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食べる順番ダイエットの効果とは?研究データで検証

野菜から始める健康食べ順ガイド
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食べる順番ダイエットは本当に痩せるのか?研究データから見る効果と限界

「野菜から食べれば痩せる」「ベジファーストで血糖値が下がる」――テレビや雑誌で何度も取り上げられ、すっかりおなじみになった「食べる順番ダイエット」。やり方はシンプルで、今日からでも始められる手軽さから、すでに試している方も多いと思います。

先に結論をお伝えすると、食べる順番が食後の血糖値やインスリンの動きに影響することは、かなりしっかりした研究データで裏付けられています。一方で、「順番を変えるだけで体重が減る」かどうかについては、実はまだはっきりした証拠が揃っていません。この記事では、その両方を研究データにもとづいて整理していきます。

そもそもの始まりは糖尿病の食事療法

この食べ方は、京都府立医科大学・梶山クリニックの今井佐恵子先生、梶山静夫先生らのグループが、2型糖尿病の患者さん向けの食事療法として研究・発表してきたのがきっかけです。もともとは「痩せるため」ではなく、「血糖値をコントロールするため」の方法として考えられたものでした。それがメディアで紹介されるうちに、いつのまにか「ダイエット法」として広まっていった、という経緯があります。

なぜ順番を変えると血糖値が変わるのか

食物繊維の多い野菜やきのこ、海藻類を先に食べると、胃の中に長くとどまってくれるため、後から入ってくる炭水化物の消化・吸収がゆっくりになります。また、野菜やタンパク質を先に摂ると、腸から出るホルモン(インクレチンと呼ばれるGLP-1やGIPなど)の分泌が促され、インスリンが出るタイミングも整いやすくなると考えられています。

その結果、食後に血糖値がガクッと急上昇するのを抑えられ、それにともなうインスリンの出すぎも防げる、というのが基本的な仕組みです。血糖値が急に上がるとインスリンがドバッと分泌され、余った糖が脂肪として蓄積されやすくなるので、理屈のうえでは「太りにくい食べ方」につながると考えられているわけです。

このメカニズムについては、2022年にオンラインで公開され、2023年に正式な論文として掲載された系統的レビュー(Ferguson & Wilson, Journal of the American Nutrition Association)が、それまでの研究をまとめて整理しています。炭水化物が食後血糖にいちばん大きく影響すること、脂質やタンパク質を炭水化物より先に食べると胃から食べ物が出ていくのが遅くなり、食後血糖が上がりにくくなることなどが、この分野でよく知られている知見です。

食後の血糖・インスリンへの効果は、かなり確かなもの

食後数時間というスパンで見ると、「野菜・タンパク質を先に、炭水化物を後に」という順番で血糖・インスリンの上がり方が抑えられるという結果は、いくつもの研究で繰り返し確認されています。

始まりは、今井先生らによる2013年の研究(Diabetic Medicine誌)です。2型糖尿病の患者さんと健康な人を対象に、持続血糖測定器(CGM)を使って、野菜を先に食べた日と炭水化物を先に食べた日の血糖の動きを比べたところ、野菜を先に食べたほうが食後の血糖値の上下がはっきりと小さいことがわかりました。

この結果は、海外の別の研究グループによっても確かめられています。 アメリカ・Weill Cornell医科大学のShukla先生らのグループは2017年、2型糖尿病の患者さんを対象に、野菜・タンパク質・炭水化物を組み合わせた、いわゆる欧米式の食事を使った試験を行い(BMJ Open Diabetes Research & Care誌)、炭水化物を最後に食べる食べ方が食後の血糖・インスリンの上昇を抑えることを報告しました。食文化がまったく違う集団でも同じような効果が見られたということは、この仕組みが日本の食事に限った話ではないことを示しています。

さらに今井先生らのグループは、健康な若い女性を対象にした研究も続けています。2023年に発表された研究(Nutrients誌)では、早食いでもゆっくり食べても、とにかく野菜を先に食べてさえいれば血糖・インスリンの上昇が抑えられることが示されました。糖尿病の患者さんだけでなく、健康な人にも同じような効果が期待できる、ということです。

このように、「食後の血糖・インスリンの急上昇を抑える」という効果については、対象者を変えても、研究グループを変えても、食べる速さを変えても、繰り返し同じような結果が出ています。ここは信頼度の高いポイントと言えます。

一方で、長期的な効果や体重への影響は、まだ証明されていない

ここまでお話ししてきたのは、食後数時間という短いスパンでの血糖・インスリンの動きについてです。これとは別に、数ヶ月から数年という長いスパンで見た血糖コントロール(HbA1cという指標など)への効果を調べた研究もあります。個々の研究では良い結果が出ているものもあるのですが、それらをまとめて分析すると、少し違った結論が見えてきます。

2022年に発表されたOkami先生らによる研究(BMJ Open Diabetes Research & Care誌)は、世界中の複数のデータベースを網羅的に調べ、これまでの研究を統計的に統合する「メタ解析」という手法を使って検証しています。エビデンスの信頼度を評価する国際的な基準(GRADE)も用いた、この分野でもっとも厳密な検証のひとつです。

8つの試験・230名分のデータをまとめた結果、炭水化物を後に食べる食べ方によるHbA1cの改善は「ほとんどないか、まったくない」(平均差 −0.21%、95%信頼区間 −0.44%〜+0.03%)というものでした。血糖・インスリン・GLP-1・GIPのどの指標にも、はっきりとした差は見られませんでした。しかも、そのすべての結果が「信頼度が低い、または非常に低い」エビデンスだと評価されています。論文の結論をひとことで言えば、「ふつうの食事指導を超えて、炭水化物を後に食べる食べ方を勧めるだけの根拠はない」ということです。

つまり、食後すぐの血糖の動きを抑える効果と、長期的な血糖コントロールや体重への効果とでは、証拠の強さがまったく違う、ということです。ここが記事の中でいちばんお伝えしたいポイントです。

国の見解は?

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では、糖尿病の食事療法についての章の中で、食物繊維の多い野菜を先に食べることで食後血糖の上昇が抑えられる、という趣旨の記述があります。ただしこれは、個々の研究をもとにした紹介と考えられ、先ほどのOkami先生らのようにいくつもの研究をまとめて統計的に分析した結果とは、性質が異なるものです。また、あくまで糖尿病の食事療法という文脈での記述であり、健康な人向けの「痩せるための食事法」として国が正式に推奨しているわけではありません。

なお、ACSM(アメリカスポーツ医学会)については、食べる順番についての公式な見解は見当たりませんでした。もともと運動に関する専門団体なので、この栄養に関するテーマについては、今のところ特に発言していないようです。

実践するなら、こんな順番で

血糖コントロールを目的として取り入れるなら、次のような順番が基本になります。

  1. 食物繊維の多いもの:野菜のおかず、きのこ、海藻、味噌汁やスープなど(サラダだけとは限りません)
  2. タンパク質のおかず:肉、魚、豆腐などの大豆製品
  3. 主食:ご飯、パン、麺類などの炭水化物

注意したいのは、大根やれんこんなどの根菜類、かぼちゃ、とうもろこし、じゃがいもなどのイモ類は、野菜であっても糖質を多く含んでいるということ。これらは後回しにするのが基本です。甘く味付けされた野菜のおかずも同じように扱いましょう。

まとめ

「食べる順番ダイエット」は、食後の血糖値・インスリンの急上昇を抑えるという点では、日本人でも欧米人でも、糖尿病の患者さんでも健康な人でも、繰り返し確認されてきた食べ方です。ただし、「順番を変えるだけで体重が減る」「長期的な血糖コントロールが良くなる」と言い切るには、今のところ十分な証拠がそろっていません。

血糖コントロールのためのひとつの工夫として、食事全体の量やバランスと組み合わせて取り入れる――というのが、現時点の研究データから見た、無理のない位置づけと言えそうです。


参考文献

  • Ferguson BK, Wilson PB. Ordered Eating and Its Effects on Various Postprandial Health Markers: A Systematic Review. J Am Nutr Assoc. 2023;42(8):746-757. https://doi.org/10.1080/27697061.2022.2161664
  • Imai S, Fukui M, Ozasa N, et al. Eating vegetables before carbohydrates improves postprandial glucose excursions. Diabet Med. 2013;30(3):370-372. https://doi.org/10.1111/dme.12073
  • Shukla AP, Andono J, Touhamy SH, et al. Carbohydrate-last meal pattern lowers postprandial glucose and insulin excursions in type 2 diabetes. BMJ Open Diabetes Res Care. 2017;5(1):e000440. https://doi.org/10.1136/bmjdrc-2017-000440
  • Imai S, Kajiyama S, Kitta K, et al. Eating Vegetables First Regardless of Eating Speed Has a Significant Reducing Effect on Postprandial Blood Glucose and Insulin in Young Healthy Women: Randomized Controlled Cross-Over Study. Nutrients. 2023;15(5):1174. https://doi.org/10.3390/nu15051174
  • Okami Y, Tsunoda H, Watanabe J, Kataoka Y. Efficacy of a meal sequence in patients with type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Diabetes Res Care. 2022;10(1):e002534. https://doi.org/10.1136/bmjdrc-2021-002534
  • 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書.2019年12月.https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
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歯科医師・ブロガー
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