with increased waist circumference: a 6-mo randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2014;99(1):35-45.:DOI
- Poulsen SK, Crone C, Astrup A, Larsen TM. Long-term adherence to the New Nordic Diet and the effects on body weight, anthropometry and blood pressure: a 12-month follow-up study. Eur J Nutr. 2015;54(1):67-76.:DOI
- Uusitupa M, Hermansen K, Savolainen MJ, et al. Effects of an isocaloric healthy Nordic diet on insulin sensitivity, lipid profile and inflammation markers in metabolic syndrome – a randomized study (SYSDIET). J Intern Med. 2013;274(1):52-66.:DOI
- Brown J, Clarke C, Johnson Stoklossa C, Sievenpiper J. Canadian Adult Obesity Clinical Practice Guidelines: Medical Nutrition Therapy in Obesity Management. Version 2, October 21, 2022.:Obesity Canada
- Blomhoff R, Andersen R, Arnesen EK, et al. Nordic Nutrition Recommendations 2023. Copenhagen: Nordic Council of Ministers; 2023.:DOI
内部リンク:地中海式ダイエットとは?研究でわかっている健康効果をわかりやすく解説/リバウンドを防ぐには?ACSM(米国スポーツ医学会)の一次資料から見る「体重維持」に必要な運動量

