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「痩せ体質」は本当に生まれつきなのか?双子研究と遺伝子研究から検証する

健康的なスリムボディ習慣
むー

「同じだけ食べているのに、あの人は太らない」「うちは痩せ体質の家系だから」——こんな言葉を聞いたことはありませんか。「体質」というと、「生まれつき決まっていて、努力ではどうにもならないもの」というイメージがついて回ります。

一方で、厚生労働省のe-ヘルスネット「肥満と健康」には、こんな解説があります。

これまで一般的に「肥満は遺伝」と認識されてきましたが、近年では生活環境の関与が着目されてきています。肥満の家系においても遺伝のみならず、家族の食習慣や運動習慣など共通した生活習慣が肥満の原因と考えられます。このように肥満の成因として重要なのは遺伝よりも生活環境および生活習慣といえるでしょう。

この解説を素直に読むと、「痩せ体質は生まれつき」という話は、根拠の薄い思い込みのように感じられるかもしれません。

しかし、双子を対象にした研究を見ていくと、話はそう単純ではないことが分かってきます。この記事では、①双子研究、②過食させる実験、③具体的な遺伝子の研究、④日常の活動量(NEAT)の遺伝率、という4つの角度から、「体質」の正体に迫ります。先に結論だけ言っておくと、厚労省の説明と、これから紹介する研究は、実は矛盾していません。両者が見ているものの違いを一緒に整理していきましょう。

双子研究が示す、体重の「遺伝率」

体重に遺伝がどれくらい関わっているかを調べるうえで、特に力を発揮するのが双子の研究です。

一卵性双生児は遺伝子がほぼ100%同じですが、二卵性双生児は普通の兄弟姉妹と同じくらいしか遺伝子が似ていません。この2種類の双子を比べることで、「体格が似ているのは遺伝のせいか、それとも同じ家で育ったせいか」を区別できるのです。

Maes、Neale、Eavesの3人が1997年にまとめたレビュー論文では、世界各国の双子25,000組以上、家族50,000人以上のデータを集めた結果、双子研究によるBMI(体格指数)の遺伝率はおおむね50〜90%、一卵性双生児どうしのBMIの類似度は0.74(相関係数)と報告されています。

さらに新しく、規模も大きい研究として、2017年にSilventoinenさんたちが発表したCODATwinsという国際プロジェクトがあります。20か国・40の双子グループから集めた140,379組もの双子データを使って調べたところ、20代では男性0.77・女性0.75という高い遺伝率が出ました。ただし年齢が上がるほどこの数字は下がっていき、70代の男性では0.57、80代以上の女性では0.59まで低下しています。歳を重ねるにつれて、その人ならではの生活習慣が積み重なっていく分、生まれ持った遺伝の影響が相対的に薄まっていくのだと考えられます。

ここで一つ、誤解しやすいポイントに触れておきます。「遺伝率75%」と聞くと、「自分の体重の75%は遺伝で決まっている」ように感じてしまうかもしれませんが、これは正しい理解ではありません。遺伝率というのは、ある集団の中で見られる体重の個人差のうち、どれくらいの割合を遺伝の違いで説明できるかを示す統計上の数字であって、一人ひとりの体重が何%運命づけられているかを表すものではないのです。

この点を踏まえたうえで、Stunkard(1990)というもう一つの古典的な研究も見てみましょう。この研究では、生まれてすぐに離ればなれになり、それぞれ別の家庭で育てられた一卵性双生児を対象にしています。育った環境がまったく違うにもかかわらず、BMIの類似度は男性0.70・女性0.66と高く、育った家庭の違いはほとんど影響していませんでした。この結果は、遺伝の影響が確かに大きいことを裏付けています。ただし、その大きさ自体は、「体質は一生変えられない運命だ」という意味ではない、という点は改めて強調しておきたいところです。

「同じだけ食べても太りにくい」は本当か? 過食させる実験

双子研究には弱点もあります。似た体格の家族は、たいてい似た生活を送っているため、「遺伝の影響」と「共有している生活環境の影響」を完全には切り離せないのです。

この弱点を乗り越える、思い切った実験があります。Bouchardさんたちが1990年に発表した研究では、12組の一卵性男性双生児に、100日間かけて合計84,000kcal——1日あたりにすると約1,000kcal——分を意図的に食べさせるという、入院管理下での過食実験を行いました。

全員が同じ環境で、同じカロリーを食べさせられたにもかかわらず、増えた体重は4.3kgから13.3kgまで、人によって大きくばらつきました。ところが面白いことに、同じ双子ペアどうしでは、増え方のパターンがよく似ていたのです。

全員が同じ食事・同じ環境に置かれている以上、ここで生まれた個人差を「生活環境の違い」で説明することはできません。「同じだけ食べても太りにくい人がいる」という話は、少なくともこの実験の範囲では、単なる思い込みではなく、遺伝的な裏付けがあると言えそうです。

具体的にはどんな遺伝子が関わっているのか

では、実際にどの遺伝子が体重に関わっているのでしょうか。

その代表格が、FTOという遺伝子です。Frayling(2007)たちが約39,000人を対象に行った大規模な調査によると、FTO遺伝子のリスクとなるタイプを両親それぞれから1つずつ、合計2つ受け継いだ人——全体の約16%にあたります——は、そうでない人と比べて体重が平均で約3kg重く、肥満になりやすさ(オッズ比)は1.67倍でした。両親のうち片方からだけ、このリスクタイプを受け継いだ人(もう片方の親からはリスクではないタイプを受け継いだ人)では、体重への影響は平均+1.2kgと、より小さくなっています。持っている数が多いほど影響も大きくなる、という関係です。

その後、解析の規模はさらに大きくなっていきます。Locke(2015)たちによるGIANTという国際共同研究では、339,224人という膨大な人数を対象にしたゲノム解析によって、BMIに関連する遺伝子の場所が97か所も見つかりました。ここから分かるのは、体重は一つの遺伝子だけで決まるような単純な話ではなく、たくさんの遺伝子がそれぞれ少しずつ影響を及ぼし合って、個人差を作り出しているということです。

「痩せ」そのものの遺伝子はあるのか? — 肥満の裏返しではない

ここまで紹介してきたFTOやLocke(2015)の研究は、「太りやすい人から痩せている人まで含めた、体重の個人差全体」を対象にしたものでした。ここからは視点を変えて、その中でも特に痩せている人たちだけに絞った研究を見ていきます。では、「痩せそのもの」に関わる遺伝子を調べた研究はあるのでしょうか。

Orthofer(2020)たちは、エストニアの大規模なバイオバンクのデータを使い、痩せ型(BMIが下から6%以内、平均BMIは17.6程度)の881人と、標準的な体格の3,173人を比較する遺伝子解析を行いました。その結果、ALKという遺伝子が、痩せに関わる候補として浮かび上がりました。

この研究がユニークなのは、統計的な相関だけで終わらなかった点です。ショウジョウバエでALK遺伝子の働きを抑えると体の中の脂肪が減り、マウスでALK遺伝子を欠損させると、脂肪の多いエサを与えても太りにくくなりました。さらに、脳の視床下部という部分でこのALKが働くことで、交感神経を通じて脂肪の分解とエネルギー消費が調整されていることも突き止められています。

ただし、正直にお伝えしておきたい限界もあります。エストニアのデータで見つかったこの2つのALK遺伝子の変化は、UK Biobankという別の大規模なデータでは、痩せとの関連が確認できませんでした。研究者たちは、変化のタイプや、検出しにくい遺伝子の場所にあることをその理由として挙げていますが、いずれにせよ、ハエやマウスの実験ほどには、人間での遺伝的な関連はまだはっきりしたとは言えない段階です。

もう一つ、大事な注意点があります。ここで紹介した研究が対象にしているのは、医学的には「体質性やせ」と呼ばれる、健康診断でいう低体重の範囲に踏み込んだ、かなり極端な体格の人たちです。世間で「痩せ体質」と言われる、標準体重の範囲内で「他の人より太りにくい」という、もっと一般的な体質そのものを直接調べた研究は、今のところほとんど見当たりません。

「じっとしていても消費カロリーが多い」は本当か? NEATの遺伝率

「太りにくさ」を考えるうえで、食事の量以上に見落とされがちなのが、NEAT(ニート、非運動性熱産生)と呼ばれるものです。これは、運動として意識的に体を動かすとき以外に消費されるエネルギーのこと。貧乏ゆすりや、エレベーターではなく階段を使う、家事でこまめに動く、といった日常のちょっとした動作の積み重ねが、実は消費カロリーの個人差にかなり大きく関わっています。

de Geus(2023)が複数の研究をまとめた総説によると、身体活動量の遺伝率は、子ども時代で26〜35%、思春期で42%、成人になると45%程度で落ち着くとされています。個別の研究では、den Hoed(2013)たちが加速度計と心拍データを使って客観的に活動量を測定した大規模な双子研究があり、身体活動によるエネルギー消費量や中高強度の運動時間で47%、体幹の動きの大きさで35%、座っている時間で31%という遺伝率が報告されています。

ただし、この論文自身が結論で強調しているとおり、日々の身体活動量の個人差のうち、大部分はやはり環境の違いによって説明されます。つまりNEATについても、「多少は生まれつきの差がある」のは事実ですが、それ以上に「日々の工夫で変えられる余地」の方が大きいということです。日常生活の中でNEATを増やす具体的な方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

※ここまで紹介してきた研究の多くは、欧米人を中心とした集団を対象に行われたものです。たとえばFTO遺伝子のリスクタイプを持つ人の割合は、東アジア系の集団では欧米系より少ないことが分かっています。日本人集団を対象にした対応する研究は確認できていないため、ここで挙げた具体的な数値をそのまま自分に当てはめる際には、この点にご留意ください。

まとめ

双子研究や遺伝子研究をたどっていくと、「痩せ体質」という言葉には、確かに遺伝的な裏付けがあることが見えてきます。BMIの遺伝率はおおむね50〜90%、過食したときの体重の増え方にも遺伝的な個人差があり、FTOやALKといった具体的な遺伝子の候補も見つかっています。NEAT(日常の活動量)についても、多少は生まれつきの差があります。

では、冒頭の厚労省の「肥満の原因は遺伝より生活環境」という説明は、間違っていたのでしょうか。そうではありません。肥満も痩せも、体重という一つの物差しの、重い方と軽い方の違いにすぎません。双子研究が調べているのは、この物差し全体で見た体重の個人差に、遺伝がどれだけ関わっているかということ。一方、厚労省の説明は「肥満の家系で似るのは、遺伝だけが理由ではない」という注意喚起です。言っていることは違いますが、実はどちらも正しいのです。

そして何より大事なのは、遺伝率が高くても、それは一生変えられない運命という意味ではないということです。遺伝的に不利な条件で生まれたとしても、NEATを増やしたり、食習慣を見直したりすれば、変えられる部分は確かにあります。「痩せ体質」も「太りやすい体質」も、生まれ持った土台の上に、毎日の生活が積み重なって今の体がある、というシンプルな話なのかもしれません。

肥満そのものが生まれる仕組みについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
  2. Maes HH, Neale MC, Eaves LJ. Genetic and environmental factors in relative body weight and human adiposity. Behav Genet. 1997;27(4):325-351. PubMed
  3. Silventoinen K, Jelenkovic A, Sund R, et al. Differences in genetic and environmental variation in adult BMI by sex, age, time period, and region: an individual-based pooled analysis of 40 twin cohorts. Am J Clin Nutr. 2017;106(2):457-466. PubMed
  4. Stunkard AJ, Harris JR, Pedersen NL, McClearn GE. The body-mass index of twins who have been reared apart. N Engl J Med. 1990;322(21):1483-1487. PubMed
  5. Bouchard C, Tremblay A, Després JP, et al. The response to long-term overfeeding in identical twins. N Engl J Med. 1990;322(21):1477-1482. NEJM
  6. Frayling TM, Timpson NJ, Weedon MN, et al. A common variant in the FTO gene is associated with body mass index and predisposes to childhood and adult obesity. Science. 2007;316(5826):889-894. PubMed
  7. Locke AE, Kahali B, Berndt SI, et al. Genetic studies of body mass index yield new insights for obesity biology. Nature. 2015;518(7538):197-206. PubMed
  8. Orthofer M, Valsesia A, Mägi R, et al. Identification of ALK in Thinness. Cell. 2020;181(6):1246-1262.e22. PubMed
  9. de Geus EJC. Genetic Pathways Underlying Individual Differences in Regular Physical Activity. Exerc Sport Sci Rev. 2023;51(1):2-18. PMC
  10. den Hoed M, Brage S, Zhao JH, et al. Heritability of objectively assessed daily physical activity and sedentary behavior. Am J Clin Nutr. 2013;98(5):1317-1325. PubMed
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