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カーニボアダイエットは痩せるのか?動物性食品だけの食事を一次文献から検証する

カーニボアダイエットを考える少年
むー

肉や卵などの動物性食品だけを食べる「カーニボアダイエット」が、SNSで話題になっています。体重が減った、体調がよくなったという体験談もよく見かけます。

ただ、カーニボアには決まった定義がありません[1]。一般的には、肉・魚・卵・動物の脂を中心に食べ、野菜・果物・穀物・豆などの植物性の食品はほとんど、またはまったく食べません。乳製品を食べるかどうかは人によって違います。いちばん厳しいやり方では、赤肉と塩と水だけにします[1]。

炭水化物をほぼゼロにするので、「糖質を減らして脂質を多くとる食事」の一種とされています[1]。

似た食事法にパレオダイエットがあります。どちらも「人類の祖先の食事」を手本にしていますが、パレオダイエットは野菜や果物、ナッツも食べます。この点が大きな違いです。パレオダイエットについては、こちらの記事で検証しています。

→ パレオダイエットは効果ある?「原始人の食事」の理論と研究を一次資料から検証する

この記事の読み方

カーニボアそのものを調べた研究は、2025年11月の時点でわずか9件です。研究の質も低いと評価されています[1]。

人をくじ引きで2つのグループに分けて比べる研究(ランダム化比較試験)は、1つもありません。体重や病気への影響を長い期間調べた研究もありません[1]。

このほかに、カーニボアに近い食事を短い期間試した実験があります。1章と3章で紹介します。

この記事には、次のような研究が出てきます。

  • 調査研究:実践している人にアンケートで答えてもらう研究。体重や検査の値も本人の申告なので、正確とは限りません。
  • 症例報告:1人から数人の経過を報告したもの。その人に起きたことが、ほかの人にも当てはまるとは限りません。
  • 献立のモデル分析:実際に食べた人を調べるのではなく、考えた献立の栄養を計算したもの。
  • スコーピングレビュー:あるテーマの研究を広く集めて、全体像をまとめたもの。研究の質の評価や、効果の大きさの計算はしません。
  • 短期間の介入研究:研究者が用意した食事を食べてもらい、変化を比べる研究。
  • コホート研究:たくさんの人を長い期間追いかけて、食生活と病気の関係を調べる研究。

先に結論をお伝えします。 カーニボアで体重が減るかどうかは、比較の相手(対照群)をおいた研究では確かめられていません。また、いくつもの栄養素が基準に届きにくく、長く続けたときの安全性もわかっていません。

1章 体重は本当に減るのか

カーニボアが支持される理由

カーニボアを実践している人を調べた代表的な研究に、2020年にSNSで行われた調査があります[2]。6か月以上続けている大人2,029人が答えました。続けている期間は、真ん中の人(中央値)で14か月です。始めた理由は、93%の人が健康のためでした。

回答した人たちは、体の不調はほとんどなく、健康によい変化があって満足していると答えています[2]。

また、2026年に出たスコーピングレビューも、短い期間なら健康によい面はあり得るとしています[1]。

調査の結果と限界

この調査では、回答した人のBMI(肥満度の目安)が、始める前の27.2から24.3に下がっていました(いずれも中央値)[2]。

ただし、この数字には次のような限界があります。

  • 体重は、本人が申告したものです。
  • 答えたのは「今も続けている人」だけです。うまくいかずにやめた人は入っていません。
  • ほかの研究者は、この調査を批判する手紙を学術誌に出しています[3]。いちばんの問題として挙げたのは、血液検査の値まで本人の申告に頼っていることです。また、熱心な人は運動や睡眠にも気を配っている可能性があること、同じメールアドレスからの重複回答が28件あったことも指摘しています[3]。
  • 調査をした研究者の1人は、糖質制限をすすめる本の印税を受け取っていると公表しています[2]。

さらに、スコーピングレビューが集めた9件のうち、体重の変化を報告していたのは2件だけでした[1]。

実験でわかったこと

カーニボアに近い食事を実際に食べてもらった実験が、2014年に科学誌Natureに載っています[4]。

アメリカの若い大人に、動物性の食品が中心の食事と、植物性の食品が中心の食事を、5日間ずつ好きなだけ食べてもらいました。動物性の食事は、肉・卵・チーズが中心で、ベーコンやサラミなどの加工肉も含まれていました。

1日にとったカロリーは、2つの食事で差がありませんでした[4]。それでも、植物性の食事では体重がほとんど変わらなかったのに対し、動物性の食事では3日目までに体重がはっきり減りました[4]。

ただし、この実験の目的は腸内細菌を調べることでした。体重が減った理由は調べていません。また、研究のお金の一部は、食品メーカー(General Mills)が出していました[4]。

早く体重が減るのはなぜか

カーニボアで減った体重が、脂肪なのか水分なのかを測った研究はありません。ここからは、考えられることとして説明します。

英国栄養士会(BDA)は、はやりのダイエット(流行ダイエット、fad diet)全般について、最初に減る体重の多くは脂肪ではなく、筋肉と水分だと説明しています[5]。

また、スコーピングレビューは、カーニボアでみられた改善の一部は、体が脂肪からつくる「ケトン体」をエネルギーに使う状態(ケトーシス)によるものかもしれない、としています[1]。一方で、たんぱく質をたくさんとるとケトーシスになりにくいので、実践している人が本当にその状態だったかはわからない、とも述べています[1]。

ケトーシスで脂肪が早く減るのか、糖質を減らした直後に減る体重の中身は何かは、こちらの記事で検証しています。カーニボアも炭水化物をほとんど含まない食事なので、同じことが起こり得ます。

→ 「ケトーシスで脂肪が燃える」は本当か?ケトジェニックダイエットの効果を一次文献から検証する

1章のまとめ:実践している人の調査ではBMIが下がっていました。ただし本人の申告で、比べる相手もいません。カーニボアで体重や脂肪が減るかどうかは、対照群をおいた研究では確かめられていません。

2章 栄養は足りるのか

カーニボアの栄養を詳しく調べた研究に、考えた献立の栄養を計算した研究があります[6]。男性用と女性用に、それぞれ「乳製品あり」と「レバーあり」の献立を1日分ずつつくり、オーストラリアとニュージーランドの栄養の基準と比べました。

4つの献立はすべて、次の項目で基準を満たしませんでした[6]。

項目献立の値基準
食物繊維1g未満25〜30g
ビタミンB10.52〜0.92mg1.1〜1.2mg
ビタミンC1.21〜33.2mg45mg
飽和脂肪酸(肉の脂などに多い脂肪)全体のエネルギーの25.5〜31.7%10%未満

カルシウムとマグネシウムも、すべての献立で推奨量に届きませんでした。乳製品を入れた献立でも、カルシウムは推奨量(ほとんどの人が足りる量)の74〜84%でした[6]。

この研究をした人たちは、カーニボアに好意的です。重い炎症の病気がある一部の人には役に立つかもしれない、とも書いています[6]。そうした研究者が考えた献立でも、基準に届かない栄養素があったことになります。ただし、これは1日分の献立を計算したものです。実際に食べている人の栄養の状態を調べたものではありません。

オーストラリア栄養士会も、カーニボアはカルシウム・ビタミンC・食物繊維がとても少ないと指摘しています[7]。この計算の結果と同じです。

実際に続けている人を見ると、野菜・果物・穀物を月に1回より多く食べる人は10%未満でした。また、37%の人はビタミンのサプリメントを使っていませんでした[2]。

なお、肉に含まれる成分のおかげで、ビタミンCが少なくてもすむのではないか、という考え(仮説)もあります[6]。しかし、まだ確かめられていません。

2章のまとめ:カーニボアに好意的な研究者が考えた献立でも、食物繊維・ビタミンB1・ビタミンC・カルシウム・マグネシウムが基準に届かず、飽和脂肪酸は基準を大きく超えていました。

3章 腸内細菌はどう変わるか

1章で紹介した2014年の実験は、腸内細菌の変化を調べたものです[4]。

動物性の食事を始めると、食べたものが腸に届いて1日たつと、腸内細菌の顔ぶれが変わりました。脂の消化を助ける「胆汁」に強い菌が増え、植物の食物繊維などを分解する菌が減りました[4]。

一方で、1人ひとりのおなかの中にいる菌の種類の豊かさ(多様性)は変わりませんでした。また、食事をやめて2日たつと、元の状態に戻りました[4]。

長く続けたときの影響は、データがほとんどありません。長くカーニボアを続けている1人を、ふつうの食事の人と比べた症例研究では、腸内細菌の多様性や働きに違いはありませんでした[1]。

3章のまとめ:動物性の食品が中心の食事で、腸内細菌の顔ぶれは数日で変わりますが、やめれば元に戻ります。長く続けたときの影響はわかっていません。

4章 コレステロールとがんのリスク

LDLコレステロール

1章の調査では、血液検査の値を答えた人のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が172mg/dLと高めでした[2]。HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)は68mg/dL、中性脂肪は68mg/dLと、よい値でした[2]。

これも本人が申告した値です。それでも、カーニボアに好意的な人たちの集まりで、LDLが高かったことになります。

スコーピングレビューによると、この調査では、LDLが始める前の126mg/dLから172mg/dLに上がっていました[1]。また、ドイツの24人の調査研究でも、LDLが157mg/dLから256mg/dLに上がっていました[1]。

赤肉・加工肉とがん

1章の調査では、答えた人の85%が赤肉を毎日1回以上食べていました[2]。カーニボアでは、ふつう赤肉が食事の中心になります[1]。そこで、赤肉・加工肉とがんの関係を見てみます。なお、この調査でいう「赤肉」は、このあと紹介する専門機関の「赤肉」と、意味が完全には同じでない可能性があります。

世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、2015年に赤肉と加工肉を次のように分類しました[8]。

食品分類理由
加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)グループ1(人にがんを起こす)大腸がんとの関係について、人でのはっきりした証拠がある
赤肉(牛・豚・羊などの肉)グループ2A(おそらく人にがんを起こす)人での証拠は限られるが、がんを起こす仕組みについては強い証拠がある

この分類は、「がんを起こすという証拠がどれだけ確かか」を表すものです。「どれだけ危険か」を表すものではありません[8]。加工肉はタバコと同じグループですが、タバコと同じくらい危険という意味ではありません。

量との関係では、加工肉は1日に50g多く食べるごとに、大腸がんのリスクが約18%上がると見積もられています[8]。赤肉は、もし原因であることが確かめられれば、1日に100g多く食べるごとに17%上がる可能性がある、とされています[8]。

では、日本人ではどうでしょうか。国立がん研究センターは、次のように説明しています[9]。

  • ここでいう「赤肉」は、牛・豚・羊などの肉のことです。脂肪の少ない「赤身肉」とは意味が違います。
  • IARCが参考にした研究では、赤肉を食べる量はだいたい1日50〜100gでした。
  • 日本人が食べる量は平均で1日63g(赤肉50g、加工肉13g、2013年)で、世界でも少ないほうです。
  • 日本人の平均的な量なら、大腸がんへの影響はないか、あっても小さいと考えられます。
  • 一方で、欧米の人と同じくらい多く食べれば、リスクを上げる可能性は高いとしています。

肉が食事の中心になるカーニボアでは、研究で調べられた量よりも多く食べる可能性が高いと考えられます。調べられた量を超えたときにリスクがどうなるかは、わかっていません。そのため、「100gごとに17%」という数字をカーニボアで食べる量に当てはめて計算することはできません。

4章のまとめ:本人の申告ですが、カーニボアを続けている人はLDLコレステロールが高い傾向がありました。また、カーニボアでは赤肉を食べる量が、がんのリスクを調べた研究の範囲を超える可能性が高く、その量での安全性はわかっていません。

5章 専門機関はどう評価しているか

オーストラリア栄養士会(Dietitians Australia)は、流行ダイエットの例としてカーニボアを挙げています[7]。問題点として、次の3つを挙げています[7]。

  • 健康によいとわかっている果物・野菜・豆・穀物・ナッツ・種をすべて食べないこと
  • カルシウム・ビタミンC・食物繊維がとても少ないこと
  • がんと心臓病について、長い目で見た心配があること

ただし同会は、どの食事法を流行ダイエットとよぶかについて、専門家の意見が完全に一致しているわけではないことも認めています[7]。

英国栄養士会(BDA)も、食品のグループをまるごと食べない、避けるべき食事法の例としてカーニボアを挙げています[5]。

なお、厚生労働省やアメリカスポーツ医学会(ACSM)が、カーニボアについて公式な見解を出していることは確認できませんでした(2026年10月時点)。

まとめ

カーニボアについて、研究からわかっていることは次の3つです。

  1. 体重への効果は確かめられていない:実践している人の調査ではBMIが下がっていましたが、本人の申告で、比べる相手もいません。
  2. 栄養には不足がある:考えた献立でも、食物繊維・ビタミンB1・ビタミンC・カルシウム・マグネシウムが基準に届きませんでした。
  3. 長く続けたときの安全性はわかっていない:LDLコレステロールが上がったという報告があります。また、赤肉を食べる量が、がんのリスクを調べた研究の範囲を超える可能性が高いと考えられます。

なお、紹介したカーニボアの研究はすべて海外のものです。日本人を対象にした研究は確認できませんでした。

オーストラリア栄養士会は、糖尿病・心臓病・がんなどの持病がある人や、成長期の人が流行ダイエットに頼ることを心配しています[7]。カーニボアを試すなら、始める前に医師や管理栄養士に相談してください。

参考文献

  1. Lietz A, Dapprich J, Fischer T. Carnivore Diet: A Scoping Review of the Current Evidence, Potential Benefits and Risks. Nutrients. 2026;18(2):348.:DOI
  2. Lennerz BS, Mey JT, Henn OH, Ludwig DS. Behavioral Characteristics and Self-Reported Health Status among 2029 Adults Consuming a “Carnivore Diet”. Curr Dev Nutr. 2021;5(12):nzab133.:DOI
  3. Kirwan R, Mallett GS, Ellis L, Flanagan A. Limitations of Self-reported Health Status and Metabolic Markers among Adults Consuming a “Carnivore Diet”. Curr Dev Nutr. 2022;6(5):nzac037.:DOI
  4. David LA, Maurice CF, Carmody RN, et al. Diet rapidly and reproducibly alters the human gut microbiome. Nature. 2014;505(7484):559–563.:DOI
  5. British Dietetic Association. Fad Diets: Food Fact Sheet(2021年9月版、2026年10月1日閲覧).:BDA
  6. Goedeke S, Murphy T, Rush A, Zinn C. Assessing the Nutrient Composition of a Carnivore Diet: A Case Study Model. Nutrients. 2025;17(1):140.:DOI
  7. Dietitians Australia. Fad diets(2023年1月査読、2026年10月1日閲覧).:Dietitians Australia
  8. Bouvard V, Loomis D, Guyton KZ, et al. Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. Lancet Oncol. 2015;16(16):1599–1600.:DOI / IARC
  9. 国立がん研究センター. 赤肉・加工肉のがんリスクについて. 2015年10月29日.:国立がん研究センター

内部リンク:パレオダイエット / ケトジェニックダイエット

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むー
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歯科医師・ブロガー
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