「ケトーシスで脂肪が燃える」は本当か?ケトジェニックダイエットの効果を一次文献から検証する
先に結論からお伝えすると、ケト食で燃える脂肪は増えますが、体の脂肪が早く減るわけではありません。長く続けたときの減量効果も、他の食事法と比べて大きな差はありませんでした。一方で、中性脂肪やHDLの改善など確かめられている利点もあり、空腹感がいくらか和らぐ可能性もあります。
この記事では、その根拠となる研究と、国や学会の見解を順番に見ていきます。
ケトジェニックダイエットとは
ケトジェニックダイエット(以下、ケト食)は、炭水化物を大きく減らし、その分を脂質中心の食事に切り替える食事法です。
では、どのくらい減らせば「ケト食」なのでしょうか。長期的な減量効果を調べた研究のまとめ(メタ分析)では、「炭水化物を1日50g以下、またはエネルギーの10%以下に抑える食事」と決めています(Bueno et al., 2013, Br J Nutr)。この記事でも、この決め方を基本にします。
なお、この記事では研究の書き方に合わせて「炭水化物」と書きます。炭水化物から食物繊維を除いた部分が、いわゆる「糖質」です。
ただし、ケト食の決め方は研究によって少しずつ違います。たとえば後で紹介するHall氏らの2021年の研究では、グラム数ではなく「エネルギーの10%」でケト食を決めています(Hall et al., 2021, Nat Med)。
ケトーシスとは
炭水化物を大きく減らすと、体は脂肪を分解してつくる「ケトン体」を、エネルギー源として使うようになります。この状態を「ケトーシス」と呼びます。
脳などの組織は、ふだんは主にブドウ糖をエネルギー源にしています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、こうした組織に必要なブドウ糖の量から、糖質の最低必要量をおよそ1日100gと見積もっています。
ただし、肝臓には、筋肉や脂肪から出てくる物質を材料にしてブドウ糖をつくる働き(糖新生)があります。そのため、この100gは「これ以下では絶対に足りない」という意味ではない、とされています。
また、ケトーシスとよく似た言葉に「ケトアシドーシス」があります。こちらは治療が必要な病気の状態で、ケトーシスとは別物です。違いは4章で詳しく説明します。
この記事で扱う範囲
糖質制限全体の効果の移り変わりや、減らした炭水化物を何で補えばよいかについては、以前の記事で詳しく取り上げました。
→ 糖質制限ダイエットは本当に痩せるのか?最新エビデンスで見る有効性と落とし穴
この記事では範囲を絞って、「ケトーシスそのものに、カロリーを減らす以上の効果があるのか」を確かめていきます。
1. 同じカロリーなら、ケト食のほうが脂肪は減るのか
よく言われること
ケト食については、「ケトーシスになると脂肪が燃えやすくなり、体の脂肪が早く減る」とよく言われます。研究者の間では、この考え方は炭水化物・インスリン仮説と呼ばれています。
この仮説どおりなら、炭水化物を同じカロリー分の脂質に置き換えるだけで、使うエネルギーと燃える脂肪が増え、体の脂肪が減るはずです。これを、条件をしっかりそろえて確かめた研究があります。
食事を完全に管理した入院実験
Hall氏らは、太り気味〜肥満の男性17人に、代謝病棟(食事を完全に管理できる研究用の入院施設)に入院してもらいました。参加者は外の食べ物を一切口にできない環境で、次の順番で食事をとりました(Hall et al., 2016, Am J Clin Nutr)。
- 最初の4週間:炭水化物の多い食事
- 次の4週間:たんぱく質の量とカロリーはそのままに、炭水化物をエネルギーの約5%まで減らしたケト食
脂肪を燃やす量は増えた
ケト食に切り替えると、呼吸のガスから計算する指標(呼吸商)がすぐに下がり、研究の終わりまで低いままでした。これは、体が燃やす脂肪の量が増えたことを表しています。
ただし、この変化の大きさは、食事に含まれる栄養素の割合の変化とほぼ同じでした。つまり、「食べる脂肪が増えた分だけ、燃やす脂肪も増えた」と考えられます。
使うエネルギーは、ほんの少ししか増えなかった
1日に使うエネルギーは、数十〜150kcal程度増えました。ただし著者は、最新の機器でも見分けられるかどうかの、ごく小さな増え方だったと結論しています(※注1)。
体の脂肪が減るペースは速くならなかった
体脂肪の減り方は、ケト食に切り替えてからの2週間はむしろゆっくりになり、その後の2週間は、炭水化物の多い食事のときと同じペースに戻りました。どちらにしても、脂肪の減り方が速くなることはありませんでした。
切り替えてすぐ落ちた体重は、主に水分
ケト食に切り替えてから15日間で、体重は1.6kg減りました。ところが、そのうち体脂肪は0.2kgだけで、著者は主に体の水分が抜けたためと考えています。体の中の糖(グリコーゲン)が水分を抱え込む仕組みや、日々の体重の変動の読み解き方は、こちらの記事で解説しています。
この研究の弱点
著者自身が、次の点を弱点として挙げています。
- ケト食をとらない比較用のグループ(対照群)がなく、食事の順番を逆にしたグループもないため、ケト食そのものが原因だとは言い切れない
- 参加者は太り気味〜肥満の男性だけなので、女性や他の体型の人に当てはまるとは限らない
- 研究のあいだ、参加者は意図せず体重が減り続けていた(1日約300kcalのエネルギー不足の状態)
なお、この研究は、NuSI(Nutrition Sciences Initiative)という団体が研究チームを集め、資金の一部も出しています。論文の最終的な内容は研究者側が決めたことも、論文に書かれています。
国の整理も同じ方向
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」も、ケト食に限らず炭水化物を減らす食事全般について、同じ方向の整理をしています。
同じカロリーであれば、炭水化物を減らした食事の減量効果は、脂質やたんぱく質を減らした食事とはっきりした差がない(有意に異ならない)とする研究のまとめが多い、というものです。炭水化物を減らして全体のカロリーが減れば、減量は期待できます。しかし、減らした分を脂質やたんぱく質で補って全体のカロリーが変わらなければ、減量は期待できない、とされています。
1章のまとめ
ケトーシスで脂肪が燃える量は増えます。しかし、体の脂肪が早く減るわけではありませんでした。
※注1:代謝室(呼吸のガスから使ったエネルギーを測る部屋)での測定では1日57kcal、補助的に行われた別の測定方法(二重標識水法)では1日151kcalの増加でした。
2. ケト食にすると食欲は抑えられるのか
よく言われること
ケト食については、「食欲が落ちるので、自然と食べる量が減る」ともよく言われます。この話は、次の2つの問いに分けると整理しやすくなります。
- 問い①:ケト食を始める前と比べて、食欲は下がるのか
- 問い②:他の食事法と比べて、ケト食のほうが食欲を抑えられるのか
問い①:始める前と比べると、少し下がる
ケト食を始める前と、実践している最中の食欲を比べた研究をまとめたメタ分析があります。それによると、ケト食をしている人は、空腹感や「食べたい」という気持ちが下がっていました(Gibson et al., 2015, Obes Rev)。ただし、下がり方は小さなものでした。
著者は、この結果の意味を「減量中でも食欲が強まりにくいこと」だと整理しています。ふつうはカロリーを減らすと食欲が強まりやすいので、それを防げる点に意味がある、という見方です。
実際に食べた量で見た研究もあります。肥満と2型糖尿病のある患者を対象に、病院の中で2週間行われた研究です。炭水化物を大きく減らした食事に切り替えると、カロリーを減らすよう指示しなくても、1日に食べる量が平均3,111kcalから2,164kcalに減りました(Boden et al., 2005, Ann Intern Med)。
Gibson氏らが見たのは「空腹の感じ方」、Boden氏らが見たのは「実際に食べた量」と、測っているものは違いますが、同じ方向の結果です。ただし、期間が短いこと、人数が少ないこと、しっかりした比較用のグループがないことは、著者自身が弱点として挙げています。この研究は、以前の糖質制限の記事でも紹介しました。
→ 糖質制限ダイエットは本当に痩せるのか?最新エビデンスで見る有効性と落とし穴
問い②:他の食事法と比べると、まだ結論が出ていない
他の食事法と直接比べた研究に、Hall氏らの2021年の研究があります。Hall氏らは、超加工食品が食べ過ぎにつながることを入院実験で示したことでも知られるグループです。
→ 超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論まで
この研究では、20人の大人が米国国立衛生研究所(NIH)の臨床センターに入院し、次の2つの食事を2週間ずつ、好きなだけ食べました(Hall et al., 2021, Nat Med)。
- 植物性の食品が中心の低脂肪食(脂質約10%、炭水化物約75%)
- 動物性の食品が中心のケト食(脂質約76%、炭水化物約10%)
参加者の血液中のケトン体は、毎日測られていました。結果は、低脂肪食の期間のほうが、1日550〜700kcal少なく食べていました。体重の減り方は同じくらいで、空腹感や食事の満足度にもはっきりした差はありませんでした。「ケト食のほうが食欲が抑えられる」という予想とは、逆の結果です。
ただし、この研究には気をつけたい点があります。
- 比べた2つの食事は、炭水化物の量だけでなく「植物性か動物性か」も違うため、差がケトーシスのせいだとは言い切れない
- ケト食の期間中に、低血糖のため1人が途中で参加をやめた
- 研究チーム自身の後の分析で、食べる順番が結果に影響していたことが報告された。これを受けて、別の研究者から「この実験のやり方で正しい結論が出せるのか」という異議が出ている(下の補足を参照)
米国脂質学会(NLA)の2019年の声明も、ケト食を含む炭水化物を減らす食事について、「食欲の面で利点がありうる」という控えめな表現にとどめています(Kirkpatrick et al., 2019, J Clin Lipidol)。
2章のまとめ
ケト食を始めれば、空腹感はいくらか和らぐ可能性があります。ただし、他の食事法より食欲を抑えられるかどうかは、今のところ言い切れません。
【補足】Hall 2021をめぐる議論
Hall 2021は、2週間ずつ、間を空けずに食事を切り替える実験でした。研究チーム自身が2024年に行った追加の分析で、食べる順番(ケト食が先か、低脂肪食が先か)が、摂取と消費のエネルギーの差(エネルギー収支)にはっきりと影響していたことが報告されました(Sciarrillo et al., 2024, Am J Clin Nutr)。
これを受けて、短い期間で食事を切り替える実験のやり方に疑問を示す異議が出されました(Ludwig et al., 2025, Nat Med)。研究チーム側も返答を出しており、議論は今も続いています(Hall, 2025, Nat Med)。
なお、異議を出した研究者の代表は炭水化物・インスリン仮説を唱えてきた人物で、共同の執筆者にはハーバード大学の栄養学の研究者も含まれています。一方、研究チームのHall氏も、この仮説をめぐってその研究者と公の場で論争してきたことを明らかにしています。
3. 長く続けると、どのくらい痩せるのか
1年以上続けた研究をまとめると
ケト食と低脂肪食を1年以上追いかけて比べた研究を13件まとめたメタ分析があります(Bueno et al., 2013, Br J Nutr)。対象になった研究はすべて、参加者をくじ引きのように2つのグループに分ける「ランダム化比較試験」で、合計1,577人が参加しました(体重を分析できたのは1,415人)。
結果、ケト食のグループは、低脂肪食のグループより体重が0.91kg多く減っていました。ただし著者自身は、統計的には意味のある差だけれど、実際の健康への意義は小さいと評価しています。著者の計算では、体重87kgの人にとって0.91kgは、体重の約1%にあたります。
ほかにも、次の点に注意が必要です。
- 2年間(24か月)追いかけた研究だけで見ると、体重の差ははっきりしなくなった(ただし、該当する研究は4件のみ)
- 長く続けるうちに、多くの研究で参加者がケト食を守れなくなり、決められた量より多くの炭水化物をとっていた
- このメタ分析が対象にしているのは、2012年8月までに発表された研究
より新しい研究も含めた整理としては、2019年のNLAの声明があります。研究のまとめ(系統的レビューやメタ分析)を幅広く検討したうえで、ケト食を含む炭水化物を減らす食事は、減量の面で他の食事法より優れているわけではない、と結論しています(Kirkpatrick et al., 2019)。
以前の糖質制限の記事でも、1年ほど経つと他の食事法との差が縮まる傾向を紹介しました。低脂肪ダイエットの効果については、こちらの記事で詳しく取り上げています。
ケト食で確かめられている利点
減量効果は小さくても、ケト食には利点も報告されています。
- 中性脂肪とHDL:ケト食のグループでは、中性脂肪が下がり、HDL(いわゆる善玉コレステロール)が上がっていました(Bueno et al., 2013)。ただし、2年間追いかけた研究だけで見ると、はっきりした差が残ったのはHDLだけでした。
- 食欲:Gibson氏らのまとめでは、始める前と比べて小さな低下が見られました。NLAの声明と、後で紹介する米国心臓協会(AHA)の2023年の声明は、「可能性がある」という表現にとどめています。他の食事法より優れているかどうかは、2章で見たとおり、まだ結論が出ていません。
- 糖尿病の薬:NLAの声明は、2型糖尿病の治療で、薬の量を減らせる利点がありうるとしています。ただし、薬の調整は自分で判断せず、必ず主治医と相談してください(4章で詳しく説明します)。
このように利点はありますが、体脂肪を減らす特別な力が確かめられたわけではありません。
4. 安全性と、国・学会の見解
ここでは、国、国内の学会、海外の学会の順に見解を整理し、最後に特に注意が必要な人をまとめます。
4-1. 国(厚生労働省)の見解
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、糖尿病の人や血糖値の高い人を対象にした研究のまとめについて、次のように整理しています。
炭水化物を減らした食事のグループでは、6か月〜1年の短い期間なら、通常の食事などのグループと比べてHbA1c(過去1〜2か月の血糖の状態を表す値)がはっきり下がりました。しかし、1〜2年以降は下がり方が小さくなるか、差が見られなくなりました。そのうえで、長い期間続ける食事療法としては、炭水化物を減らすことは現時点では勧められない、としています。
なお、これは糖尿病の人や血糖値の高い人を対象にした内容です。
4-2. 国内の学会(日本糖尿病学会)の見解
日本糖尿病学会は2013年の提言で、炭水化物を1日50g以下にする「アトキンス式」の食事法を取り上げたうえで、次のような見解を示しています(日本糖尿病学会, 2013)。
- 全体のカロリーを減らさずに、炭水化物だけを極端に減らして痩せようとすることは、効果の面でも、長く続けられるか・安全かという面でも根拠が足りず、今の時点では勧められない
- 「全体のカロリーが多くても、炭水化物さえ減らせば痩せる」という考え方は短絡的である
- 欧米の研究はBMI30〜35以上の人を対象にしたものが多く、日本人に合った炭水化物の量については、まだ十分な根拠がない
この提言は2013年に出されたもので、糖尿病のある人の食事療法についての見解です。
4-3. 海外の学会の見解
米国脂質学会(NLA)
先ほどのNLAの声明は、ケト食を含む炭水化物を減らす食事について、次のようにまとめています(Kirkpatrick et al., 2019)。
- 減量の面で、他の食事法より優れているわけではない
- LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)への影響は研究によってばらばらで、上がった例もある
- 2年を超えて続けた場合の効果や安全性のデータは、ほとんどない
なお、Bueno氏らのメタ分析でも、ケト食のグループではLDLコレステロールが0.12mmol/L(約4.6mg/dL)上がっていました。
米国心臓協会(AHA)
AHAは2023年の声明で、よく行われている10種類の食事パターンが、AHAの食事の指針にどれだけ合っているかを採点しました(Gardner et al., 2023, Circulation)。その結果、ケト食(炭水化物を大きく減らす食事)とパレオ食(旧石器時代の食事をまねた食事法)は、指針との合い方が最も低いと評価されています。
ただし、この採点は「指針にどれだけ合っているか」を見たもので、健康への影響を直接比べたものではありません。また、AHAは、短い期間ケト食を試したい人に対しては、空腹感を抑えながら減量できる可能性があると伝えたうえで、次のような助言もしています。
- 脂質は植物性の油やナッツを中心にし、飽和脂肪(肉の脂やバターなどに多い脂)を控える
- 不足しやすいカリウムやマグネシウムを含む、マルチビタミン・ミネラルの補給も考える
AHAの採点の対象には、地中海式の食事パターンも含まれています。地中海式ダイエットについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→ 地中海式ダイエットとは?研究でわかっている健康効果をわかりやすく解説
4-4. 特に注意が必要な人
ケトーシスとケトアシドーシスの違い
ケトアシドーシスは、高血糖(または糖尿病がある)、ケトン体が大きく増える、血液が酸性に傾く、という3つがそろった状態で、治療が必要です(Umpierrez et al., 2024, Diabetes Care)(※注2)。
1章で紹介したHall氏らの2016年の研究では、ケト食の期間中、朝食前に測った血液中のβ-ヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)は約0.76mmol/Lでした。これは、ケトアシドーシスの診断基準の1つ(3.0mmol/L以上)を大きく下回っています。ただし、この研究では、血液の酸性度(pH)は報告されていません。
糖尿病の治療中の人(特にSGLT2阻害薬を飲んでいる人)
糖尿病の薬であるSGLT2阻害薬について、日本糖尿病学会が関わる委員会は、ケトアシドーシスの原因の1つとして「極端な糖質制限」を挙げています。薬を始めるときには十分に話を聞き(問診)、糖質制限をしていると考えられる場合は、この薬を使うのを控えるべきだとしています。また、この薬を飲んでいると、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスが起こることがあるとされています(SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会, 2022)。
腎臓に持病がある人
日本糖尿病学会の2013年の提言によると、提言で取り上げた炭水化物制限の研究では、どれも腎臓の働きが落ちている人を対象から外していました。そのため、腎臓の病気がある人での効果や安全性は確かめられていない、と指摘しています。
授乳中の人
糖尿病のない授乳中の女性が、炭水化物を減らして脂質を多くとる食事を始めて10日後に、重いケトアシドーシスで入院したという報告があります(von Geijer & Ekelund, 2015, J Med Case Rep)。これは1人のケースの報告なので、根拠としての強さは限られます。それでも、授乳中にはまれにこうした報告があることは、知っておくとよいでしょう。
持病がある人や薬を飲んでいる人は、自分の判断でケト食を始めず、必ず主治医に相談してください。
※注2:ケトアシドーシスと診断されるのは、①血糖200mg/dL以上、または糖尿病がある、②血液中のβ-ヒドロキシ酪酸が3.0mmol/L以上、または尿のケトンが2+以上、③pH7.3未満、または重炭酸の濃度が18mmol/L未満、の3つをすべて満たす場合です(Umpierrez et al., 2024)。
まとめ
ここまでの内容を整理します。
- 「ケトーシスで脂肪が燃える」は半分正しい。燃える脂肪は増えるが、体の脂肪が早く減るわけではなく、カロリーを減らす以上の効果は、意味のある大きさでは確かめられなかった
- 始めれば空腹感はいくらか和らぐ可能性があるが、他の食事法より食欲を抑えられるかは、まだ結論が出ていない
- 長く続けたときの減量の差は、約0.9kgにとどまる
- 中性脂肪やHDLの改善など、確かめられている利点もある(2年間の研究だけで見ると、差が残ったのはHDLのみ)
- 痩せる主な理由は、ケトーシスの特別な力ではなく、食べるカロリーが減ることだと考えるのが、今の時点での整理
- 研究の多くは欧米で行われたもので、日本人にそのまま当てはまるとは限らない
- 長く続けたときの安全性は、まだはっきりしていない。国や国内外の学会は、いずれも慎重な立場をとっている(ただしAHAは、短い期間試す場合には条件つきの助言も示している)
試してみたい人へ
もし試すなら、減らした炭水化物の分を何で補うかによって、長い目で見た体重の変わり方が違ってくることが、人々の食生活を追いかけた研究(観察研究)で報告されています(Liu et al., 2023, JAMA Netw Open)。詳しくは以前の記事で解説しています。
→ 糖質制限ダイエットは本当に痩せるのか?最新エビデンスで見る有効性と落とし穴
持病がある人や薬を飲んでいる人は、始める前に主治医に相談してください。
参考文献
- Bueno NB, de Melo ISV, de Oliveira SL, da Rocha Ataide T. Very-low-carbohydrate ketogenic diet v. low-fat diet for long-term weight loss: a meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Nutr. 2013;110(7):1178-1187. :DOI
- Hall KD, Guo J, Courville AB, et al. Effect of a plant-based, low-fat diet versus an animal-based, ketogenic diet on ad libitum energy intake. Nat Med. 2021;27(2):344-353. :DOI
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 炭水化物(令和6年10月):PDF
- Hall KD, Chen KY, Guo J, et al. Energy expenditure and body composition changes after an isocaloric ketogenic diet in overweight and obese men. Am J Clin Nutr. 2016;104(2):324-333. :DOI
- Gibson AA, Seimon RV, Lee CMY, et al. Do ketogenic diets really suppress appetite? A systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2015;16(1):64-76. :DOI
- Boden G, Sargrad K, Homko C, Mozzoli M, Stein TP. Effect of a low-carbohydrate diet on appetite, blood glucose levels, and insulin resistance in obese patients with type 2 diabetes. Ann Intern Med. 2005;142(6):403-411. :DOI
- Kirkpatrick CF, Bolick JP, Kris-Etherton PM, et al. Review of current evidence and clinical recommendations on the effects of low-carbohydrate and very-low-carbohydrate (including ketogenic) diets for the management of body weight and other cardiometabolic risk factors: A scientific statement from the National Lipid Association Nutrition and Lifestyle Task Force. J Clin Lipidol. 2019;13(5):689-711.e1. :DOI
- Sciarrillo CM, Guo J, Hengist A, Darcey VL, Hall KD. Diet order significantly affects energy balance for diets varying in macronutrients but not ultraprocessing in crossover studies without a washout period. Am J Clin Nutr. 2024;120(4):953-963. :DOI
- Ludwig DS, Willett WC, Putt ME. Concern for the validity of short-term dietary crossover trials. Nat Med. 2025;31:2913-2914. :DOI
- Hall KD. Reply to: Concern for the validity of short-term dietary crossover trials. Nat Med. 2025;31:2915-2916. :DOI
- Gardner CD, Vadiveloo MK, Petersen KS, et al. Popular dietary patterns: alignment with American Heart Association 2021 dietary guidance: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2023;147(22):1715-1730. :DOI
- 日本糖尿病学会「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言〜糖尿病における食事療法の現状と課題〜」(2013年3月18日):PDF
- Umpierrez GE, et al. Hyperglycemic crises in adults with diabetes: a consensus report. Diabetes Care. 2024;47(8):1257-1275. :Diabetes Care
- SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会「糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」(2022年7月26日改訂):PDF
- von Geijer L, Ekelund M. Ketoacidosis associated with low-carbohydrate diet in a non-diabetic lactating woman: a case report. J Med Case Rep. 2015;9:224. :DOI
- Liu B, Hu Y, Rai SK, Wang M, Hu FB, Sun Q. Low-carbohydrate diet macronutrient quality and weight change. JAMA Netw Open. 2023;6(12):e2349552. :DOI
内部リンク:
- 糖質制限ダイエットは本当に痩せるのか?最新エビデンスで見る有効性と落とし穴
- 体重の変動をどう読み解くか
- 超加工食品は本当に太るのか?Hall 2019のRCTから最新の議論まで
- 低脂肪ダイエットは効果があるのか
- 地中海式ダイエットとは?研究でわかっている健康効果をわかりやすく解説

