ダイエットには有酸素運動と無酸素運動をどう組み合わせたらいい?
「両方やれば相乗効果」は本当?
「ダイエットには有酸素運動と筋トレ(無酸素運動)を組み合わせるといい」——健康情報でよく見かける話です。
有酸素運動は脂肪を燃やす。筋トレは基礎代謝を上げる。だから両方やれば、お互いの効果が重なって、もっと痩せやすくなる。そんなロジックです。
でも、この「相乗効果」は本当に確認されているのでしょうか。両方に時間をかける価値は、実際にあるのでしょうか。
今回は、この分野で最もよく引用される大規模な比較試験「STRRIDE-AT/RT」という研究をもとに、この疑問を検証してみます。
先に結論だけ知りたい方へ
- 脂肪を減らしたいだけなら、有酸素運動だけで十分な効果があります
- 筋肉量を維持・増加させたいなら、筋トレ(レジスタンス運動)を追加しましょう
- 有酸素運動と筋トレを組み合わせても、脂肪を減らす効果に「上乗せ」は見られませんでした。それでいて、かかる時間は有酸素運動だけの場合の約2倍になります
以下、この結論の根拠になった研究を詳しく見ていきます。
根拠になった研究:STRRIDE-AT/RT
どんな研究?
Willis et al. (2012)が『Journal of Applied Physiology』という専門誌に発表した研究です[1]。
普段あまり運動しない、過体重・肥満の成人119人を対象に、8ヶ月間にわたって運動の効果を比較しました。対象者は次の3つのグループに、くじ引きのようにランダムに分けられています。
- 筋トレ(RT)グループ(44人):筋トレだけを行う。週3日、3セット、8〜12回の反復
- 有酸素運動(AT)グループ(38人):有酸素運動だけを行う。最大酸素摂取量(運動強度の指標)の65〜80%の強度で、週12マイル(約19km)のジョギングに相当するカロリーを消費する量
- 併用(AT/RT)グループ(37人):有酸素運動と筋トレの両方を行う
体組成(体のどれくらいが脂肪で、どれくらいが筋肉かなど)の測定には、BOD POD(空気の圧力を使う測定法)やDEXA(骨密度測定にも使われるX線を使った方法)という、精度の高い方法が使われています。
この研究のポイントは、有酸素運動と筋トレの「運動時間」をできるだけ揃えて比較したところにあります。処方された時間で見ると、有酸素運動は週133.5分、筋トレは週180分です。実際にどれだけ実施できたか(遵守率)を見ると、有酸素運動グループは週約118分こなしていました。筋トレグループは遵守率83.6%だったので、実際には週150分程度実施したと推定されます。
これまでの多くの研究では、有酸素運動と筋トレの運動量が揃えられておらず、公平な比較になっていませんでした。その点でこの研究は貴重です。
何がわかった?
8ヶ月後、体にどんな変化があったかをまとめたのが下の表です。
| 指標 | 筋トレのみ | 有酸素運動のみ | 両方併用 |
|---|---|---|---|
| 体重の変化 | +0.83kg(有意に増加) | -1.76kg(有意に減少) | -1.63kg(有意に減少) |
| 脂肪量の変化 | -0.26kg(変化なし) | -1.66kg(有意に減少) | -2.44kg(有意に減少) |
| 筋肉量の変化 | +1.09kg(有意に増加) | -0.10kg(変化なし) | +0.81kg(有意に増加) |
| 体脂肪率の変化 | -0.65%(有意に減少) | -1.01%(有意に減少) | -2.04%(有意に減少) |
※「有意」というのは、統計的に「偶然とは考えにくい、意味のある変化」という意味です。
ここから、いくつか重要なことがわかります。
1. 筋トレだけでは、脂肪も体重も減りませんでした。
むしろ体重は少し増えています。これは筋肉量が増えたためです。
2. 「体脂肪率」だけを見ると誤解しやすいことがわかりました。
筋トレグループは体脂肪率が下がっています(-0.65%)。一見「脂肪が減った」ように見えますが、実は脂肪量そのものは変わっていません。体脂肪率は「脂肪の量 ÷ 体全体の重さ」で計算されるため、筋肉が増えて体全体の重さが増えると、脂肪の量が変わらなくても体脂肪率は下がって見えるのです。論文の著者たちは、体脂肪率だけを根拠にした先行研究や指針が、この点で誤解を招きかねないと指摘しています。
3. 脂肪を減らす効果は、有酸素運動の方が筋トレより高いという結果でした。
運動時間をほぼ揃えて比べたところ、有酸素運動グループの方が、筋トレグループより多くの脂肪を減らしていました。
4. 有酸素運動に筋トレを追加しても、脂肪減少の「上乗せ」効果は見られませんでした。
数字だけ見ると、併用グループ(-2.44kg)は有酸素運動のみのグループ(-1.66kg)より多く脂肪が減っているように見えます。しかし統計的には、この差は「意味のある違い」とまでは言えません。しかも併用グループの運動時間は、有酸素運動のみのグループのほぼ2倍です。
論文の著者たちは、この結果を「相乗効果でも、足を引っ張り合う効果でもなく、それぞれの効果が単純に足し算されただけ」と表現しています。
厚生労働省やACSMの見解とはどう違う?
一次研究の内容が、公的機関の推奨とどう関係するかも見ておきましょう。
厚生労働省のガイドライン
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月公表)では、次のような推奨がされています[2][3]。
- 中程度以上の強度の身体活動を1日60分以上
- 高強度の有酸素運動や、筋肉・骨を強くする運動を週3日以上
- 筋トレは週2〜3日。可能であれば有酸素運動と組み合わせると、さらに健康増進効果が期待できる
ここで注意したいのは、この推奨は「脂肪を減らす」という一つの目的だけを見たものではなく、心臓や血管の健康、骨の強さ、筋肉の働きなど、もっと幅広い「健康づくり」全体を対象にしているという点です。今回紹介したSTRRIDE-AT/RTの「脂肪減少に上乗せ効果はなかった」という結果と、厚労省ガイドの「組み合わせを推奨する」という記述は、見ている対象(アウトカム)が違うため、直接ぶつかり合うものではありません。
ACSM(米国スポーツ医学会)の見解
ACSMが2009年に発表した、減量に特化した推奨(Donnelly et al., 2009)では、週150〜250分の中〜高強度の身体活動(週1,200〜2,000kcal相当)が推奨されています[4]。
筋トレの位置づけについては、少し込み入った事情があります。Willis et al. (2012)がDonnelly et al. (2009)の内容を要約したところによると、ACSMは「筋トレが脂肪量減少につながる理論的な仕組み(筋肉量が増えると基礎代謝が上がる、など)」を図で示しつつも、「筋トレと脂肪量減少の関係を示す当時の文献は、まだ結論が出ていない」とし、「筋トレ単独は減量そのものには効果的とは言えない」としています。それでも、筋トレは肥満治療の有効な手段の一つとして位置づけられています。
※この記述はWillis et al. (2012)による要約に基づくもので、Donnelly et al. (2009)の原文を筆者が直接確認したわけではないことをお断りしておきます。
この立場は、STRRIDE-AT/RTの「脂肪減少には有酸素運動が効率的で、筋トレは主に筋肉量維持に役立つ」という結果と、方向性が一致しています。
興味深いのは、STRRIDE-AT/RTの有酸素運動グループの実際の運動時間(週約118分)は、ACSMが推奨する週150〜250分という目安には届いていなかった点です。それでもこの運動量で、統計的に意味のある脂肪量の減少(-1.66kg)が確認されています。つまり、ACSMの推奨量はあくまで一つの目安であり、それに届かない運動量でも、十分に意味のある効果が得られることを示すデータだと言えます。
ただし、「もっと運動量を増やせば、もっと効果が大きくなるのか」という点は、この研究のデザインでは確認できていません。この点には留意が必要です。
結局、どう組み合わせればいい?
まず、研究で使われた運動処方をそのまま整理すると
| パターン | 運動内容(実測値) | 脂肪量の変化 | 筋肉量の変化 |
|---|---|---|---|
| 筋トレのみ | 週3日、3セット、8〜12回 | -0.26kg(変化なし) | +1.09kg(増加) |
| 有酸素運動のみ | 週約118分、最大酸素摂取量の65〜80%の強度 | -1.66kg(減少) | -0.10kg(変化なし) |
| 両方併用 | 上記両方(時間は有酸素運動のみの約2倍) | -2.44kg(減少) | +0.81kg(増加) |
これらの数値は、すべてWillis et al. (2012)が報告している実測値・統計結果です。
ここからは、データを踏まえた筆者の考えです
論文が直接そう推奨しているわけではなく、あくまでデータから導いた解釈である点をご承知おきください。
脂肪を減らすことを最優先したいなら、時間対効果の面で有酸素運動中心のアプローチが理にかなっています。ACSMの推奨量(週150分)に届かなくても、一定の効果が期待できるというのも心強いポイントです。
筋肉量や基礎代謝の維持を重視したいなら、筋トレを外さない方がいいでしょう。筋トレだけでは脂肪は減りませんが、筋肉量の維持・増加という点でははっきりとした効果があります。
両方を望むなら、時間コストは有酸素運動だけの場合の約2倍になる一方で、脂肪減少への上乗せ効果は確認されていない、というトレードオフを理解した上で選ぶことになります。
よくある疑問
Q. 有酸素運動と筋トレ、どちらを先にやるべき?
Eddens et al. (2018)が発表したメタ解析(複数の研究結果をまとめて統計的に分析する手法)によると、体脂肪率の変化に対して、運動の順序(有酸素が先か、筋トレが先か)による違いは、統計的には見られませんでした[5]。筋肉の付き方への影響も同様に、順序による違いは見られていません。
唯一、下半身の筋力(実際に体を動かしながら測る力、静止した状態で発揮する力とは区別されます)についてだけ、「筋トレ→有酸素運動」の順が有利という結果が出ています。
体脂肪を減らすという目的に関しては、順序をそれほど気にする必要はなさそうです。
Q. 同じ日にやるべき?別の日に分けるべき?
Lafontant et al. (2025)によるメタ解析では、同じ日にまとめてやる場合と、別の日に分ける場合とで、体重や体脂肪率の減り方に違いは見られませんでした[6]。なお、STRRIDE-AT/RT自体ではこの点は比較されていません。
Q. 時間がない場合、どちらを優先すべき?
ここも筆者の考えになりますが、脂肪を減らすことを優先するなら有酸素運動、筋肉量の維持も大事にしたいなら筋トレを削らない、という考え方が妥当でしょう。
ACSMの推奨量(週150分〜)に届かなくても、STRRIDE-AT/RTでは週118分程度の運動で、意味のある効果が確認されています。「推奨量に届かないから意味がない」のではなく、動くこと自体に価値がある、と捉えるのが実践的です。
Q. 「筋トレで基礎代謝が上がって痩せる」って本当?
このデータを見る限り、慎重に扱うべき通説です。
筋トレだけのグループでは、脂肪量は統計的に意味のある変化をしていません(-0.26kg)。論文の中でも、「筋トレによる基礎代謝の上昇が脂肪減少をもたらす」という従来の説明について、著者たちは「見直す時期に来ているかもしれない」と述べています。
少なくとも、「筋トレだけで脂肪がはっきり減る」という確かな証拠は、この研究からは得られていません。
この記事の限界について
最後に、今回紹介したエビデンスの限界を明記しておきます。
STRRIDE-AT/RTの対象者は、過体重・肥満(BMI 25〜35)で、普段あまり運動しない18〜70歳の成人です。標準体重の方や、すでに運動習慣のある方にそのまま当てはまるとは限りません。
対象者によって結果が変わる可能性も指摘しておきます。Church et al. (2010)が行った「HART-D試験」(2型糖尿病の患者262人を対象に、9ヶ月間介入した研究)では、筋トレだけのグループでも脂肪量が統計的に意味のある形で減少しています(-1.4kg)[7]。これは、STRRIDE-AT/RT(糖尿病ではない人が対象)の「筋トレだけでは脂肪量が変わらない」という結果と対照的です。対象者の違い(2型糖尿病か、そうでないか)や介入期間の違い(9ヶ月か8ヶ月か)が影響した可能性があります。
また、STRRIDE-AT/RTは、ACSMの推奨量に届かない運動量でも効果があった、という一つの例に過ぎません。「もっと運動量を増やせば、もっと効果が増すか」という点は、この研究では確認できていません。
なお、この記事の中の「どんな人に向いているか」「時間がない場合はどうするか」といった提案的な内容は、いずれも論文が直接そう述べているわけではなく、データを踏まえた筆者の解釈であることを重ねてお伝えしておきます。
まとめ
「有酸素運動+筋トレ=相乗効果」という単純な図式は、少なくとも脂肪を減らすという観点では、大規模な比較試験のデータによって裏付けられませんでした。
両者はむしろ、別々の役割を担っているようです。有酸素運動は脂肪を減らすことに、筋トレは筋肉量(除脂肪体重)の維持・増加に、それぞれ独立して貢献しているというのが、実態に近いのかもしれません。
ACSMなどが示す推奨運動量は、あくまで一つの目安です。それに届かない運動量でも、意味のある脂肪減少効果が確認されている点は、実践する上で心強い材料と言えるでしょう。
大切なのは、自分が何を目的としているか(脂肪を減らしたいのか、筋肉を維持したいのか、その両方なのか)をはっきりさせた上で、どちらにどれだけ時間をかけるかを決めることです。
参考文献
[1] Willis LH, Slentz CA, Bateman LA, et al. Effects of aerobic and/or resistance training on body mass and fat mass in overweight or obese adults. J Appl Physiol. 2012;113(12):1831-1837. ↩
[2] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」2024年1月. ↩
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 情報シート:筋力トレーニングについて」. ↩
[4] Donnelly JE, Blair SN, Jakicic JM, et al. American College of Sports Medicine Position Stand. Appropriate physical activity intervention strategies for weight loss and prevention of weight regain for adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(2):459-471. ↩
[5] Eddens L, van Someren K, Howatson G. The Role of Intra-Session Exercise Sequence in the Interference Effect: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Med. 2018;48(1):177-188. ↩
[6] Lafontant K, Rukstela A, Hanson A, et al. Comparison of concurrent, resistance, or aerobic training on body fat loss: a systematic review and meta-analysis. J Int Soc Sports Nutr. 2025. ↩
[7] Church TS, Blair SN, Cocreham S, et al. Effects of aerobic and resistance training on hemoglobin A1c levels in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA. 2010;304(20):2253-2262. ↩

