ダイエットが続く条件:目的・やる気・目標の立て方を整理する
1. なぜ同じ「痩せたい」でも結果が分かれるのか
「今度こそ痩せる」と決めても、数週間から数ヶ月であきらめてしまう。そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。実はこのパターンには理由があります。
研究が示しているのは、ダイエットが続くかどうかは、意志の強さだけの問題ではないということです。同じ「痩せたい」でも、その目的を自分で選んでいるのか、それとも誰かにやらされているのかによって、続けやすさが変わってきます。
この記事では、「目的の中身」「やる気の質」「目標の立て方」という3つの観点から、続けやすいダイエットの条件を見ていきます。やる気の質については「自己決定理論」、目標の立て方については「目標設定理論」という、心理学の2つの理論を手がかりにします。
2. ダイエットの目的にはいろいろある
ダイエットを始める理由は人それぞれです。健康、外見、社会生活、気分、自尊心など、動機はひとつではないことが調査で分かっています。
大きく分けると、こんな感じに整理できます。
- 見た目・美容のため:体型を変えたい、イベントに向けて
- 健康のため:生活習慣病を防ぎたい、医師に言われた
- パフォーマンスのため:スポーツでの体重管理、体を動かすのが楽になる
- 気持ちの面:自分をコントロールできている感覚がほしい、リバウンドから抜け出したい
どの目的が「正しい」というものではありません。ただ、目的の「中身」によっても、続けやすさが変わってくることが実験で示されています。
3. 「見た目目的」は続きにくい
ある実験では、同じ運動を、あるグループには「見た目をよくするため」と説明し、別のグループには「健康と体力のため」と説明しました。そのうえで、その後しばらくの期間にわたって、運動を続けているかを追跡しました。すると、説明のされ方を変えただけで、その後続けられるかどうかに差が出ることが分かりました。
似たような実験は、子ども向けの読み物でも行われています。11〜12歳の子どもたちに、体の健康や体力についての文章を読んでもらう際、「これを読むと体が丈夫になる」(健康目的)と伝えた場合と、「これを読むと見た目が良くなる」(見た目目的)と伝えた場合を比較したところ、見た目目的で読んだグループの方が、内容の理解が浅くなることが確認されています。
さらに、「見た目」「お金」「他人からの評価」のような目標を重視しがちな人は、不安が強くなったり、健康状態が悪くなったりしやすい傾向があることが、追跡調査で分かっています。しかも、その目標を実際に達成できても、この傾向は解消されにくいことも、別の追跡調査で示されています。つまり「痩せさえすれば満たされる」という考え方自体、あまり成り立たないのかもしれません。
前半の運動・読解の実験は、目的を実際に条件として変えてみた実験によるものです。一方この段落で紹介した2つの研究は、目標の重視度や達成度を追跡した相関・追跡調査であり、実験のように条件を操作したものではありません。
4. やる気には「量」だけでなく「質」がある
ここまでは「何を目指すか」という目的の中身の話でした。ここからは、同じ目的でも「自分で選んだか」「やらされているか」という、また別の軸を見ていきます。
心理学には「自己決定理論」という考え方があります。やる気を量(強い・弱い)だけでなく、質(どんな種類か)で捉える理論です。
この理論では、やる気を次の4段階に分けて考えます。
- やらされている:報酬がほしい、あるいは罰を避けたいから行動する
- 義務感でやっている:やらないと罪悪感があるから行動する
- 自分で選んでいる:結果に価値があると感じて、自分の意志で行動する
- 意識しなくても自然にやっている:自分の価値観そのものと一致していて、無理なく行動できている
ポイントは、1・2のような「やらされ感の強いやる気」よりも、3・4のような「自分で選んだやる気」の方が、長く続きやすいということです。
5. 調査で分かっていること:「自分で選んだやる気」の効果
では、実際のダイエットのデータでもこの傾向は見られるのでしょうか。ここで紹介するのは、参加者の動機のタイプと、その後の結果を追いかけた調査です(実験的に条件を変えたものではありません)。
- 過体重の女性を3年間追跡した調査では、運動に対する「自分で選んだやる気」が強い人ほど、3年後も比較的大きな減量を維持できていた傾向がありました。
- 別の調査では、同じタイプのやる気の強さが、プログラム参加中の出席率や最初の減量幅だけでなく、23ヶ月後の体重維持まで関係していました。
- 運動そのものを楽しいと感じる気持ちが強くなるほど、最初の減量幅とは関係なく、長期的な体重の変化と関係していました。
さらに、こうした関係を健康行動全般で調べた大規模な分析(184件の研究をまとめたもの)でも、同じ傾向が確認されています。体重管理だけでなく、禁煙や薬の飲み忘れ防止など、幅広い健康行動に共通する傾向のようです。
6. 目標の立て方も大事
目的の中身、そしてやる気の質を見てきましたが、目標そのものの立て方も結果を左右します。ここで登場するのが「目標設定理論」です。
心理学者のロックとレイサムが35年分の研究をまとめた論文では、「具体的で、少しハードルの高い目標」を立てた方が、「ベストを尽くそう」といった漠然とした声かけよりも、はっきりと良い結果につながることが示されています。ダイエットで言えば、「痩せる」というふんわりした目標より、「3ヶ月で2kg減らす」という具体的な数字の方が、行動に移しやすいということです。
ただし数字を決めるときも、それが「誰かに決められたもの」ではなく「自分で納得して決めたもの」であることが大切です。ここは4章のやる気の質の話ともつながります。
7. 今日からできること
- 健康という目的に言い換えてみる:見た目への願望を否定する必要はありません。その先にある「健康でいたい」「疲れにくい体でいたい」という気持ちにつなげて、目的をとらえ直してみましょう。
- 人に言われた目標も、自分の理由に置き換える:たとえば医師に「5kg減らしましょう」と言われたら、「言われたから」で終わらせず、「疲れにくい体になりたいから」「膝への負担を減らしたいから」など、自分なりの理由を一つ見つけてみましょう。
- 自分を責める動機に頼りすぎない:「痩せなきゃダメ」という罪悪感は、4章で見た「義務感でやっている」状態に近く、長続きしにくいやる気です。
- 数字で目標を立てる:漠然とした願いではなく、達成できそうな範囲で具体的な数字を決めましょう。
8. まとめ
ここまで、ダイエットの目的の中身、やる気の質、目標の立て方という3つの観点を見てきました。
ただし、この理論がいつでも当てはまるわけではありません。研究の中には、「自分で選んだやる気」よりも「やらされ感のあるやる気」の方が、結果と強く結びついていたという逆の報告もあります。効果は人や状況によっても変わる、という点は頭に入れておいてよいでしょう。
それでも、多くの研究が示しているのは、ダイエットの目的、やる気の質、目標の立て方は、続けられるかどうかを左右する要素になりうるということです。「なぜ痩せたいのか」「その気持ちは自分で選んだものか」「目標は具体的か」を一度立ち止まって考えてみることが、次のダイエットを成功させる、意外と見落とされがちな第一歩なのかもしれません。
参考文献(一次資料)
- Silva, M. N. et al. (2008). A randomized controlled trial to evaluate self-determination theory for exercise adherence and weight control. BMC Public Health, 8, 234. doi:10.1186/1471-2458-8-234
- Silva, M. N., Markland, D., Carraça, E. V., Vieira, P. N., Coutinho, S. R., Minderico, C. S., Matos, M. G., Sardinha, L. B., & Teixeira, P. J. (2011). Exercise autonomous motivation predicts 3-yr weight loss in women. Medicine & Science in Sports & Exercise, 43(4), 728-737. doi:10.1249/MSS.0b013e3181f3818f
- Williams, G. C. et al. (1996). Motivational predictors of weight loss and weight-loss maintenance. Journal of Personality and Social Psychology, 70(1), 115-126. doi:10.1037/0022-3514.70.1.115
- Teixeira, P. J. et al. (2006). Exercise motivation, eating, and body image variables as predictors of weight control. Medicine & Science in Sports & Exercise, 38(1), 179-188. doi:10.1249/01.mss.0000180906.10445.8d
- Ng, J. Y. Y. et al. (2012). Self-Determination Theory Applied to Health Contexts: A Meta-Analysis. Perspectives on Psychological Science, 7(4), 325-340. doi:10.1177/1745691612447309
- Vansteenkiste, M., Simons, J., Soenens, B., & Lens, W. (2004). How to become a persevering exerciser? Providing a clear, future intrinsic goal in an autonomy-supportive way. Journal of Sport & Exercise Psychology, 26(2), 232-249. doi:10.1123/jsep.26.2.232
- Vansteenkiste, M., Simons, J., Lens, W., Soenens, B., & Matos, L. (2005). Examining the motivational impact of intrinsic versus extrinsic goal framing and autonomy-supportive versus internally controlling communication style on early adolescents’ academic achievement. Child Development, 76(2), 483-501. doi:10.1111/j.1467-8624.2005.00858.x
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist, 57(9), 705-717. doi:10.1037/0003-066X.57.9.705
- Kasser, T., & Ryan, R. M. (1996). Further examining the American dream: Differential correlates of intrinsic and extrinsic goals. Personality and Social Psychology Bulletin, 22(3), 280-287. doi:10.1177/0146167296223006
- Niemiec, C. P., Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2009). The path taken: Consequences of attaining intrinsic and extrinsic aspirations in post-college life. Journal of Research in Personality, 43(3), 291-306. doi:10.1016/j.jrp.2008.09.001
- Reed, J. R., Yates, B. C., Houfek, J., Briner, W., Schmid, K. K., & Pullen, C. H. (2016). Motivational factors predict weight loss in rural adults. Public Health Nursing, 33(3), 232-241. doi:10.1111/phn.12213
- Martinez, M., Salazar-Collier, C. L., Pena, J., Wilkinson, A. V., Chavarria, E. A., & Reininger, B. M. (2022). Motivation for weight loss among completers of a free community-based weight loss program in a US-Mexico border region: A self-determination theory perspective. Frontiers in Public Health, 10, 652271. doi:10.3389/fpubh.2022.652271

