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高タンパク食で痩せるのか?代謝・満腹感・長期試験・腎臓への影響を一次文献から検証する

高タンパク質ダイエットのかわいい栄養ガイド
むー

「タンパク質を増やすと痩せやすい」。ダイエットでよく聞く話です。

結論から書くと:

短期間なら、脂肪が少しだけ多く減ります。カロリーを減らしている間は、筋肉なども落ちにくくなる傾向があります。ただし差は小さく、1年以上たっても体重の差が続くという確かな証拠はありません。 いちばんの壁は「続けにくさ」です。

この記事でいう「高タンパク食」は、脂質の量は変えずに、炭水化物の一部をタンパク質に置き換えた食事のことです。炭水化物を大きく減らす糖質制限・ケトジェニック・カーニボアとは別のものとして扱います(糖質制限については「糖質制限ダイエットの効果」で解説しています)。

1日に何gとればいいかは「PFCバランスの科学的根拠」、いつとればいいかは「タンパク質摂取のタイミング」の記事で詳しく扱っています。この記事では、「そもそも高タンパク食で痩せるのか」だけに絞って見ていきます。

なお、この記事で取り上げる研究の多くは、太り気味〜肥満の欧米の大人が対象です。日本人を対象にしたランダム化比較試験(RCT:参加者をくじ引きのような方法でグループに分けて比べる試験)は含まれていません。

1. なぜ「痩せる」と言われるのか(しくみ)

高タンパク食で痩せやすいと言われる理由は、主に2つあります。

  • 熱産生:食べ物を消化するときにも、体はエネルギーを使います。これを食事誘発性熱産生といいます。タンパク質は、炭水化物や脂質よりこのエネルギーが大きい栄養素です
  • 満腹感:タンパク質はお腹が満たされた感じが続きやすく、そのぶん食べる量が減りやすいと考えられています

ハーバード大学のHaltonとHu(2004年)は、当時の研究をまとめて検討しました。その結果、熱産生と満腹感が高まることには、説得力のある証拠があると結論づけています。一方で、体重が減るかどうかは、研究によって結果がばらばらでした。

では、熱産生の効果はどれくらい続くのでしょうか。Guarneiriら(2024年)は、52件の研究(うち51件がRCT)をまとめてメタ分析しました。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。結果は次のとおりです。

  • 1回の食事では:高タンパクの食事のほうが、食後の熱産生が大きかった
  • 数日〜1年続けると:食後の熱産生には、統計的に意味のある差(偶然では説明しにくい差)が見られなくなった。ただし、1日に使うエネルギー全体と、じっとしているときに使うエネルギー(安静時代謝)は、わずかに多かった

つまり:熱産生の上乗せは、続けると目立たなくなります。ただ、1日に使うエネルギー全体は、少しだけ増えるようです。どちらも差は小さいものでした。

なお、このメタ分析は食品メーカーのGeneral Millsがお金を出しており、同社の社員2名が著者に入っています(データの集め方や解釈、論文の執筆には関わっていないとされています)。

2. 短期(3〜6か月)の効果

カロリー制限なしの場合:Skovら(1999年)

デンマークのSkovら(1999年)は、太り気味〜肥満の65人を3つのグループに分けて、6か月間比べました。

  • 高タンパク群:タンパク質を総カロリーの25%にする
  • 低タンパク群:タンパク質を総カロリーの12%にする
  • 対照群:普段どおりの食事を続ける

高タンパク群と低タンパク群は、どちらも脂質を総カロリーの30%にそろえています。

この研究の特徴は、カロリーを制限せず、好きなだけ食べてよいというルールだったことです。参加者は、研究所の中に作られた小さなスーパーで、決められた食事の範囲内で食品を自由に選びました(無料)。ルールが守られているかは、尿の成分(タンパク質を食べた量の目安になる窒素)で確かめています。

結果は次のとおりです。

高タンパク群低タンパク群差
体重の減少8.9kg5.1kg3.7kg
体脂肪の減少7.6kg4.3kg3.3kg

※差は論文に書かれている値です。各グループの数字は端数を丸めているため、表の数字を引き算した値とは0.1kgずれることがあります。

高タンパク群も低タンパク群も体重が減りました(普段どおりの食事を続けた対照群は変わりませんでした)。体重が減ったのは、脂質を減らした食事全体の効果です。高タンパクの効果は、その「差」の部分にあたります。

なお、この研究はデンマークの公的な研究費に加えて、豚肉・食肉業界や乳製品業界の団体からもお金を受けていました。高タンパク群の食事は、脂肪の少ない肉と低脂肪の乳製品が中心でした。

カロリーをそろえた場合:Wycherleyら(2012年)

では、カロリーを同じにそろえるとどうなるでしょうか。オーストラリアのWycherleyら(2012年)は、カロリーを減らしている人を対象に、高タンパク食と普通のタンパク質の食事を比べた24件のRCT(1,063人)をメタ分析しました。どの研究も、脂質の量はそろえて、タンパク質と炭水化物の割合だけを入れ替えています。期間は平均12週です。

項目高タンパク食のほうが良かった差
体重0.79kg多く減った
体脂肪0.87kg多く減った
除脂肪量(筋肉など、脂肪以外の重さ)減り方が0.43kg少なかった
中性脂肪(血液中の脂肪の一種)0.23mmol/L多く下がった

著者自身も、この効果を「控えめ」と表現しています。また、次の点にも注意が必要です。

  • 差は1kgに届かない。研究を期間で分ける(12週未満と12週以上)と、どちらのグループでも体重の差は統計的に意味のある差とは言えなくなった。体脂肪の差は残った
  • 24件のうち17件で、研究者が食品の一部または全部を用意していた。食事がしっかり管理された条件での結果である
  • 高タンパク群のタンパク質は、平均で総カロリーの30.5%(体重1kgあたり1.25g)。かなり多い量である

つまり:短期間なら、脂肪が少し多く減り、筋肉などは落ちにくい傾向があります。ただし、その差は1kg前後です。

3. 長期の効果と「続けられるか」の問題

管理をやめると、差は続かなかった:Dueら(2004年)

2章のSkovらの研究には続きがあります。同じ研究グループのDueら(2004年)は、6か月間の食品の提供が終わった後も、さらに6か月間、栄養指導だけで食事を続けてもらいました。

12か月の時点で、体重は高タンパク群が6.2kg、低タンパク群が4.3kg減っていました。数字には差がありますが、統計的に意味のある差ではなくなりました。24か月の結果も報告されていますが、途中で参加をやめた人が多く、はっきりしたことは言えません。

なお、この研究はSkovらの試験の続きです。元のプロジェクトの最終報告書は、デンマークの乳業の研究基金の報告書として出されています。

2年後には、食べる量の差そのものが縮んでいた:Sacksら(2009年)

もっと大きく、長い試験もあります。米国のSacksら(2009年)は、太り気味〜肥満の811人を対象に、タンパク質15%と25%の食事を含む4種類の減量食を2年間比べました(米国の国の研究費による研究です)。

2年後に減った体重は、15%のグループが3.0kg、25%のグループが3.6kgで、統計的に意味のある差はありませんでした。

ただし、これを「高タンパク食は効果がない」と読むのは正しくありません。尿の成分から計算すると、実際に食べたタンパク質の差は、6か月で1日約10g、2年では1日約5gにまで縮んでいました。「25%と15%」という指示の差(総カロリーの10%分)は、実際にはずっと小さくなっていたのです。

著者自身も、減量の試験では、最初の数か月を過ぎると食事のルールを守れなくなることが多いと書いています。

つまり:この試験からわかるのは、「高タンパク食に効果がない」ことではありません。「長く続けると、高タンパクの食事そのものを続けられなくなる」ということです。

リバウンドを少し防げた:Larsenら(2010年)

欧州8か国のLarsenら(2010年、DiOGenes試験)は、まず8週間の低カロリー食で体重を減らした大人773人を対象にしました。その後の26週間、タンパク質の多い食事や少ない食事などに分けて比べています。この期間は、カロリーを制限せず、好きなだけ食べてよいルールでした。

その結果、高タンパク群のほうが、リバウンド(体重の戻り)が0.93kg少なかったと報告されています。

ただし、目標にしていたタンパク質の差(総カロリーの約12%分)に対して、実際の差は5.4%分しかありませんでした。また、食品を無料で配った2つの施設では、一部に企業が提供した食品が使われています(研究そのものはEUの研究費によるものです)。

つまり:タンパク質の差が小さいながらも保たれた条件では、リバウンドを少し防ぐ効果が見られました。

4. 海外の公的な評価と議論(2026年10月時点)

ドイツ栄養学会:確かさは「不十分」

ドイツ栄養学会は、タンパク質のガイドライン(指針)を作るために、これまでの研究を評価しました(Ellingerら、2024年。ドイツの国の省庁の研究費による)。システマティック・レビュー(あるテーマの研究を漏れなく集めて評価したもの)33件を、さらにまとめた「アンブレラレビュー」です。

その結論は、次のとおりです。

  • カロリーを減らしているときは、高タンパク食で体重や体脂肪が減る傾向がある。ただし、元になったレビューの質が低く、根拠の確かさは「不十分」
  • カロリーを制限していない研究では、タンパク質の量は体重や体脂肪に影響しない可能性がある(確かさは「ありうる」の段階)

2つ目の結果は、2章のSkovらの研究(カロリー制限なしで差がついた)とは違います。1つの試験だけでは結論を出せない、ということを示しています。なお、この評価には、2章で紹介したWycherleyらのメタ分析も含まれています。

今の米国のガイドライン:基本はカロリーを減らすこと

米国では2026年、心臓病の学会などが、心臓・腎臓・代謝の病気をまとめて扱う新しいガイドラインを出しました。これにより、それまでの肥満症のガイドライン(2013年版)は置き換えられています。

このガイドラインで減量の基本とされているのは、ほどほどにカロリーを減らすことと運動です。さまざまな食事法を比べた研究をもとに、食事法による効果の差は12か月ほどでほぼなくなる、とも説明しています。高タンパク食を特に勧める記述はありません。

米国の新しい食事ガイドラインと、それへの評価

一方、米国の食事ガイドライン(2025〜2030年版)は、タンパク質を1日に体重1kgあたり1.2〜1.6gとるよう勧めました。これまでの推奨量(0.8g)を大きく上回る数字です。

この推奨の根拠を報告書の付録で確認すると、2人の研究者による「迅速レビュー」でした。迅速レビューとは、時間が限られているため、通常の手順を簡単にした研究のまとめ方です。対象は30件のRCT(2,042人)で、結果は次のとおりです。

項目高タンパク食のほうが良かった差根拠の確かさ
体脂肪約1.3kg多く減った高
体重約0.9kg多く減った中
除脂肪量約0.8kg多かった中

※付録の要約の表の値を丸めたものです。この値は通常のメタ分析とは計算の方法が違い、結果のばらつきの幅(信頼区間)は示されていません。

確かさが「高」だったのは、体脂肪の小さな改善だけでした。また、高タンパク群の食事は平均で総カロリーの28%で、タンパク源の8割以上が肉や乳製品などの動物性食品でした。30件のうち6件は著者自身の試験で、付録には著者の利益相反(研究結果に影響しうる企業との関係など)の記載が見当たりません。

この推奨について、米国心臓病学会(ACC)は2026年9月に出した栄養についての声明(企業のお金は入っていません)で、次のように評価しています。

  • 確かさが高いのは、体脂肪の小さな改善だけ。太り気味〜肥満の人以外にまで一律に当てはめる根拠はない
  • 心臓や血管の健康を考えると、タンパク質の量より、何からとるか(植物性が有利)のほうが大事
  • 高タンパクを勧めることや、脂肪を取り除いていない動物性食品を強調することは、今ある証拠と十分には合っていない

つまり:米国の新しい推奨は、専門家の間でも評価が分かれています。

5. 日本の基準

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、タンパク質の目標量を次のように決めています。

年齢目標量(総カロリーに占める割合)
1〜49歳13〜20%
50〜64歳14〜20%
65歳以上15〜20%

上限の20%は、十分な科学的根拠はまだないとしたうえで決められた目安です。20〜23%前後とった場合に、代謝や高齢者の腎臓に良くない影響が出る可能性があり、「これから確かめるべき課題」として残っているためです。

ここで注目したいのは、この記事で紹介した研究が目標にしていた高タンパク食(総カロリーの25〜30%前後)は、どれもこの上限を超えていることです。

ただし、減量中は1日の総カロリーが減ります。そのため、同じグラム数をとっても、割合は高くなります。たとえば体重70kgの人が1日に体重1kgあたり1.6g(112g)をとると、1日1,800kcalの食事では総カロリーの約25%になります。具体的な量の考え方は「PFCバランスの科学的根拠」で解説しています。

6. 腎臓への影響と、避けるべき人

高タンパク食でよく心配されるのが、腎臓への負担です。なお、腎臓についての研究には、糖質制限型の高タンパク食の試験も含まれています。

検査の数値は変わるが、多くは体の自然な反応

SchwingshacklとHoffmann(2014年)は、慢性腎臓病のない人を対象にした30件のRCT(2,160人)をメタ分析しました。高タンパク食では、次の数値が上がりました。

  • 糸球体ろ過量(GFR):腎臓がどれだけ血液をろ過しているかを示す数値
  • 血液中の尿素
  • 尿の中のカルシウム

ただし著者自身も、これらの変化の多くは、体が食事に合わせて働きを調整した結果で、それ自体は病気を意味するものではないと解釈できるとしています。そのうえで、肥満の人はもともと腎臓病になりやすいため、減量のために(特に動物性中心の)高タンパク食を勧めるときは慎重にするべきだと提案しています。

変化の大きさで比べると、差はない

カナダのDevriesら(2018年)は、腎臓病のない大人(肥満や2型糖尿病、高血圧の人を含む)を対象にした28件の研究(1,358人)をメタ分析しました。

その結果、試験の後のGFRは、高タンパク食のほうがわずかに高くなっていました。しかし、試験を始める前からどれだけ変わったかで比べると、差はありませんでした。著者らは、高タンパク食が腎臓の働きに悪い影響を与えるという証拠はない、と結論づけています。

ただし、研究の質を評価すると、この結論の確かさは「低い〜非常に低い」とされています。また、責任著者は、米国の乳製品業界、カナダの酪農業界、米国の牛肉業界の団体から、研究費や謝礼を受け取っていたことを公表しています。

厚生労働省は上限を「決められない」と判断

厚生労働省の食事摂取基準は、上のDevriesらの研究なども根拠にして、タンパク質の耐容上限量を決めていません。耐容上限量とは、「この量までなら健康への害がないとみなせる」という上限のことです。決められるだけの、十分ではっきりした根拠がない、という判断です。

ただし同時に、上限がないからといって、たくさんとるほど健康に良いわけではない、とも注意しています。

慢性腎臓病の人は対象外

腎臓の働きが落ちている人は、話が違います。腎臓病の国際的なガイドライン(KDIGO 2024)は、次のように定めています。

  • 慢性腎臓病がステージG3以上に進んだ大人(eGFR:腎臓の働きを血液検査から計算した数値が60未満)は、タンパク質を1日に体重1kgあたり0.8gに保つことを提案
  • 悪化しやすい慢性腎臓病の大人は、1日1.3gを超えないようにする(専門家の判断による目安)

慢性腎臓病は、自覚症状がないまま進むことがよくあります。高タンパク食を始める前に、健康診断のeGFRや尿タンパクを確認しておくと安心です。

なお、高タンパク食をしている人や筋肉が多い人は、血液中のクレアチニンという数値が高めに出ることがあります。eGFRはこのクレアチニンから計算するため、実際の腎臓の働きより低く出ることがあります。気になる数値が出たら、医師に普段の食事の内容を伝えるとよいでしょう。

研究のお金の出どころについて

この分野には、食肉・乳製品・食品業界のお金や関係がある研究も含まれています。この記事では、そうした研究には本文でそのことを書きました。

業界のお金が入っているからといって、結果が間違っているわけではありません。実際、国のお金で行われた研究(Wycherleyらのメタ分析など)でも、短期間の小さな効果は確認されています。ただ、研究を読むときには知っておいてよい情報だと考えています。

まとめ

言えること

  • 短期間なら、脂肪が少し多く減る
  • カロリーを減らしている間は、筋肉などが少し落ちにくい傾向がある
  • 減量した後の体重を保つ期間(約半年)に、リバウンドが少し少なかった試験もある

言えないこと

  • 1年以上たっても体重の差が続くこと(この記事で紹介した1年以上の試験では、統計的に意味のある差は見られなかった)。長い試験では、高タンパクの食事そのものを続けられなくなることが最大の壁だった

実践するなら

  • カロリー制限なしで短期的に差がついた試験(Skovら)もあるが、管理がなくなると差は続かなかった。基本はカロリーの出入り(収支)を整えること
  • 1日の量の目安は「PFCバランスの科学的根拠」で確認する
  • 心臓や血管の健康のために、植物性のタンパク質(大豆製品や豆類など)も組み合わせる
  • 無理なく続けられる範囲にとどめる
  • 腎臓に不安があれば、始める前に健康診断の数値を確認する

タンパク質を増やすことは、ダイエットの「助け」にはなっても、それだけで痩せる方法ではありません。 まずはカロリーの収支を整え、そのうえで続けられる形でタンパク質を取り入れるのが現実的だと考えます。

参考文献

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内部リンク:PFCバランスの科学的根拠、タンパク質摂取のタイミング、糖質制限ダイエットの効果

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歯科医師・ブロガー
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