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パレオダイエットは効果ある?「原始人の食事」の理論と研究を一次資料から検証する

パレオダイエット健康食インフォグラフィック
むー

はじめに

「原始人のような食事をすれば、健康になれる」。パレオダイエット(パレオ食)は、こうした考え方から生まれた食事法です。

パレオダイエットは、旧石器時代の人類の食事をまねた食事法です。赤身の肉、魚介類、卵、ナッツ・種子、果物、野菜、オリーブオイルなどを中心に食べ、穀物・豆類・乳製品・砂糖・食塩・加工食品などを避けます[1][4]。海外で人気が高まり、その人気は2014年にピークを迎えました[1]。

ただし、パレオダイエットには決まった一つの形があるわけではありません。当時どんな食べ物があったのか、地域によって食事がどう違ったのか、今の野菜や果物が当時の野生の植物とどれくらい違うのか。こうした点には、まだ議論があります。さらに、パレオダイエットを勧める人たちの間でも、「何を食べてよいか」の考えが分かれています。そのため、「これが本当のパレオ」と言える一つの形はない、と指摘されています[1]。

この記事では、パレオダイエットの考え方と、その効果を調べた研究を順番に見ていきます。

その前に、この記事によく出てくる2種類の研究について、簡単に説明しておきます。

  • RCT(ランダム化比較試験):参加者をくじ引きのようにグループ分けして、違う食事をしてもらい、結果を比べる試験です。「その食事が原因で結果が変わったのか」を確かめるのに向いています。
  • コホート研究:ふだんの食事を調べておき、その後に病気になるかどうかなどを長い期間追いかける研究です。食事と病気の「つながり(関連)」は見えますが、食事が原因だとまでは言えません。

先に結論をお伝えします。**パレオダイエットでは、短い期間での検査値の改善や、観察研究での好ましいつながりが報告されています。しかし、長く続けて病気が減ることを確かめたRCTはありません。**また、その良い点がパレオダイエットならではのもの、とも言えません。これが現時点での整理です。

1. パレオの理論:「体は旧石器時代のまま」という考え方

パレオダイエットの考え方の土台として、よく引用されるのが2005年の論評です[2]。論評とは、新しい実験データではなく、専門家が自分たちの考えをまとめた文章のことです。

この論評の主張は、次のようなものです。農業と牧畜が始まったのは約1万年前です。これは人類の長い進化の歴史から見るとごく最近のことで、人の遺伝子が新しい食事に合わせて変わるには、時間が短すぎた。さらに、農業が始まってから、そして産業革命のあとに広まった食べ物や加工のしかたによって、昔の人類の食事にあった7つの特徴が変わってしまった、というのです[2]。

その7つとは、次のとおりです[2]。

  1. グリセミック負荷(食べたあとの血糖値の上がりやすさ)
  2. 脂肪酸の組成(とっている油の種類)
  3. 主要栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)のバランス
  4. 微量栄養素(ビタミン・ミネラル)の量
  5. 酸塩基バランス(食べ物が体の中で酸とアルカリのどちらを多く生み出すか)
  6. ナトリウム(食塩に多い)とカリウム(野菜や果物に多い)の比率
  7. 食物繊維の量

著者たちは、昔のままの遺伝子と新しい食事との「ずれ」(進化的ミスマッチ)が、欧米で多い慢性の病気の多くの原因になっているかもしれない、と述べています[2]。

ただし、この論文はパレオダイエットを広めた研究者たちによる論評です。実際に人にパレオダイエットをしてもらい、効果を確かめた研究ではありません。あくまで「仮説」として読む必要があります。

2. 旧石器人は穀物を食べなかったのか?

パレオダイエットでは穀物を避けます。その背景には、「旧石器時代の人類は穀物を食べていなかった」という考え方があります。では、本当にそうだったのでしょうか。

まず知っておきたいのは、先ほどの論評を書いた研究者たちも、穀物の加工に使われる石臼などの道具が、後期旧石器時代(約4万〜1.2万年前)にはすでに現れていたことを認めている点です。そのうえで、狩猟採集をしていた人々が穀物を日常的に使い始めたのは、約1.3万年前のレバント地方(今の地中海の東側の沿岸)が最初で、それ以前の人類は穀物を食べた経験がほとんどなかった、と主張しています[2]。

この点で、面白い手がかりを与えてくれるのが歯石です。歯石は、歯の表面にたまった細菌のかたまり(プラーク)が、石のように固まったものです。固まるときに、食べたものの小さなかけらを中に閉じ込めます。歯科医院で取り除いている歯石は、いわば「食事の記録」でもあるのです。

2011年の研究では、イラクのシャニダール洞窟とベルギーのスパイ洞窟で見つかったネアンデルタール人の骨から、歯石を調べました。すると、ナツメヤシ、マメ類、イネ科の種子(コムギやオオムギの仲間)など、いろいろな植物のかけらが見つかりました[3]。ただし、この研究で調べたのはネアンデルタール人です。私たちホモ・サピエンスとは別の系統の人類なので、その点は注意が必要です。

Mayo Clinicによると、ほかにも次のような研究があります[4]。

  • 農業が始まるずっと前、約3万年前の遺跡から、穀物をすりつぶす道具が見つかっている
  • 旧石器時代の人類やネアンデルタール人の歯に残った、目に見えないほど小さな植物のかけら(微化石)を調べた研究から、野生の穀物を食べていたことがわかっている
  • 旧石器時代が終わったあとも、デンプンや乳糖(牛乳に含まれる糖)を消化することに関わる遺伝子の変化が続いていた

こうした研究から、「旧石器時代の人類は穀物をまったく食べなかった」という考えは、正確ではないと言えます。

3. 短い期間での効果:RCTをまとめた研究

では、実際にパレオダイエットを試した研究では、どんな結果が出ているのでしょうか。

2015年に発表された研究では、メタボリックシンドロームの項目(おなかまわり、中性脂肪、血圧、HDLコレステロール〈いわゆる善玉コレステロール〉、空腹時の血糖値)のうち、1つ以上に問題がある人を対象にしたRCT 4件、合計159人の結果をまとめて分析しました[5]。比べた相手は、それぞれの国の栄養のすすめに沿った食事です。

その結果、パレオダイエットのほうが、短い期間で次のような差が出ました[5]。

  • おなかまわり:2.38cm多く減った
  • 中性脂肪:0.40mmol/L多く下がった(日本の健康診断で使う単位にすると、約35mg/dL)
  • 体重:2.69kg多く減った(調べた期間は2〜26週)

一方で、血圧、HDLコレステロール、空腹時の血糖値には、はっきりした差は見られませんでした[5]。

2025年には、RCT 19件とコホート研究12件をまとめた、さらに大きな研究が発表されました[6]。このうちRCTをまとめた分析では、空腹時のインスリン(血糖値を下げるホルモン)、総コレステロール、BMI(身長と体重から計算する肥満度の目安)、拡張期血圧(いわゆる下の血圧)などが、パレオダイエットで改善していました。いずれも、偶然とは考えにくい差でした[6]。

ただし、ここで紹介した結果は、どれも検査の数値や体のサイズの改善です。パレオダイエットで病気や死亡が減ったことを示したものではありません。

4. 長く続けるとどうなるか

短い期間で差が出ても、その差が長く続くかどうかは、また別の問題です。

パレオダイエットのRCTで、長い期間にわたって調べた研究に、閉経後の肥満の女性70人を対象にした2年間の試験があります[7]。参加者は、パレオダイエットをするグループと、北欧の栄養のすすめに沿った食事をするグループに分けられました。どちらのグループも、食べる量に制限はありませんでした[7]。

結果は、次のとおりです[7]。

  • 体脂肪の減り方:6か月の時点ではパレオのグループのほうが大きかった(パレオ−6.5kg、比べたグループ−2.6kg)。しかし24か月の時点では、はっきりした差とは言えなかった(パレオ−4.6kg、比べたグループ−2.9kg)
  • 中性脂肪:6か月の時点でも24か月の時点でも、パレオのグループのほうが大きく下がっていた
  • 体脂肪は、どちらのグループでも減っていた

つまり、体脂肪の差は2年後にははっきりしなくなりましたが、中性脂肪の差は続いていました。「すべての差がなくなった」わけではありません。

長い期間の研究としては、コホート研究の結果もあります。先ほどの2025年の研究でコホート研究をまとめた分析では、ふだんの食事がパレオダイエットに近い人ほど、全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが相対的に10%低い、というつながりが見られました[6]。「相対的に10%低い」とは、たとえば、もともとの死亡リスクが10%だとすると、それが9%になるくらいの違いです。

ただし、これはパレオダイエットを実際にしている人を追いかけた研究ではありません。ふだんの食事がパレオダイエットにどれだけ近いかで、人々を比べた観察研究です。そのため、パレオダイエットが死亡を減らした、とまでは言えません。

5. その良い点はパレオならではのものか

4章で見たつながりは、パレオダイエットならではのものなのでしょうか。それとも、別の理由で説明できるのでしょうか。

手がかりになるのが、スペインの大学卒業者18,210人を平均12.2年追いかけたコホート研究です[8]。この研究では、ふだんの食事がどれだけパレオダイエットに近いかを点数にしました。点数は、パレオで勧められる食べ物(果物、ナッツ、野菜、卵、肉、魚)と、控えるように勧められる食べ物(穀物、乳製品、豆類、料理に使う調味料や油など、加工食品・超加工食品)を、どれくらい食べているかで計算しています[8]。

その結果、点数が高い人ほど、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡)になるリスクが低い、というつながりが見られました[8]。ところが、点数から「超加工食品が少ない」という項目を外すと、このつながりは弱くなり、偶然の範囲を超える差とは言えなくなりました。[8]さらに、つながりが見られたのは、主に地中海食もよく守っている人たちでした[8]。研究者たちは、超加工食品を避けることが、このつながりで大事な役割を果たしているようだ、としています[8]。

超加工食品と体重の関係については、超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論までで詳しく解説しています。

ほかの食事法と比べた評価もあります。2020年に発表された研究では、人気のある11の食事法について、RCTをまとめた研究をさらに集めて、証拠がどれくらい確かなのかを評価しました(2019年4月までに発表された研究が対象)[9]。その結果、多くの食事法で証拠は全体的に弱く、パレオダイエットの証拠も「弱い」とされました。[9]その中で、体重などの体のサイズと、血圧・コレステロール・血糖など心臓や血管の病気に関わる数値の両方について、最も確かで一貫した証拠があったのは地中海食でした[9]。なお、3章と4章で紹介した2025年の研究[6]は、この評価の対象期間よりあとに発表されたものです。

地中海式ダイエットの健康効果については、地中海式ダイエットとは?研究でわかっている健康効果をわかりやすく解説で紹介しています。

6. 専門機関の評価と注意点

最後に、専門機関の評価と、パレオダイエットを考えるうえでの注意点を見ておきましょう。

ハーバード公衆衛生大学院は、パレオダイエットの健康効果を示すには、1年より長く追いかけて、ほかの減量の食事と比べた質の高いRCTが、もっと必要だとしています。そのうえで、今のところ、やせる目的でパレオダイエットを強くおすすめすることはできない、と結論づけています。[1]また、穀物や乳製品をまるごと抜くと、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB群などが足りなくなるリスクが高まるかもしれない、としています[1]。1年より長く続けた場合に、骨粗しょう症の人やそのリスクが高い人などにとって、よくない栄養不足が起こるかどうかは、まだわかっていません[1]。

Mayo Clinicによると、パレオダイエットの良い点とリスクを調べた、長い期間の大規模な研究はありません。十分な運動とバランスのよい食事でも、同じような健康効果が得られるかもしれない、としています。[4]

続けやすさについても、いくつかの指摘があります。

  • ハーバード公衆衛生大学院:ルールが多いので、長く続けるのが難しいかもしれない。新鮮な食材が中心なので、献立を考えるのに時間がかかり、お金もかかりやすい[1]
  • Mayo Clinicによると、全粒穀物・豆類・乳製品は、野生の動物の肉や牧草で育った牛の肉、ナッツよりも安く、手に入りやすい。人によっては費用が負担になり、そのせいで、知らないうちに必要な栄養が足りなくなることもありうる[4]
  • 4章で紹介した2年間の試験でも、パレオのグループは、指示されたタンパク質の量を守れていなかった[7]

なお、持病がある方や治療中の方が食事を大きく変えるときは、前もって医師に相談してください。

まとめ

パレオダイエットについて、今の時点で言えることと言えないことを整理します。

言えること

  • 短い期間のRCTでは、おなかまわりや中性脂肪、体重・体脂肪などの改善が見られている[5][6][7]
  • 観察研究では、パレオダイエットに近い食事をしている人ほど、死亡や心血管疾患のリスクが低い、というつながりがある[6][8]

言えないこと

  • 長く続けて病気や死亡が減ること(それを確かめたRCTはない)[1][4]
  • その良い点が、パレオダイエットならではのものであること[8][9]

パレオダイエットを取り入れるなら、研究で良い点とのつながりが見えているのは、超加工食品を減らす部分[8]と、Mayo Clinicがすすめている、野菜や果物をたくさん食べる部分です。[4]**穀物や乳製品をまるごと避けることに良い点があるとは、今回の資料からは示されていません。**むしろ、栄養が足りなくなるリスクが指摘されています[1]。

なお、この記事で紹介した研究は、どれも欧米などで行われたもので、日本人を対象にした研究は含まれていません。

参考文献

  1. Harvard T.H. Chan School of Public Health. Diet Review: Paleo Diet for Weight Loss. The Nutrition Source(2018年7月24日公開、2025年9月5日更新):The Nutrition Source
  2. Cordain L, Eaton SB, Sebastian A, Mann N, Lindeberg S, Watkins BA, O’Keefe JH, Brand-Miller J. Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century. Am J Clin Nutr. 2005;81(2):341-354.:DOI
  3. Henry AG, Brooks AS, Piperno DR. Microfossils in calculus demonstrate consumption of plants and cooked foods in Neanderthal diets (Shanidar III, Iraq; Spy I and II, Belgium). Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(2):486-491.:DOI
  4. Mayo Clinic Staff. Paleo diet: What is it and why is it so popular?(2024年6月21日):Mayo Clinic
  5. Manheimer EW, van Zuuren EJ, Fedorowicz Z, Pijl H. Paleolithic nutrition for metabolic syndrome: systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2015;102(4):922-932.:DOI
  6. Bahrami M, et al. The Paleolithic diet and chronic disease risk: a GRADE-assessed systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies and randomized controlled trials. Crit Rev Food Sci Nutr. 2026;66(11):2247-2262.(2025年オンライン公開、抄録を参照):PubMed
  7. Mellberg C, Sandberg S, Ryberg M, et al. Long-term effects of a Palaeolithic-type diet in obese postmenopausal women: a 2-year randomized trial. Eur J Clin Nutr. 2014;68(3):350-357.:DOI
  8. de la O V, Zazpe I, Goni L, et al. A score appraising Paleolithic diet and the risk of cardiovascular disease in a Mediterranean prospective cohort. Eur J Nutr. 2022;61(2):957-971.:DOI
  9. Dinu M, Pagliai G, Angelino D, et al. Effects of Popular Diets on Anthropometric and Cardiometabolic Parameters: An Umbrella Review of Meta-Analyses of Randomized Controlled Trials. Adv Nutr. 2020;11(4):815-833.:DOI

内部リンク:超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論まで、地中海式ダイエットとは?研究でわかっている健康効果をわかりやすく解説

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