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果物は太るのか?『甘い=太る』という直感と科学的根拠のギャップを一次文献から解説

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「果物は糖質が多いから、ダイエット中は控えたほうがいい」——糖質制限が広く知られるようになった今、こう考える人は少なくないと思います。実際、果物には果糖(フルクトース)という糖質が含まれており、「甘い=太る」という直感的なイメージとも結びつきやすいところです。

ただ、結論から先にお伝えすると、通常の量の果物を食べることと体重増加を結びつける根拠は、現時点の研究からは見えてきません。今回は、なぜ「果物は太る」というイメージが生まれるのか、そしてその直感と実際の研究データにどんなギャップがあるのかを、一次文献をもとに整理してみます。

なぜ「果糖」は警戒されるのか:代謝の仕組み

まず、果糖が警戒される理由から見ていきましょう。

果糖は、同じ糖質でもブドウ糖とは体の中での扱われ方が違います。ブドウ糖は全身の細胞でそのままエネルギーとして使われますが、果糖は主に肝臓で処理されます。果糖をたくさん摂ると、肝臓が糖を脂肪に作り変える働き(専門的には「デノボ脂肪生成(DNL)」と呼ばれます)が活発になることが分かっています。

これを示した代表的な研究が、Stanhope et al.(2009年、Journal of Clinical Investigation)によるものです。過体重・肥満の成人に、1日の摂取エネルギーの25%を果糖入りの飲み物、またはブドウ糖入りの飲み物に置き換えてもらい、10週間過ごしてもらったところ、興味深い結果が出ました。

体重の増え方自体は、どちらのグループもほぼ同じでした。ところが、内臓脂肪の増加や、肝臓での脂肪作り(DNL)の活発化、血液中の脂質の悪化は、果糖を摂ったグループにだけ見られたのです。

つまりこの研究から分かるのは、「果糖を摂ると体重が増える」ということではなく、「体重の増え方が同じでも、果糖は脂肪の”つき方”(特に内臓脂肪)に独自の影響を与える可能性がある」ということです。この違いを頭に入れておくと、この先の話が理解しやすくなります。

見落とされがちな視点①:「量」の問題

ここで注意しておきたいのが、上の研究で使われた果糖の量は、普段の食生活とはかけ離れた、かなり多い量だったという点です。

Sun & Empie(2012年、Journal of Nutritional Biochemistry)による、摂取量と体への影響の関係を整理したレビューでは、果糖の一つの目安として「1日50g」という数値が挙げられています。これは2,000kcalの食事でいうと、全体のエネルギーの約10%にあたる量です。そしてこのレビューでは、果物に自然に含まれる果糖の量は、普通の食べ方であればこの目安をはるかに下回り、心配するほどのレベルではないとされています。

ここで一つ、勘違いしやすいポイントがあります。「50g」というのは果糖そのものの重さのことで、「果物を50gまでしか食べてはいけない」という意味ではありません。果物には果糖のほかにブドウ糖やショ糖、それに水分もたくさん含まれているので、実際に食べられる果物の重さは、含まれる果糖の量よりずっと多くなります。たとえばりんごMサイズ1個(可食部約200g)に含まれる果糖はおよそ12g程度で、先ほどの50gという目安とは大きな差があります。

見落とされがちな視点②:「形態」の問題 — 果物とジュース・清涼飲料水は別物

もう一つ見落とされがちなのが、「同じ果糖でも、どんな形で摂るか」という視点です。

食物繊維と一緒に固形物として摂るのか、液体として単独で摂るのかによって、体への影響は変わってくることが分かっています。これは「食品マトリックス効果」と呼ばれる考え方で、簡単に言うと「同じ栄養素でも、どんな食品の形で摂るかによって、体への働き方が変わる」ということです。

Chiavaroli et al.(2023年、American Journal of Clinical Nutrition)は、169件のランダム化比較試験・10,357人分のデータをまとめたメタ解析(複数の研究結果を統合して、より確からしい結論を導く手法)で、この点を確かめています。その結果、清涼飲料水由来の果糖は多く摂ると体脂肪の増加と関連する一方で、果物由来の果糖は少ない量(果糖として1日50g以下、先ほどの目安と同じ水準)ではむしろ体脂肪が減る傾向すら見られ、悪い影響は確認されませんでした。

この、比較的短期間の実験(RCT)から分かった結果を、より長い時間軸で裏づけているのがSemnani-Azad et al.(2020年、JAMA Network Open)です。13件の追跡調査・49,591人分のデータをまとめたこのメタ解析では、果物の摂取量が80g増えるごとに、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満に高血圧・高血糖などが重なった状態)になるリスクが8%程度下がる(相対危険度0.92、95%信頼区間0.91-0.94)という関連が見つかっており、清涼飲料水とは正反対の結果になっています。

ちなみに、清涼飲料水の原材料表示でよく見かける「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」(いわゆる異性化糖)は、まさにここで言う”人工的に加えられた果糖”にあたります。同じ「果糖」という言葉でも、果物に自然に含まれるものとは分けて考える必要があるということです。

以前の記事「甘いものを食べると余計にお腹が空くのはなぜ?」でも触れましたが、果物は同じ糖質量でも血糖値の上がり方が緩やかな食品の一つです。食物繊維が含まれていることで、糖の吸収スピードや体への影響が穏やかになっていると考えられます。

実際のところ、果物を食べると体重はどうなるのか

ここまでは仕組みや量の話でしたが、実際に果物をよく食べている人たちを長い間追いかけた研究では、何が分かっているのでしょうか。

Bertoia et al.(2015年、PLOS Medicine)は、米国の医療従事者13万人以上を対象に、最長24年間にわたって追跡した大規模な研究です。この研究では、果物全体の摂取量が1日1食分(りんご1個相当など)増えるごとに、4年間で平均0.24kgの体重減少と関連していることが報告されています。なお、果物の種類によって効果の大きさには差があり、ベリー類ではより強い関連(0.50kg程度)が見られた一方、柑橘類ではやや控えめ(0.12kg程度)でした。ただしこれはあくまで参考程度の情報で、「この果物を選べば効果的」という結論を導くものではありません。

この研究には、今回のテーマにとって見逃せない工夫があります。研究チームはあえて分析の対象を生の果物だけに絞り、果物ジュースは除いているのです。理由として、ジュースには砂糖などが加えられていることが多く、糖尿病のリスクや体重増加との関連が別の研究で報告されていることを挙げています。つまりこの研究そのものが、「果物とジュースは別物として扱うべき」という、ここまで見てきた食品マトリックスの考え方を裏づける作りになっているわけです。

ただし、この研究にはいくつか限界もあります。観察して記録するタイプの研究なので、因果関係を証明するものではありません。また体重は本人の自己申告に基づいています。さらに、対象者の大部分が白人・高学歴の医療従事者であるため、日本人を含む他の集団にそのまま当てはめられるかどうかは、慎重に考える必要があります。

公式指針との整合性:厚労省が示す「1日200g」

こうした研究結果は、日本の公式な健康指針とも噛み合っています。

厚生労働省のe-ヘルスネット「果物1日200gのすすめ」によると、健康日本21(第三次)では、生活習慣病の予防という観点から「1日200gの果物摂取」を目標に掲げています。中くらいのりんごなら1個、バナナなら2本、みかんなら2個程度が目安です。

この「1日200g」という目標値の設定自体は、健康日本21(第三次)による政策的な検討をもとにしたものですが、この程度の果物を摂ることによる健康面のメリット(体重管理の観点)を示す根拠の一つとして、Schlesinger et al.(2019年、Advances in Nutrition)による研究が挙げられます。果物の摂取量と用量に応じた効果の関係を調べたこのメタ解析では、果物摂取量が1日100g増えるごとに、体重増加のリスクが約9%低下する(相対危険度0.91)というはっきりとした関連が確認されています。

ただ、正確を期すために付け加えておくと、過体重・肥満そのものへのリスクについては、同じく1日100gの増加あたり約7%の低下(相対危険度0.93)にとどまり、統計的にはぎりぎり有意と言えるかどうかの境界的な数値です。著者らはこの分野のエビデンスの質を「低い」と評価しており、「果物を食べれば肥満が防げる」と言い切れるほど強い根拠ではなく、「体重が増えにくい方向に働く可能性が高い」という表現のほうが実態に近いといえそうです。

実践的な注意点

最後に、いくつか気をつけておきたい点を挙げておきます。

まず、缶詰の果物はシロップ漬けのものが多く、糖質が多く含まれています。ドライフルーツも水分が抜けている分、糖質が凝縮された状態です。厚労省のページでも、これらは生の果物とは分けて、少量にとどめるよう案内されています。特に糖尿病のある方は、この点により注意が必要です。

また、果物をジュースにすると食物繊維が失われ、ここまで説明してきた「食品マトリックス効果」の恩恵を受けにくくなります。できるだけ生のまま食べるのが、果物本来のメリットを活かす食べ方だといえます。

まとめ

ここまでの内容を整理すると、次のようになります。

  1. 果糖はブドウ糖と異なる代謝経路をたどり、過剰摂取時には肝臓での脂肪合成(DNL)や内臓脂肪の増加につながりうる。ただしこれは「体重が増える」こととは別の話である
  2. 通常の果物摂取で得られる果糖量は、懸念されるレベルにはほど遠い
  3. 同じ果糖でも、果物として摂取するか、ジュース・清涼飲料水として摂取するかで代謝への影響は異なる
  4. 実際に果物をよく食べる人を長期間追跡した研究では、体重増加との関連は見られず、むしろ緩やかな体重減少との関連が報告されている
  5. 日本の公式指針(1日200g)とも整合するが、「肥満予防効果」を断定するにはまだエビデンスの質に限界がある

「甘い=太る」という直感は、果糖という一つの成分だけを取り出して考えると成り立つように見えますが、実際に問題になるのは量と摂取形態です。生の果物を適量、日々の食事に取り入れることは、現時点のエビデンスに沿った、無理のない選択だといえそうです。

参考文献

  • Stanhope KL, Schwarz JM, Keim NL, et al. Consuming fructose-sweetened, not glucose-sweetened, beverages increases visceral adiposity and lipids and decreases insulin sensitivity in overweight/obese humans. J Clin Invest. 2009;119(5):1322-1334. https://doi.org/10.1172/JCI37385
  • Sun SZ, Empie MW. Fructose metabolism in humans – what isotopic tracer studies tell us. Nutr Metab (Lond). 2012;9(1):89. https://doi.org/10.1186/1743-7075-9-89
  • Chiavaroli L, Cheung A, Ayoub-Charette S, et al. Important food sources of fructose-containing sugars and adiposity: a systematic review and meta-analysis of controlled feeding trials. Am J Clin Nutr. 2023;117(4):741-765. https://doi.org/10.1016/j.ajcnut.2023.01.023
  • Semnani-Azad Z, Khan TA, Blanco Mejia S, et al. Association of Major Food Sources of Fructose-Containing Sugars With Incident Metabolic Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open. 2020;3(7):e209993. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2020.9993
  • Bertoia ML, Mukamal KJ, Cahill LE, et al. Changes in Intake of Fruits and Vegetables and Weight Change in United States Men and Women Followed for Up to 24 Years. PLoS Med. 2015;12(9):e1001878. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1001878
  • Schlesinger S, Neuenschwander M, Schwedhelm C, et al. Food Groups and Risk of Overweight, Obesity, and Weight Gain: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Studies. Adv Nutr. 2019;10(2):205-218. https://doi.org/10.1093/advances/nmy092
  • 厚生労働省. 果物1日200gのすすめ. e-ヘルスネット. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-01-003.html
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歯科医師・ブロガー
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