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腸内フローラを整えれば痩せるのか?研究から分かっていることをやさしく解説

腸内環境と食生活の健康比較インフォグラフィック
むー

「腸内フローラを整えれば痩せる」「腸活でダイエット成功」——こんな言葉を、本やSNSでよく見かけませんか。ヨーグルトや発酵食品、腸活サプリなど、お腹の中を整えるとされる商品もたくさん売られています。

この記事では、「お腹の中にいる細菌の種類と体重の関係」について、これまでどんな研究が行われてきたのかを、なるべく専門用語を使わずに紹介します。

先に結論を言うと、動物を使った実験では派手な結果が出ているのですが、人間を対象にした研究になると、その結果はかなり地味になります。この「差」がなぜ生まれるのかを、順を追って見ていきましょう。

お腹の中にはどんな細菌がいるの?

私たちのお腹の中には、数百兆個ともいわれる細菌が住んでいます。これをまとめて「腸内フローラ」と呼びます。

この細菌たちは、大きく分けて2つのグループに分けられます。ここでは分かりやすく「Aグループ」「Bグループ」と呼ぶことにしましょう(研究の世界ではそれぞれ「Firmicutes」「Bacteroidetes」という名前がついています)。

この細菌たちの仕事の一つが、食物繊維のように人間の体では消化できない食べ物を、代わりに分解してくれることです。分解してできた成分は、体に吸収されてエネルギーとして使われます。つまり、腸内細菌は「消化を手伝ってくれる、体の中の小さな工場」のような存在だとイメージすると分かりやすいかもしれません。

腸内フローラと体の健康の関係については、2021年に発表された、この分野をまとめた総説論文があります(Fan と Pedersen による研究)。肥満だけでなく、糖尿病や脂肪肝など、いろいろな体の不調との関わりが議論されている、よく参照される論文です。「腸内フローラは体のいろいろな仕組みに関係しているらしい」というくらいのイメージを、まず持っておいてください。

マウスの実験で分かった、驚きの結果

腸内細菌と肥満の関係が注目されるようになったきっかけは、2000年代後半に行われたマウスの実験でした。

ある研究チームが、生まれつき太りやすいマウスと、痩せているマウスのお腹の中の細菌を比べたところ、太りやすいマウスの腸内細菌は、食べ物からより多くのエネルギーを取り出す力を持っていることが分かりました(Turnbaugh たちによる2006年の研究)。

ここからが面白いところです。この「太りやすいマウスの腸内細菌」を、細菌をまったく持たない別のマウスに移してあげると、「痩せたマウスの腸内細菌」を移された場合に比べて、はっきりと多くの脂肪がついたのです。つまり、同じものを食べても、お腹の中にどんな細菌がいるかによって、体につく脂肪の量が変わる可能性がある、ということが分かったわけです。

この結果を、もう少し人間に近い形で確かめた研究もあります(Ridaura たちによる2013年の研究)。今度は、一人は太っていて、もう一人は痩せている一卵性双生児(生まれつきそっくりな双子)のペアから腸内細菌を採取し、それぞれ別のマウスに移しました。すると、やはり太っている側の双子の腸内細菌を移されたマウスのほうが、痩せている側の双子の腸内細菌を移されたマウスよりも、多くの脂肪がつきました。マウスだけでなく人間由来の細菌でも同じような結果が出た、という点で、より説得力のある実験だといえます。

では、人間ではどうなの?

マウスの実験では、腸内細菌を移植するというはっきりした方法で、「腸内細菌が変わると体重も変わる」という関係が示されました。では、人間でも同じことが言えるのでしょうか。

実は、人間でも「他人の腸内細菌をまるごと移植する」という治療自体は行われています。ある研究では、生活習慣病(メタボリックシンドローム)の患者さんに、痩せている人の腸内細菌を移植したところ、血糖値のコントロールが少し良くなったという報告があります(Vrieze たちによる2012年の研究)。ただしこれは特別な医療行為であり、この記事の後半で紹介する「サプリで菌を摂る」という方法とは、まったく違うものです。

人間を対象にした一般的な研究の多くは、「太っている人」と「そうでない人」の腸内細菌を比べて、違いがあるかどうかを調べる、という形で行われています。これは、マウスの実験のように「移植して確かめる」までは踏み込んでおらず、あくまで「見比べる」だけの研究です。

長い間、「太っている人はAグループの細菌が多く、Bグループが少ない」という傾向が、肥満の目印として注目されてきました。ところが、この考え方をあらためて詳しく調べ直した最近の研究では、話はそう単純ではないことが分かってきています。

ある研究チームが、世界中で発表された10件の腸内細菌のデータをまとめて、改めて解析し直しました(Sze と Schloss による2016年の研究)。その結果、太っている人とそうでない人の間には、たしかに何らかのつながりはあるものの、その差はとても小さく、「この人のお腹の中の細菌を見れば、太っているかどうか分かる」というレベルには、まったく届いていませんでした。実際、腸内細菌のデータだけを見て太っているかどうかを当てようとしても、当たる確率は3割台から6割台とバラバラで、コイン投げ(5割)とほとんど変わらない結果になる研究さえありました。

似たような結論は、もっと大規模な研究でも確認されています(Duvallet たちによる2017年の研究)。この研究は10種類もの病気について、28件もの腸内細菌の研究をまとめて解析したもので、そのうち肥満に関するものは5件ありました。この5件のうち、腸内細菌のデータだけを見て正確に「太っているかどうか」を判定できたのは、たった2件だけでした。「肥満の人には必ずこの細菌パターンがある」といえるような、はっきりした共通点は見つからなかったのです。

マウスの実験でのはっきりした結果に比べると、人間の研究で見えてくるつながりは、かなり控えめなものだといえそうです。

サプリで菌を摂ったら、実際に痩せるの?

ここまでは「もともとお腹の中にどんな細菌がいるか」を比べる話でした。では、「プロバイオティクス」と呼ばれる、生きた菌が入ったサプリメントやヨーグルトを摂ることで、実際に体重は減るのでしょうか。

これについては、きちんと比較した実験(飲む人と飲まない人にランダムに分けて効果を確かめる研究)が、いくつも行われています。

2018年にまとめられた研究では、過体重や肥満の大人を対象にした15件の実験(合計957人)をまとめて分析しました(Borgeraas たちによる研究)。その結果、菌を摂ったグループは、摂らなかったグループに比べて、体重が平均0.6kgほど少なくなっており、この差は「誤差ではない、たしかな差」だと判断されました。ただし、体脂肪の量については、少し減る傾向はあったものの、「誤差の範囲内かもしれない」というレベルにとどまりました。

その後、もっと多くの研究・多くの人数を集めた、さらに大規模な分析も発表されました。2024年の研究では、200件もの実験・合計12,603人分のデータがまとめられています(Saadati たちによる研究)。ここでは、体重が平均0.91kg、体脂肪の量も0.92kg、体脂肪率も0.68%、それぞれ「たしかな差」として減っていることが確認されました。

つまり、集めるデータの量を増やしたことで、体脂肪についても「たしかな差」だと言えるようにはなりました。ただし、実際に減った量そのもの――0.6〜0.9kgほど――は、データを増やしても劇的には変わっていません。「統計的にたしかな差である」ということと、「体感できるほど大きく痩せる」ということは、別の話だと考えたほうがよさそうです。

国はどう言っているの?

腸内フローラとダイエットの関係について、日本の厚生労働省やアメリカのスポーツ医学の学会が、公式な見解を出しているかを確認しましたが、そのような発表は見当たりませんでした。この分野は、国や学会がはっきりした立場を示すところまでは、まだ研究が追いついていないテーマのようです。

まとめ:腸内フローラを整えれば痩せる、は言いすぎ

ここまでの話を、3つのポイントとして整理してみましょう。

  • マウスの実験:腸内細菌を移植すると、体につく脂肪の量がはっきりと変わることが確認されている
  • 人間で腸内細菌を比べる研究:太っている人とそうでない人を比べても、はっきりした違いは見つかりにくい。もしあっても差はごくわずかで、「この人は太っているか」を言い当てる力は弱い
  • サプリで菌を摂る実験:実際に摂ってもらっても、減る体重は1kgに届かない程度。データを増やしても、この量そのものは大きくは変わらない

この3つの、それぞれ違う角度から見た結果を並べても、「腸内フローラを整えれば劇的に痩せる」という話を強く裏付けるものにはなっていません。腸内細菌が体の代謝に何らかの形で関わっていること自体は、マウスの実験を中心に、それなりの根拠があります。ただ、それが人間のダイエットにとってどれくらい実用的な意味を持つかというと、まだ限定的、というのが現在の研究から見えてくる姿です。腸活サプリを取り入れること自体は悪いことではありませんが、「これだけで劇的に痩せる」と期待しすぎるのは禁物でしょう。

参考文献

  • Fan Y, Pedersen O. Gut microbiota in human metabolic health and disease. Nat Rev Microbiol. 2021;19(1):55-71. https://doi.org/10.1038/s41579-020-0433-9
  • Turnbaugh PJ, Ley RE, Mahowald MA, Magrini V, Mardis ER, Gordon JI. An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest. Nature. 2006;444(7122):1027-1031. https://doi.org/10.1038/nature05414
  • Ridaura VK, Faith JJ, Rey FE, et al. Gut microbiota from twins discordant for obesity modulate metabolism in mice. Science. 2013;341(6150):1241214. https://doi.org/10.1126/science.1241214
  • Vrieze A, Van Nood E, Holleman F, et al. Transfer of intestinal microbiota from lean donors increases insulin sensitivity in individuals with metabolic syndrome. Gastroenterology. 2012;143(4):913-916. https://doi.org/10.1053/j.gastro.2012.06.031
  • Sze MA, Schloss PD. Looking for a signal in the noise: revisiting obesity and the microbiome. mBio. 2016;7(4):e01018-16. https://doi.org/10.1128/mBio.01018-16
  • Duvallet C, Gibbons SM, Gurry T, Irizarry RA, Alm EJ. Meta-analysis of gut microbiome studies identifies disease-specific and shared responses. Nat Commun. 2017;8:1784. https://doi.org/10.1038/s41467-017-01973-8
  • Borgeraas H, Johnson LK, Skattebu J, Hertel JK, Hjelmesæth J. Effects of probiotics on body weight, body mass index, fat mass and fat percentage in subjects with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Obes Rev. 2018;19(2):219-232. https://doi.org/10.1111/obr.12626
  • Saadati S, Naseri K, Asbaghi O, Yousefi M, Golalipour E, de Courten B. Beneficial effects of the probiotics and synbiotics supplementation on anthropometric indices and body composition in adults: a systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2024;25(3):e13667. https://doi.org/10.1111/obr.13667
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歯科医師・ブロガー
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