ジュースクレンズでデトックスできる?「デトックス」の中身と体で起きていることを一次資料から検証する
「数日間ジュースだけで過ごして、体にたまった毒素を出す」——ジュースクレンズは、そんなうたい文句で紹介されることが多い健康法です。「すっきりした」「体が軽くなった」という体験談もよく目にします。
ジュースクレンズは、米国国立衛生研究所(NIH)の補完統合衛生センター(NCCIH)でも、「デトックス」と呼ばれる方法の一つとして挙げられています。断食や、特定の食品だけを食べる方法などと並ぶものです。つまり、ジュースなどの飲み物だけで一定期間を過ごす方法のことです。
この記事では、次の2つの問いを一次資料から確かめていきます。
- そもそも「デトックス」とは、何を指しているのか
- ジュースクレンズをしたとき、実際に体では何が起きているのか
この記事の読み方:紹介する資料は、次の5つに分けて示します。
- 研究:専門家のチェック(査読)を経て発表されたもの
- 公的機関の資料:国の機関が出しているもの
- 専門団体の資料:栄養士などの職能団体が出しているもの
- 調査報告:科学者団体がまとめたもの
- 大学の発表:研究について大学が出したもの
研究や専門団体の見解の多くは、海外(米国・英国・オーストラリア)のものです。資料の年代にも、2009年から2025年まで幅があります。それぞれ、いつ・どこで出されたものかを添えて紹介します。
「デトックス」には決まった定義がない
英国の科学者団体Sense About Scienceは、「デトックス」という言葉について、薬物依存や中毒の治療以外では意味を持たない、という立場をとっています。
この団体の若手研究者たちは、2009年にある調査を行いました(Sense About Science 2009/調査報告)。店頭で「デトックス」をうたって売られていた15製品のメーカーに問い合わせ、次の2つを尋ねたのです。
- 「デトックス」とは何を意味するのか
- その根拠は何か
返ってきた答えは、メーカーごとにばらばらでした。
- 洗顔料のメーカー:皮脂や汚れを落とすこと
- ボディブラシのメーカー:古い角質を落とすこと
- スムージーのメーカー:抗酸化物質で、体に害を与えるとされる「フリーラジカル」を除くこと
調査チームによれば、問い合わせた相手の誰も、根拠を示せませんでした。「デトックス」の意味をきちんと説明できたところもありませんでした。
研究者の側からも、同じ問題が指摘されています。オーストラリア・マッコーリー大学のKiat教授は、デトックスダイエットの研究をまとめて評価した人物です。教授によると、市販のデトックスダイエットは、取り除くとうたう「毒素」が何なのかも、それをどうやって出すのかも、ほとんど示していません。そのため、主張が正しいかどうかを確かめること自体が難しかったといいます(マッコーリー大学プレスリリース 2015/大学の発表)。
そもそも私たちの体には、いらないものを処理する仕組みがもともと備わっています。英国栄養士会(BDA)によると、重い病気がある場合を除き、体は皮膚・腸・肝臓・腎臓などで、アルコールや薬、消化のときにできる物質などを常に処理し、外に出しています(BDA/専門団体の資料)。
「何を」「どうやって」出すのかが示されていない以上、「デトックスできるかどうか」は、そもそも確かめようがありません。これが、この記事の出発点です。
デトックスやジュースクレンズを調べた研究はわずか
では、研究ではどこまで分かっているのでしょうか。
NCCIHによると、ヒトを対象にしたデトックスの研究は、数が少ないのが現状です。体重や体脂肪、血圧などに良い結果を示した研究もありますが、研究そのものの質は低いとされています。たとえば、研究の設計に問題がある、参加者が少ない、専門家のチェックを受けていない、といった点です(NCCIH/公的機関の資料)。
先ほど紹介したKiat教授らが2015年に発表したレビュー(研究をまとめて評価した論文)も、デトックスダイエットの効果を支持する根拠は非常に乏しいと結論しています(Klein & Kiat 2015/研究)。著者らが知る限り、発表の時点(2014年)で、市販のデトックスダイエットの効果をヒトで確かめたランダム化比較試験(参加者をくじ引きのように分けて比べる、信頼性の高い研究方法)は、一つも行われていませんでした。
ジュースだけで3日間過ごした研究
ジュースクレンズそのものを調べた代表的な研究として、米国UCLAのHenningらの研究があります(Henning 2017/研究)。
- 対象:健康な大人20人(普段、果物や野菜をあまり食べない人)
- 方法:市販の野菜・果物ジュース(1日6本、合計約1,300kcal)だけで3日間過ごし、その後2週間は普段の食事に戻す
- 結果:
- 3日間で、体重は平均1.7kg減りました
- 2週間後、腸内細菌の構成などの変化は、元に戻る方向でした
- 体重は、始める前より0.91kg低い状態でした。減った分の約半分が戻ったことになります
- 研究の最後(17日目)には、気分の良さを示すスコアが上がっていました(ジュース期間の直後には変化なし)
一方で、この研究では「毒素」にあたるものは何も測定されていません。
ほかにも、注意しておきたい点があります。
- 比べる相手(対照群)のない研究です。研究登録の段階から、1つのグループだけを調べる研究として計画されていました
- 参加者は、普段あまり果物や野菜を食べない人たちでした
- 使われたジュースには、1日28gの食物繊維が含まれていました
そのため、市販のジュースクレンズすべてに同じ結果が当てはまるとは限りません。
まとめると、ジュースクレンズを直接調べた研究は少なく、代表的なものでも参加者20人・比較対象なしの小さな研究にとどまっているのが現状です。
体重が減るのはなぜか
ジュースクレンズで体重が減るのは事実です。では、その理由は何でしょうか。
消費者庁は、健康食品の広告についての指針の中で、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回らない限り人は痩せないという基本的な考え方を示しています(消費者庁/公的機関の資料)。
NCCIHが紹介している2017年のレビューも、ジュースを中心にした食事法やデトックスダイエットで最初に体重が減るのは、摂取カロリーが少ないためだとしています(NCCIH)。体重が減るのは、まずはこのカロリー制限によるものと考えるのが自然です。
また英国栄養士会は、断食や極端な食事制限で急に減る体重の多くは、水分とグリコーゲン(体にたくわえられた糖質)で、脂肪ではないと説明しています(BDA)。グリコーゲンが水分を抱え込む仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 体重が毎日変動する理由とは?水分・グリコーゲンの影響を研究データで解説
そして、減った体重は戻りやすいことも分かっています。先ほどのレビューは、普段の食事に戻ると体重は増える傾向があるとも指摘しています(NCCIH)。英国栄養士会も、プログラムを終えて元の食生活に戻れば、減った体重は戻りやすいとしています(BDA)。
「すっきりした」「調子が良くなった」という実感はどうでしょうか。英国栄養士会は、その理由として次のようなものを挙げています(BDA)。
- たばこを吸わない
- お酒を控える
- 十分に眠る
- 外の空気を吸い、体を動かす
デトックス用の商品よりも、こうした生活の変化が理由である可能性が高いということです。ただし英国栄養士会は、デトックスダイエットが、果物や野菜を多く食べるといった良い習慣のきっかけになりうる点にも触れています。
ジュースは果物と同じではない
「果物や野菜のジュースなのだから、体に良いはず」と感じる人も多いと思います。ここで押さえておきたいのが、世界保健機関(WHO)の考え方です。
WHOは、果汁に含まれる糖を、砂糖などと同じ「遊離糖類」(砂糖のように食品に加えられる糖や、はちみつ・果汁などに含まれる糖)に分類しています。そして、大人も子どもも、遊離糖類を1日の総エネルギー摂取量の10%未満に抑えるよう推奨しています(WHO 2015/公的機関の資料)。
一方で、丸ごとの生の果物や野菜に含まれる糖は、遊離糖類には含まれません。これらの糖が健康に悪い影響を与えるという証拠が、報告されていないためです。
英国栄養士会も、果汁やスムージーは、遊離糖類をとりすぎないよう1日150mLまでにするよう勧めています(BDA)。これは英国の目安で、日本に同じ公的な数値はありません。
果物と体重の関係を扱った別の記事で紹介した研究では、少量の100%果汁は、体重を増やす方向には働いていませんでした。ただ、ジュースクレンズはジュースなどの飲み物だけで過ごす方法です。少量の果汁を飲むこととは、量がまったく違います。果物とジュースで体への影響が変わる理由や、量による違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 果物は太るのか?『甘い=太る』という直感と科学的根拠のギャップを一次文献から解説
歯科医師として
WHOの「10%未満」という数値は、糖のとり方とむし歯の関係を調べた研究を根拠にしています。数日間のクレンズでむし歯になる、とまでは言えません。ただ、ジュースを毎日の習慣として飲み続けるなら、歯の健康の面からも注意が必要だと考えています。
注意が必要な人
ジュースクレンズには、人によってリスクもあります。
NCCIHは、次のような点に注意を呼びかけています(NCCIH)。
- 加熱殺菌などをしていないジュースは、食中毒の原因になることがある。子ども、高齢者、免疫が弱っている人では重症になることがある
- 糖尿病の人は、食生活を大きく変える前に、医療者に相談する
- 腎臓に結石ができやすい人は、葉物野菜やビーツなど、シュウ酸(一部の野菜に多く含まれる成分)の多い食品を控える
シュウ酸と腎臓については、米国のMayo Clinicからの報告があります(Getting 2013/研究)。シュウ酸の多い野菜・果物のジュースを大量に飲んでいた人の腎臓に、シュウ酸の結晶がたまり、急性腎不全(腎臓の働きが急に落ちる状態)になった例です。
この病院では、腎臓にシュウ酸の結晶が見つかった腎不全の患者65人も調べています。そのうち、食事が原因と考えられたのは、この患者を含めて3人でした。3人とも、もともと慢性腎臓病がありました。著者らは、シュウ酸の多い食事は、慢性腎臓病の人で急性腎不全を引き起こしうると結論しています。
最初に紹介した英国栄養士会の説明にも、「重い病気がある場合を除き」という前置きがありました。腎臓の病気がある人は、特に注意が必要です。
NCCIHは、デトックスやクレンズを行う場合は、事前に医療者と相談するよう勧めています。
「デトックス」をうたう広告の読み方
最後に、日本の広告のルールも見ておきましょう。
消費者庁は、健康食品の広告についての指針の中で、「デトックス○○」「カラダにたまった余分なものをスッキリ」といった表現を、健康効果をほのめかす表示の例として挙げています(消費者庁)。ただし、特定の言葉を一律に禁止しているわけではありません。問題になるかどうかは、広告全体を見て判断されます。
実際に、国から改善を命じられた(措置命令を受けた)例もあります。ある事業者は、「1日1杯」の「激痩せジュース」を飲むだけで痩せられるとし、「腸内環境を徹底的に洗浄」とうたっていました。消費者庁が根拠となる資料を出すよう求めたところ、期間内に提出がなく、措置命令が出されました(消費者庁、平成31年3月28日の事例)。
この商品は、ジュースだけで過ごすクレンズとは別のものです。ただ、「洗浄」をうたう広告に根拠が示されなかった例として参考になります。
まとめ
- 「デトックス」には決まった定義がありません。何を出すのかが示されていないため、「デトックスできるか」自体を確かめられません。ジュースクレンズを調べた研究でも、毒素は測定されていません
- 起きているのは、主にカロリー制限による体重減少です。元の食事に戻ると、体重は戻りやすいことが分かっています。長い目で見た影響を調べた研究はなく、腎臓の病気がある人などにはリスクもあります
- 「デトックス」「洗浄」といった言葉だけで、効果を判断しないようにしましょう
英国栄養士会は、デトックスダイエットの代わりに、次のことを勧めています。
- バランスのよい食事
- 水や、糖を含まない飲み物での水分補給
- 毎日体を動かすこと
重い病気がなければ、特別なジュースに頼らなくても、私たちの体はもともと、自分でいらないものを処理する力を持っています。
参考文献
- National Center for Complementary and Integrative Health. “Detoxes” and “Cleanses”: What You Need To Know. Last updated March 2025.:Web
- Sense About Science, Voice of Young Science. The Detox Dossier. 2009.:PDF/紹介ページ
- Macquarie University. Literature review finds no evidence to support detox diets for weight loss or detoxification. Press release, 6 February 2015.:Web
- British Dietetic Association. Detox Diets. Food Fact Sheet. August 2025.:Web
- Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. J Hum Nutr Diet. 2015;28(6):675-686.:DOI
- Henning SM, Yang J, Shao P, et al. Health benefit of vegetable/fruit juice-based diet: Role of microbiome. Sci Rep. 2017;7:2167.:DOI/臨床試験登録
- 消費者庁. 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(令和4年12月5日一部改定).:PDF
- World Health Organization. Guideline: Sugars intake for adults and children. Geneva: WHO; 2015.:PDF
- Getting JE, Gregoire JR, Phul A, Kasten MJ. Oxalate nephropathy due to ‘juicing’: case report and review. Am J Med. 2013;126(9):768-772.:DOI
内部リンク:体重が毎日変動する理由とは?水分・グリコーゲンの影響を研究データで解説/果物は太るのか?『甘い=太る』という直感と科学的根拠のギャップを一次文献から解説

