ダイエットの停滞期って本当にあるの? 科学的な根拠を調べてみた
はじめに
順調に減っていた体重が、食事制限を続けているのにある時から減りにくくなる。ダイエットをしたことがある人なら、一度は経験する「停滞期」。これは気のせいなのでしょうか? それとも、体の中で何かが起きているのでしょうか?
この記事では、まだカロリー制限を続けている「ダイエット中」の停滞期を、信頼できる研究をもとに調べました。
先に結論を言うと、ダイエット中にも、消費カロリーが予測より少なくなる現象は確認されています。その規模は、研究では数%〜1割弱程度(1日あたり数十〜100kcal程度)が目安のようです。
停滞期はなぜ起こる?
ダイエットをして体重が減れば、消費するカロリーも自然と減ります。体が小さくなった分、動かすのに必要なエネルギーも少なくなるからです。
問題は、体が小さくなった分、消費エネルギーも少なくなるということだけでは説明できない分だけ、消費カロリーが余分に減ることがある、という点です。これは「適応性熱産生」と呼ばれる現象で、体が消費エネルギーを抑えようとする反応だと考えられています(Trexler et al., 2014)。
ダイエット中に実際に何が起きているかを調べた研究
CALERIE試験:大規模な、長期にわたるカロリー制限の研究
Ravussinさんたちのチーム(2015年) は、218人という大きな規模で、2年間にわたってその人が1日に必要なカロリーから25%減らした食事を続けてもらう試験を行いました(CALERIE試験)。その結果、体重が減っている最中の1年目には、消費カロリーが予測より多く減っていた一方、2年目になると(食事の減らし方は変えていないのに)、その減り方は見られなくなったことが分かっています。
つまり、この試験からは、「体重が実際に減っている最中」は消費カロリーが予測より減りやすい、という傾向が見えてきます。ただし「体重が安定した2年目にもその現象が残るかどうか」については、後述するより精密な追加研究とは異なる結果になっている点に注意が必要です。
同じ試験の、より精密な追加研究
Redmanさんたちのチーム(2018年) は、CALERIE試験の参加者53人(制限グループ34人・対照グループ19人)を対象に、より精密な機器(代謝チャンバー)を使って詳しく調べました。1日に必要なカロリーから25%減らした食事を2年間続けたグループでは、睡眠中の消費カロリーが、体重・体組成の変化から予測される量よりもおよそ7%多く減っていることが、1年目・2年目のどちらの時点でも確認されました。
数字で見ると、睡眠中の消費カロリーは制限開始前と比べて、1年目でおよそ170kcal/日、2年目でもおよそ160kcal/日少なくなっており、そのうちの一部(約7%相当)が「予測を超えて減った分」、つまり適応性熱産生にあたる部分です。
2つの研究で、結果が食い違っている点について
ここまで紹介した2つの研究は、実は同じCALERIE試験の参加者を対象にしていながら、「2年目にも適応性熱産生が残るかどうか」について異なる結果を示しています。
- Ravussinたち(218人、簡易的な測定法):2年目には、予測を超えた減り方は見られなくなった
- Redmanたち(53人、より精密な代謝チャンバーを使用):2年目でも、約7%の減り方が残っていた
どちらも査読を受けた、NIH(米国立衛生研究所)資金による正式な研究であり、一方が信頼できないというわけではありません。人数の多さでは前者が優れる一方、測定の精密さでは後者が優れており、測定方法の精度によって結論が変わりうる、意見の分かれる点だと考えられます。「体重が安定すれば適応性熱産生が必ず消える」と言い切れるほど、話は単純ではないようです。
短期間(6ヶ月)の研究でも、同様の傾向
Redmanさんたちのチーム(2009年) による、より短期(6ヶ月)の予備的な研究でも、1日に必要なカロリーから25%減らした食事を続けているグループで、消費カロリーが体重・体組成の変化だけでは説明できない分(およそ6%分)、余分に減っていることが示されています。
全ての研究で「適応性熱産生」が確認されているわけではない
高齢者を対象にした、比較的新しい研究(HALLO-P試験) では、56人の過体重・肥満の高齢者を対象に、9ヶ月間の穏やかなカロリー制限を行いましたが、消費カロリーは体重・体組成の変化からほぼ予測どおりで、統計的に意味のある「予測を超えた減り方」は確認されませんでした。なお、この研究は2025年時点で学会の抄録として発表されたもので、査読付きの完全な論文としてはまだ公開されていない点には留意が必要です。
この結果は、制限の厳しさ(この研究では約8%の穏やかな制限)や対象者の年齢によって、適応性熱産生の出方が変わる可能性があることを示しています。
まとめ
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| ダイエット中の停滞期は本当にある? | ある。複数の質の高い研究で、消費カロリーが「予測より多く減る」ことが確認されている |
| どのくらいの大きさ? | 研究によって幅があるが、多くは数%〜1割弱程度(数十〜100kcal/日規模)。中には統計的に有意でない研究もある |
| 体重が減っている最中は特に強く出る? | その傾向を示す研究がある一方、精密な機器を使った研究では体重安定後も残るという結果もあり、意見が分かれている |
ダイエット中の停滞期は、質の高い複数の研究で確認されている、生理的な反応のようです。体重が安定した後もこの反応が残るかどうかは、測定方法によって結果が分かれており、現時点でははっきりとした結論は出ていません。その規模自体も研究によって数%〜1割弱程度とばらつきがあり、高齢者を対象にした研究では確認されなかったケースもあります。
参考文献
- Trexler, E. T., Smith-Ryan, A. E., & Norton, L. E. (2014). Metabolic adaptation to weight loss: implications for the athlete. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 11, 7.
- Ravussin, E., Redman, L. M., Rochon, J., Das, S. K., Fontana, L., Kraus, W. E., Romashkan, S., Williamson, D. A., Meydani, S. N., Villareal, D. T., Smith, S. R., Stein, R. I., Scott, T. M., Stewart, T. M., Saltzman, E., Klein, S., Bhapkar, M., Martin, C. K., Gilhooly, C. H., Holloszy, J. O., … Katzman, S. M. (2015). A 2-year randomized controlled trial of human caloric restriction: feasibility and effects on predictors of health span and longevity. Journals of Gerontology Series A: Biological Sciences and Medical Sciences, 70(9), 1097–1104.
- Redman, L. M., Smith, S. R., Burton, J. H., Martin, C. K., Il’yasova, D., & Ravussin, E. (2018). Metabolic slowing and reduced oxidative damage with sustained caloric restriction supports the rate of living and oxidative damage theories of aging. Cell Metabolism, 27(4), 805–815.
- Redman, L. M., Heilbronn, L. K., Martin, C. K., de Jonge, L., Williamson, D. A., Delany, J. P., & Ravussin, E. (2009). Metabolic and behavioral compensations in response to caloric restriction: implications for the maintenance of weight loss. PLoS ONE, 4(2), e4377.
- Houston, D., Fanning, J., DeLany, J., Hsu, F. C., Chen, S. H., Miller, M., Kritchevsky, S., & Nicklas, B. (2025). Adaptations in energy expenditure following caloric restriction in older adults [Conference abstract]. Innovation in Aging, 9(Suppl). https://doi.org/10.1093/geroni/igaf122.1019

