朝は食べなければいけない?
「朝ごはんは1日で一番大事な食事」。子どもの頃からそう言われてきた人は多いと思います。朝食を抜くと太る、頭が働かなくなる、集中力が落ちる——こうした話は今でもよく聞きますが、実際のところどこまで本当なのでしょうか。
この記事では、「体重への影響」と「頭の働き(記憶や集中力)への影響」の2つに分けて、研究データを見ていきます。先に結論を言うと、「朝食は絶対に食べないとダメ」と言い切れるほどの強い根拠は、実はあまりありません。ただし、大人と子どもでは話が変わってきます。
朝食を抜くと本当に太るの?
「朝食を抜くと代謝が落ちて太りやすくなる」という話、よく聞きますよね。でも、これをきちんとした実験(ランダム化比較試験)で調べた研究では、少し違う結果が出ています。
2019年に医学誌のBMJに載った研究(Sievertらのチームによるもの)では、朝食を食べるグループと食べないグループを比較したいくつもの実験結果をまとめて分析しました。その結果、朝食を抜くと体重が増える、とはっきり言える結果は出ませんでした。それどころか、朝食を抜いたグループの方が、1日に食べる量がやや少なくなる傾向も見られています。
また2014年の別の研究(Dhurandharらのチーム)でも、「朝食を食べると代謝が上がる」「朝食を抜くと太る」といった話を裏付けるような結果は出ませんでした。
つまり、少なくとも健康な大人については、「朝食を抜く=太る」と単純に決めつけられる強い証拠は、今のところ見つかっていないということです。大事なのは朝食を食べるかどうかより、1日を通して何をどれくらい食べているか、という点のようです。
朝食を抜くと頭が働かなくなる?大人の場合
次は、頭の働きへの影響を見ていきます。まずは健康な大人を対象にした研究からです。
2016年に発表されたレビュー論文(Galioto & Spitznagelによるもの)は、大人を対象にした38個の研究をまとめて分析したものです。この論文を書いた2人は、食品業界からお金をもらっていないことをはっきり書いており、そういう意味で信頼しやすい内容です。
結果を見ると、朝食を食べた大人は「記憶」、特に少し時間が経ってから思い出す力においては、わずかですが良い成績が出ていました。ただ、注意力や実行機能(いわゆる段取り力のようなもの)については、良くなったという結果とそうでない結果が半々くらいで、はっきりしたことは言えません。言葉に関する力については、朝食の影響は見られませんでした。
さらに新しい研究として、2025年に発表されたレビュー(Hsiehらのチーム)では、運動する前に朝食を食べたかどうかで、運動中の頭の働き(処理スピードや我慢する力など)に違いは見られなかったと報告されています。
これらをまとめると、健康な大人であれば、「朝食を抜くと頭が働かなくなる」と言い切れるほどの強い証拠はなく、あったとしても記憶の面でごくわずかな違いがある程度、というのが現状のようです。
朝食を抜くと頭が働かなくなる?子ども・若者の場合
一方、子どもや若者を対象にした研究では、大人とは少し違った結果が出ています。
2009年に発表された、この分野ではよく引用される代表的なレビュー論文(Hoyland・Dye・Lawtonのチーム)は、1950年から2008年までの間に出された45個の研究をまとめたものです。結果として、朝食を食べた子どもの方が、食べなかった子どもより記憶や注意力のテストで良い成績が出やすい、という傾向がわかりました。特に、午前中の遅い時間帯になるほどこの差がはっきり出やすいようです。ただし、この効果は、もともと栄養状態があまり良くない子どもでより強く出る傾向があり、栄養状態が良い子どもでは効果がはっきりしないことも指摘されています。
もう一つ、具体的な実験として、2008年にドイツで行われた研究(Widenhorn-Müllerらのチーム)も参考になります。13歳から20歳の高校生104人を対象に、朝食を食べる週と食べない週を入れ替えて比較する実験です。結果、「集中し続ける力」自体には差が出ませんでしたが、男子生徒では空間的な記憶力が良くなり、生徒全体で「頭がすっきりしている感じ」が改善したという結果が出ています。
こうした研究から、子どもや若者については、朝食を食べることで記憶力やすっきり感にプラスの効果がある、という比較的まとまった証拠があると言えそうです。特に栄養が足りていない子どもでは、その効果がよりはっきり出る傾向にあります。
ちょっと気をつけたい、研究の「お金の出どころ」の話
ここで一つ、大事な話をしておきます。それは、朝食と頭の働きに関する研究の中には、食品会社からお金をもらって行われているものがある、という事実です。
先ほど紹介した2009年のレビュー論文では、著者3人のうち1人が、シリアルで有名なケロッグ社からお金をもらってこの論文を書いたことがはっきり書かれています。
これは「だからこの研究は信じられない」という単純な話ではありません。きちんとした学術誌に載っている以上、それなりの科学的な質は保たれています。ただ、「朝食を食べた方がいい」という結論に傾きやすい仕組みになっていることは、読む側として知っておいた方がいいポイントです。
反対に、先ほど紹介した体重に関する2つの研究や、大人の頭の働きに関する2016年のレビュー論文は、どれも「お金のつながりはない」とはっきり書かれています。これらの研究がどれも「朝食の効果は限定的」という、食品業界にとってはあまり都合の良くない結果を出している点は、頭に入れておく価値があるでしょう。
結局、朝食は「必要」なの?
ここまでの話をまとめると、こうなります。
- 体重(大人):朝食を抜くと太るという強い証拠はない
- 頭の働き(大人):朝食の効果は記憶面でわずかにあるだけで、それ以外ははっきりしない
- 頭の働き(子ども・若者):記憶力やすっきり感に良い効果があるという、まとまった証拠がある。特に栄養が足りていない子どもで効果が強い
これを踏まえると、「朝食は絶対に食べなきゃダメ」というのは、少なくとも健康な大人にとっては言いすぎだと言えそうです。一方で、成長期の子どもや若者、特に栄養が十分でない子どもには、朝食を食べることを勧める理由はしっかりあります。
健康な大人の場合、大事なのは「朝食を食べるか抜くか」よりも、1日を通して食べているものの量やバランスが、自分の生活リズムやお腹の空き具合に合っているかどうかです。朝食を抜いた分、お昼や夜に食べ過ぎていないか、栄養が偏っていないかは人によって違うので、自分の体調や頭の働き具合を見ながら決めるのが現実的だと思います。
なお、糖尿病の治療中の方など、血糖値の管理が必要な場合は、この記事の内容にかかわらず、必ず主治医の指示に従ってください。
参考文献
- Sievert K, et al. (2019). Effect of breakfast on weight and energy intake: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ, 364:l42. https://doi.org/10.1136/bmj.l42
- Dhurandhar EJ, et al. (2014). The effectiveness of breakfast recommendations on weight loss: a randomized controlled trial. International Journal of Obesity, 38(10):1300-1305. https://doi.org/10.1038/ijo.2014.98
- Galioto R, Spitznagel MB. (2016). The effects of breakfast and breakfast composition on cognition in adults. Advances in Nutrition, 7(3):576S-589S. https://doi.org/10.3945/an.115.010231
- Hsieh SS, et al. (2025). Systematic review on the effects of exercise with and without breakfast consumption on cognitive performance in healthy adults. BMC Psychology. https://doi.org/10.1186/s40359-024-02327-y
- Hoyland A, Dye L, Lawton CL. (2009). A systematic review of the effect of breakfast on the cognitive performance of children and adolescents. Nutrition Research Reviews, 22(2):220-243. https://doi.org/10.1017/S0954422409990175
- Widenhorn-Müller K, et al. (2008). Influence of having breakfast on cognitive performance and mood in 13- to 20-year-old high school students: results of a crossover trial. Pediatrics, 122(2):279-284. https://doi.org/10.1542/peds.2007-0944

